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三起社の工場長石井さんを訪ねて(3)
■ 数井浩子(アニメーター・演出)
動画机はアニメーターが使うものである
アニメーターにもいろいろなタイプがいる。
ゆえに、動画机の使い方はバラバラだ。
■ アイデアが生まれる机には「遊び」がある
「イギリス人の家はその人にとって城である」という言葉があるが、アニメーターにとっての「城」は動画机である。動画机は特殊な机とはいえ、しょせん机。座って作業をするためのものである。しかし、徹夜が続くとアニメーターは机で生活をすることになる。
机に常備するもので一番多いものは、お菓子や非常食である。引き出しには、チョコにキャンディー、おせんべいやスナック類、カップ麺、インスタント食品も定番だ。
次に多いのが、資料と称されるフィギュアや写真集である。最近はフィギュア付きのお菓子を大人買いする人も少なくないので、机まわりはフィギュアのディスプレイラックと化する。このあたりからだんだん「城」らしくなる。
そして、CD、DVDやBlu-rayが棚に並び、パソコン、タブレットなどが机に装備される。さらに、ひざ掛け毛布、スリッパ、枕、着替えまで揃えば、巾180cm、奥行80cm、高さ1m30cmの動画机は「その人にとっての城」である。
三起社の石井さんは「机は使いながら完成させてもらえばいい」と言い切る。つまり、動画机には「遊び」がある。机としての枠組みは決まっているが、穴をあけるアニメーターもいれば、机の上にレンガや発泡スチロールで棚をつくったり、ラップホルダーに資料を並べたりする人もいる。机の余白は使う人のアイデア次第である。
そして、この「余白」はアイデアを生み出す装置になる。三起社スタッフは「アニメーターからの意見を100%受け入れるわけではない」というが、取捨選択の結果、机の自由度を確保することでアイデア創出につながっている。
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