『西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~』 奥村よしあき監督インタビュー | アニメ!アニメ!

『西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~』 奥村よしあき監督インタビュー

(2008年11月:インタビュー再録)『西洋骨董洋菓子店』が、フジテレビ「ノイタミナ」ほかで放映され注目を浴びた。単行本全4巻、 文庫本全3巻で発行部数は約170万部発行のベストセラー。監督奥村よしあき氏に、『西洋骨董洋菓子店』の制作にまつわるお話を伺った。

インタビュー
(2008年11月:インタビュー再録)

よしながふみ作品を初めてアニメ化した『西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~』が、この夏フジテレビ「ノイタミナ」ほかで放映され注目を浴びた。コミックは単行本全4巻、 文庫本全3巻で発行部数は約170万部発行のベストセラー。この原作がどの様にアニメとなったのだろうか。2008年11月からはDVDの発売も始まっている作品の監督奥村よしあき氏に、『西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~』の制作にまつわるお話を伺った。

■ 奥村 よしあき(おくむら よしあき)
福島県出身。海外の合作アニメのアニメーターとして働き始める。初めてのディ レクション作品は、『スペース・オズの冒険』(1992年~1993年/テレビ東京 系)。
スーパーアドバイザーとして海外のアニメ制作現場で活躍後は、『爆球 Hit! クラッシュビーダマン』(2006年/テレビ東京系)、『いくぜっ!源さ ん』(ネット配信)などを経て、『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』(2008年/フジテレビ系列)の監督を務める。

アニメ「西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~」
/http://antique-anime.com/

■ 原作を読んだ時からやりたかった作品 

アニメアニメ(以下AA)
まず、『西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~』との出会いから伺わせてください。原作がよしながふみ先生と非常にビッグで、今、一番乗っている方だったと思います。そしてノイタミナでの放映というのがあります。

奥村よしあき監督(以下奥村)
プレッシャーですよ。でも最初、実は僕はずっと海外で仕事をしていたこともあって、『西洋骨董洋菓子店』が出版されことや実写ドラマがあったというのは知らないんですよ。
戻ってきてから知ったんです。それで今回、監督をやるということで、実は初めて読ませていただいたんです。

AA
初めて読まれた時はどのような印象でしたか。

奥村
スタジオに全巻置いてあったので読んでみたらこれが面白い。それで「アニメをやろうよ」って言ったら、「実はこれをやるんですよ」ということでした。まだその時はどこでやるのかは決まっていない。
俺に話が来ていないんだけど、自分でやるつもりになって、やりたいという方が先行しちゃいましたね。
とにかく原作を読んでいてすごく面白くて何度も何度も読み返して、それでやりたい、やるんだったらぜひやらせてくれって。

AA
最初にやりたいと思ったときに、テーマが難しかったと思います。ノイタミナが若い女性に向けているといっても、おそらくテレビ見ている人の半分は男性でないでしょうか。少女マンガですし、『西洋骨董洋菓子店』を正面から取り上げることで悩んだりはしたのでしょうか。

奥村
その時に救いだったのが橘なんです。橘という存在をメインに持ってきたことによって救われた。
橘だったら描けるぞ、橘を中心に描いていけば、この『西洋骨董洋菓子店』は作れるんではないかなという思いはありましたね。
小野がカミングアウトした心情とか分からない部分がありますからね。エイジだって世界チャンピオンだしね。それが網膜剥離でその夢を捨てて、ケーキ屋ですから。そういう個性を持った連中が集まってきて、じゃあ、誰が話をまとめるんだといったらやっぱり橘じゃないですか。

AA
作品によって監督自身が受けた反響とかはありますか。少女マンガの原作を男性が監督するのは一見難しそうです。でも実際見てみたらとても面白いのですが。

奥村
僕はたぶんここで初めて話すんだけど、中学校のときにマンガ家になりたいなと思ってマンガを描いていたときがあって、そのとき描いていたマンガが実は少女マンガだったんです。
実は陸奥A子にあこがれてね。だから少女マンガって俺は結構読んでいるんですよ。

AA
確かに少女マンガには物語性が豊かなものが多いのかな思います。

奥村
面白いですよ、少女マンガの方が。僕が読んでいた頃って話がしっかり作られていたなという気がします。
AA
作品を見ていて非常に面白いなと思ったのは、シリアスなテーマがある一方で非常にコメディータッチなものと、そのふたつが目まぐるしく入れ替わることです。ああした切り替えのバランスはどうやって取っているのですか。

奥村
真剣になって誘拐犯だ、ゲイだ、何だと作っていくと、作っている方も疲れるし、どうやって最後までいくか自信がなくなっちゃう。
そこでふっと落ちる、ギャグだったり、間の取り方だったり。効果的な間の取り方っていくつかあるんです。例えば6話の中で画面が真っ暗になるシーンってあるんです。ああいうところをぽんといくだけで、今まで張り詰めていたものがふっとこう切れる。たぶん僕の中にある茶目っ気みたいなところなんですね。

AA
そうした間は原作にも通じるところがありますか。

奥村
よしなが先生の原作が、そうした逃げ場をつくってくれている。原作にそういう部分がいくつかあるじゃないですか、そういうところをフィーチャーしました。
そういうところに僕がポイントを置いた。話だけだと疲れちゃって、原作だと息抜きが欲しい時に、手書きで書いた吹き出しがありますよね、あれを読むと、ほっと和みますよね。これを入れたいなと考えました。
それを入れたことによってふっと抜けるところが、うまくいっているところが何カ所かあるんです。

