■ 『凪のあすから』の陸と海: ふたつの世界はつながっている海と陸とに分かたれた二つの異なる世界の間で、甘く切ない人間模様が繰り広げられるファンタジック・ラブ・ストーリー――篠原俊哉×岡田麿里×ブリキ×P.A.WORKSという豪華布陣のもと、2013年10月から放映開始されたオリジナルTVアニメ『凪のあすから』は、その“ファンタジー”と“恋愛物語”という両輪に支えられながら、前半部である1クール目を圧倒的な密度とスピード感をもって駆け抜けていった。ファンタジーの側を代表するのが、光やまなか、ちさき、要らの暮らす、入射光と回遊する魚の群れが彩る美しき海の世界だ。海底に街を築き暮らす海人たちは、海神様によって与えられた「胞衣(エナ)」と呼ばれる特別な膜に身体を包まれることによって、海中での生活(そこでは火を使うこともできれば、料理を作ることもできる)を営めるようになっている。海人にとっての胞衣は、彼/彼女らのアイデンティティであると同時に、それが乾いてしまっては生きていくことができない、生命の礎として存在している。他方で地上に生きる人類は、その胞衣を捨て去った人々だ。海の村・汐鹿生(しおししお)に伝わる伝説によれば、古来、人はみな海人であった。しかし陸に憧れた人類は胞衣を脱ぎ捨て、陸での生活をはじめる。だが地上での生活は厳しく、その長く続く日照り等の苦難を海神様の怒りと捉えた人々が、それを鎮めるための儀式として執り行ったのが、船に生贄の女を乗せて海へ流した「おふねひき」であったという。『凪のあすから』の1クール目は、この「おふねひき」をめぐって表面化していく海と陸との対立と、その間で翻弄される子どもたちの物語として展開される。そしてそこへ、雪のように塩が舞い散る“ぬくみ雪”による災いの予兆や、海神様のうろこである守り神・うろこ様の秘めた思惑が重なり、物語はこのファンタジックな装いの核心へと、より一層近づいていくことになる。[高瀬司]『凪のあすから』/http://nagiasu.jp公式Twitter @naginoasukara画像:(C)Project‐118/凪のあすから製作委員会
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