文;氷川竜介(アニメ評論家) 物心ついたころから3D立体視になじみ、普通の環境とする世代がついに登場するのか……。これはヤバイ、一過性のブームで終わらなさそうだぞ。ニンテンドー3DSを使ってみて、そんな認識が電撃のように走った。単にソフトが3D立体視化されただけなら、こうは思わない。内蔵3Dカメラで自分の顔を取り込んでゲームキャラにしたり、AR(拡張現実)カードの介在で自室のテーブルがグネグネと歪むゲームフィールドに変化し始めたとき、現実と非現実が入れ子になる大きな衝撃を久しぶりに覚えたのである。 この体験とシンクロするかのように、映像の世界でも脳内の深部を大きく揺さぶる作品が現れた。神山健治監督の『攻殻機動隊 S.A.C. SSS 3D』である。ゲーム機3DSとの共通点は「それは観る人を電脳化する3D」というキャッチコピーに集約されている。3D立体視という機能が現実を引き写し、模擬することにとどまらず、現実と非現実の間に大きな意味性を介在させ始めたという点に衝撃の本質がある。 『攻殻』の3D立体視変換は、2006年に制作された同作2D版の素材をベースに行われた。立体化自体はコンポジット技術として確立し、すでに長編もいくつか上映されている。本作の注目すべき新規な点は、その先にある「応用」と「可能性」にある。 本シリーズは、人がサイボーグ化することを自然に受け止めるようになった西暦2030年代を時代設定としている。世界大戦を経て重武装化した人間が「公安」という特殊部隊に職を得て難事件にいどむ。この物語に呼応して、演出的には「電脳化された主観映像」が多用されてきた。日本のアニメでは、カメラポジションをどこに置き、どんなレンズを介して被写体を見ているのか、映画的な文法を重視しているためだ。 この考え方を拡張し、「電脳化された意識では主観映像は、きっとこう見える」という点に3D立体視の新規応用を集約したのが本作である。公安9課のチームは、捜査を秘密裏にすすめるため、音声を使わず電脳同士で内話(思考)を接続して会話する。同時に視覚情報には、捜査に必要なサーモグラフなどのデータがサブウインドウとしてオーバーレイされる。この主観的な副次情報はきわめて人工的に立体感で描かれているため、客観的に進むシーンのナチュラルな立体感との間に激しいギャップが生じる。 この立体感の落差が「自分はサイボーグとして、今この場に立ちあっているのだ」という異様な臨場感を発生させるというわけだ。オープニングで映像ごと3DCGで完全な立体感を実現した新作の電脳世界(制作は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』のスタジオカラー、デジタル部)を提示し、体験させた後だけに、その感覚は自然に脳へ染みこんでいく。 映画の世界では5.1chサラウンドによって、音だけは人間をトータルに包みこむ立体感を先に獲得していた。この立体音響と、これまで覚えたことのない独特の立体的視覚との相乗効果が、場面に驚くべき緊張感をもたらす。草薙素子に代わってリーダーとなったトグサが究極の選択を迫られるシーンや、ありえないようなピンポイント狙撃シークエンスなどでは、次がどうなるか熟知しているのにもかかわらず、驚異の没入度が喚起される。 3D立体視それ自体は、写真や映像の世界では非常に古くから存在していた。映画興行としても、ブームになっては衰退する歴史を繰り返してきたため、一過性ではないのか、2D主体の日本製アニメとは親和性が乏しいのではないかと軽視しがちであった。だが、3D立体視が人の認識力を拡張する方向性において、新たな入力インタフェースとして進化をし始めたというなら話は別だ。そこには新たなフロンティアが見える。 過去にない大きなアドバンテージを獲得させたものはデジタル技術だ。であれば、この進化の扉を開いたのが『攻殻機動隊シリーズ』であったことにも大きな意味がある。そんなレベルでも認識の拡張が得られるという点で、まさに必見の映画だろう。この予行演習の次に来るべき、神山健治監督ならではの3D立体視・応用編に期待したい。『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society 3D』公式サイト /http://www.ph9.jp/
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