スペイン:美術展「Proto Anime Cut」と「アニメを文化にしていく潮流」 PART3 世界中で始まったアニメの「文化をめざす潮流」 | アニメ!アニメ!

スペイン:美術展「Proto Anime Cut」と「アニメを文化にしていく潮流」 PART3 世界中で始まったアニメの「文化をめざす潮流」

連載・コラム 海外事情

文:氷川竜介(アニメ評論家)


■ 世界中で始まったアニメの「文化をめざす潮流」

肝心の日本国内での展示会については未定のようだが、全容とコンセプトは分厚いハードカバーの図録(アマゾンで入手可能)によって見られるので、興味のある方はそれを見てほしい。
日本のムックなどでもなかなかお目にかかれないような図版が満載で、印刷品質もアートの観点で調整されていて、鉛筆画なのに細部まで再現されているなど実に眼福であり、英語とドイツ語(スペイン語)のバイリンガルで解説も掲載されている。

率直な感想としては、「行って良かった」ということにつきる。デザイン画やレイアウト、背景などは日本でも目にする機会が多いが、なかなか現物に接することはなく、ナマが見られることも大きい。そして近年、「アニメのために制作された成果物」を「芸術・文化」の観点で価値を再発見し、体系的にまとめて行く必要性の高まりを感じているし、具体的な動きは国内ですでにいくつも始まっている。肝心のクリエイターや研究家の訃報が多く続く昨今、それは急務になったとも実感している。

示し合わせたわけでもないのに世界的に同時多発で始まった「文化をめざす潮流」は、決して止まることはない。その一方で、「文化にしていくための推進力」はまだまだ乏しい。その危機感の中で、今後どうしていくべきかについての方法論と、大きな動機づけを示唆された展覧会であったし、それが海外発であることにも大きく勇気づけられた。
日本が積み重ねてきたアニメ・特撮などスペシャルな映像文化を、展覧会・博覧会を通じて公的に認知された「メディア芸術」のカテゴリーの中で位置づけ、継承し、定着させていこうという動きは、ますます盛んになるにちがいない。

約50年前のTVアニメ『鉄腕アトム』でビジネス的なビッグバンが起きて発展してきた「アニメ」は、まずキャラクター商材をTVメディアで売るためのツールで扱われる時期があり、続いて作品そのものが「パッケージ」として販売対象となる。やがて「コンテンツ」と呼ばれるようになったものの、逆にデジタル時代となって「核」となる本質があいまいになった気もする。クリエイターの制作物を「素材」として扱い、「美術品」として見てこなかったのも、その現れのひとつだ。このまま放置すると「日本文化」としての求心力も、時間の問題で損なわれる危惧がある。
しかし、こうした「文化」への国内外からの視線が交錯していくことを地道に積み重ねていくことで、「日本らしさ」「日本のアドバンテージ」も浮き彫りになるはずだ。
そんな発展も視野にいれながら、今後も活動を続けていきたい。

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「Proto Anime Cut」展
企画: Les Jardins des Pilotes (ベルリン) 協力: 2dk (東京)

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