「コンテンツ業界に貢献 デンマークのアニメ人材育成現場より」 by 伊藤裕美  | アニメ!アニメ!

「コンテンツ業界に貢献 デンマークのアニメ人材育成現場より」 by 伊藤裕美 

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「コンテンツ産業と地域活性 – デンマークのアニメ人材育成現場より」開催 その2


■人材育成で、地元のユトランド半島、デンマークそしてEU圏のコンテンツ業界に貢献

EU圏のアニメーションやゲームなどのコンテンツ産業は年率6%で成長している。やや古い記録だが、2006年時点で約29万3000社が490万人を雇用し、売上総利益で7億9,230万ユーロ(約745億円)に達した。TAW卒業生の4割がEU圏で職を見つけ、4割以上は首都コペンハーゲンへ向かう。

約2割は地元のヴィボールあるいはユトランド半島に残る。かつてはコペンハーゲンに流出する一方だったが、近年その流れが変わった。いったん国外へ出ても、家族と共にデンマークや地元に戻る者が増えている。子育てに適した社会環境が評価されてのことだ。
ここで重要なのは、国外で培った人的ネットワークを携えてクリエイターたちが戻ることだ。インターネットは、どこにいてもコンテンツ創作を可能にした。これからは、物理的な距離だけでなく、“誰と一緒に仕事ができるか”というネットワークが重要と、トーニング氏。人間的な生活ができる場所で創作ビジネスをする、優れた人(資源)がある所に人が集まるだろう。

ユトランド半島の中央および北部地域には183万人が住む。2008年時点で、映像やニューメディア関連企業714社が約1億2,000万ユーロ(約124億円)を売り上げる。デンマーク映画協会(Den Vestdanske Filmpulje)は、この地域の映像やニューメディアに2008年から4年間に420万ユーロ(約4億4,000万円)の制作助成をし、149の新規雇用と1,650万ユーロ(約17億円)の追加的利益をもたらした。
欧米では、公的資金が制作助成に使われるが、その結果生まれた雇用や利益を厳しく評価する。失業、とりわけ若年失業率の高いヨーロッパでは新たな雇用が必須だ。若者に人気のあるコンテンツ産業は雇用効果もあると見て、積極的な振興を行う。

古い軍施設を転用した、6,000m2のTAWキャンパスには、地域のコンテンツ産業に貢献する組織も設置されている。
卒業生や実務者のキャリアアップのための「プロフェッショナル・トレーニング」はVFX、3Dキャラクターアニメーション、ドキュメンタリー・アニメーションの再教育、そしてマスタークラスや実業に関するカンフェランスを行う。独立系作家がTAWに滞在して自主制作する「オープンワークショップ」はTAWを特色付ける。国籍を問わず、常時40名ほどのアーティストが年間に大小120ほどの制作を行う。

学生の起業を支援するインキュベーション「ビジネス・デベロップメント」、科学省の予算でアニメーションを用いた新たなビジネスを支援するネットワーク「アニメーション・ハブ」。TAWは、エンタテインメントだけでなく、コミュニケーション手段としてアニメーションを社会や経済の分野で活用するアイデアの商品化、ビジネス化を促す。「ビジネス・デベロップメント」で現在17社、56人が事業を行っている。
そして「Arsenalet」(武器庫、宝庫)が、アニメーションのイノベーションのためのクラスターとして設置され、ビジネス指南、業界内外の企業間の仲介、資金調達の指導、イノベーション研究の便宜を図る。


■新しいビジュアル・エイジに、日本とのパートナーシップを強めたい

「わたしたちは、ビジュアル・エイジの黎明期にいる」。トーニング氏はコミュニケーションが文字だけから、ビジュアル(視覚)も重視されるようになり、アニメーターのスキル、つまり絵を描く、そして想像する技量が“視覚的なコミュニケーション”の鍵になるとする。
そこでTAWは、ツールとしてのアニメーションを教える教授術の向上と伝授を行う、アニメーション教授法センター(CAP)を運営している。デンマークの公教育では、低学年から高校まで、子どもたちが視覚的な言語で自己表現でき、視覚表現・映像表現で自己研さんする指導を始めている。教育現場は経験が少なく、CAPは個々の子どもの可能性を高められる、さまざまな教授法を見出し、広めようとしている。

トーニング氏は、10月27日に京都コンピュータ学院で行われた、DoGA主催の「CGアニカップ 日x欧x台湾 親善試合」で、日本と台湾の短編CGアニメーションを鑑賞し、日本の作品は詩的な美しさを持ち、質がとても高いと評価した。
氏は、一般的に日本の映画、アニメーションの発想は巧みだが、ヨーロッパ人がその含むところを完全に理解するのは難しく、より広い市場を求めるなら、多くの人が理解できるようにすることも大事だとした。日本映画、アニメーションは、ヨーロッパのアカデミックは評価するものの、一般観客が見るに至っていないとも指摘した。

パネルの前田氏は、国際共同製作のりんたろう監督作品「よなよなペンギン」をタイで制作した時に“めりはり”の意味合いをタイ人のアニメーターに理解させるのに一年を要し、短い単語で表現することに慣れた日本人同士なら通じることが国外では簡単に通用しないこと、日本の監督の強い情感を伝えることの難しさに触れた。これにトーニング氏は、日本のプロデューサーや監督は“めりはり”を、どうしたらヨーロッパ人が理解できるかを考えてほしいとして、デンマークと日本両者の良さを組み合わせることを考えてはどうかと、日本とのパートナーシップに期待を示した。前田氏は日本の制作現場はもっとシステム化しなければならないとした。

トーニング氏は最後に、ヨーロッパ、ブラジルそして日本の若手のプロデューサーが集まり、コンセプトアニメーターと一緒に創作を行うワークショップ「SEA」を2013年から行うという予定を披露した。国際共同製作が盛んなデンマークで、日本のプロデューサーも文化・言葉が異なる人たちとネットワークを活発に培ってほしいとした。
[オフィスH 伊藤裕美]
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