AA
絶妙だなと思いました。

奥村
いやいや、あれは絶妙というよりも、たぶん先生の原作を読んだときに僕が抱いたものをそのまま入れただけなんです。
だから最初に原作を読んだ時にやりたいって思った、そして自分だったら出来るかもというのがあったんじゃないかなという気がします。

■ CGで実現した『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』の世界

アニメアニメ
映像の話が出たのですが、『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』が非常に変わっているなと思ったのは、CGアニメーションの白組さんと日本アニメーションさんが制作をやっておられます。

奥村
俺も「何でって」聞きました。でも日本アニメーションさんは白組さんと以前から一緒に作品は作っています。
『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』の背景を3D的な見せ方とでどうだろうと、最初の企画段階で提案があった。
まともな背景だとよしなが先生のイメージというのは出せないので。

AA
そうですね。CGというとよくロボットとか車とかを想像します。ところが『西洋骨董洋菓子店 ~アンティーク~』では、どこで使うのかなと思ったら街の背景とかがCGになっていました。

奥村
背景はすべて100%です。

AA
ちょっと驚きでした、監督はどういうふうに指示をされるんですか。

奥村
打ち合わせで最初話した時はCGに見えないようにと、とにかくCGで水彩画を描いてくれという話をしたんです。
CGで水彩画を描けと言ってもテクスチャーを張るわけじゃない。要するに全部作った上でブラッシュアップの色ですね。

色の段階のときにいろいろやってみようかということでテストでいくつか作った。それで昼間、夕方、夜というのを作りました。
そして、「ここはいらないから消して」とか、「ここもいらないから消して」、「ここだけ色を付けて」、「こっちは光を入れてみて」、「水彩画っぽくなったね」といった感じです。
全体にソフトに見えるようにフィルターをかけたみたいな感じ、何回かそれをやって出来たのがあの背景なんです。

AA
細かな違いもありますか?

奥村
中には本当に真っ白で何にもないんだけど、よく見るとワイヤーフレームが見えるときがあるんですよ。例えば夜で真っ暗で全部黒になっている、でもよく見るとワイヤーフレームで家があるんです。
まったく意味がないんですよ、そこはベタに塗ったらいいじゃないみたいな。それでもちゃんと作っているところが、今回の背景の贅沢さです。

AA
ケーキの表現についても伺っていいですか。ケーキのおいしそうなかたちをアニメで表現するのは敷居が高そうに思います。でも、作品のなかではまさにおいしそうとして表現されています。最初どのように考えられたんですか?

奥村
当初写真だったんですよ。トシ・ヨロイヅカさんというシェフの作った、お店で売っているケーキをそのまま使うので、写真でちゃんと出さないと失礼だろうし、きれいに撮って出そうという意見があったんです。
それを聞いた時に僕が「アニメで写真を出したら、せっかくCGもそこまでしているのに興ざめになってしまう、だから絵で描きたい」と言いました。

「じゃあ、トシさんにオーケーを取ってくれ」って言われて、お店までお会いしに行ったんです。そしたらトシさんの方で「絵で描かないとまずいでしょう」って言ってくれたんです。

AA
そこから絵を描くことになったわけですね。

奥村
僕は絵で描くんだと言った手前、ちゃんとしたものを描くぞと思いました。そこで会社へ戻って原画マンに全部絵を描かせたんです。1つのケーキの絵を。
その中で一番自分の雰囲気に合った絵を描いてくれたかたを専属デザイナー、ケーキのデザイナーにしました。

■ よしなが先生から引き出したもの

AA
よしなが先生かららはアニメ化にあたっては何か注文とかあったのですか。

奥村
ずいぶん話させていただいて、いろいろなものを先生から吸収させてもらいました。
2話でエイジがミルフィーユを食べるシーンがあります。あのケーキをぱたんと倒してこう食べる。実は僕は知らなかったんですよ。ケーキってがばっと喰うものだと思っていた。
だから最初エイジもがばっと喰わせようかなと思ったんです。ところが先生とお話した時にミルフィーユとはぱたっと倒して、食べる分だけをフォークで切って食べるというのを聞きました。いろいろなところを先生とのお話の中で参考にさせてもらって、ヒントさせてもらいました。

AA
キャラクターについてはどうですか。

奥村
表情とか言い方とかでも「エイジはこんなことを言わない」とか、「ここで小野はほほを赤らめたりはしません」とかありました。
小野の場合は1回カミングアウトをしているので、もうちょっとのことでは恥ずかしがらないって。キャラを見ると、恥ずかしがりそうなキャラじゃないですか。
そういうことは先生との話し合い、会話の中で出てくるんですよ。僕も原作を読んで取り切れていないところを先生からどんどん引き出しました。

奥村
先生は毎週アフレコに来たんですよ。僕はホストみたいな役割で、「先生、今週は何をいきましょうか」って、そこで「ここの言い方は違う」とかっておっしゃるですよ。それで直すんですけれど、次にこれをコンテに活かそうと、先生にはすごい助けられたね。

AA
原作ファンも満足できるというのは、そういうアニメ制作の中でのインタラクティブな関係があったからなのですね。

奥村
そう。先生とのすごい密なやりとりというのがあるので、原作を見ているファンの人が見ても許してもらえる。結構納得いく作品になったと感じています。。

AA
これはもう監督の代表作って考えてよろしいんですか。

奥村
否が応にも代表作品です。私は海外にいたのが長いので国内の作品が少ないんです。これからばっといく時に、本当に私の代表作になると思います。
いろいろ言われますからね、「見ましたよ、『アンティーク』」とかって。

AA
本日はどうもありがとうございました。


アニメ「西洋骨董洋菓子店~ アンティーク~」 http://antique-anime.com/



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