(2012年1月)映画『ベルセルク 黄金時代篇 覇王の卵』窪岡俊之監督インタビュー (2)映画はガッツとグリフィスの物語として構成 ■ 三浦先生のリアリズムを追求する姿勢が伝播した アニメ!アニメ!(以下AA)三浦先生から何か、ここは気を付けてくださいみたいなことはありましたか?窪岡俊之監督(以下窪岡) 先生はプロット打ち合わせにも毎回出ていらっしゃいましたし、デザインや絵コンテにもすべて目を通しています。メインのキャラクターに関しても、甲冑などはキャラクター表からモデリングデータまで詳しくチェックしていますし、ご意見もいただいています。マンガではこう描いたけど、今、自分はここを気に入らないからそれはもっとリアルにやってくださいといったことも結構ありましたね。窪岡三浦先生は基本的にすごいリアリストなので、ガッツがトイレに行くときに困るから、ここにちゃんと外せるように仕掛けを作ってくれとか。映画『ベルセルク』がリアルな方向に向いているのは、三浦先生のそういうリアリズムを追求する姿勢がこちらに伝播しているということだと思います。AA非常に長いストーリーの原作があって、それを3部に分けるとはいえ、このサイズにまとめるのはすごいですね。窪岡それは脚本家の大河内(一桜)さんの手腕です。最初、実は2時間半ぐらいで、1本でやるという話でした。そのためにあの長大な原作をどうまとめるのかで、大河内さんがシノプシスを書いてくれました。それをもとにいろいろやりとりをしてできたのが、今の脚本です。AA映像にする時に、相当大胆に切っていかなければいけないはずなのに、きちんと盛り上がりを作りつつうまくまとめているのに驚かされました。窪岡ガッツ、キャスカ、グリフィスという3人を軸にして、3人の感情の流れやドラマが途切れないようにかなり気を使いました。AA逆に言うと、今ちょうどお話があったのですけれども、ガッツ、グリフィス、キャスカ以外のキャラクターにはあまりドラマを持たせないで3人を徹底的にフォーカスしたというイメージがあります。窪岡そういうまとめ方になっていますね。『ベルセルク』の魅力としてサブキャラの豊かな個性もあると思います。ただ、やはり全部は入らないんですよね。だからそれはもし機会があれば、何か補足できたらいいなと思っています。鷹の団のメンツのセリフも、調整を随所にやっていました。だから脚本よりもせりふの量は、倍ぐらいには増えています。そうせざるを得なかったですね。■ 映画はガッツとグリフィスの物語として構成 AA 3部作ということですが、今回は黄金時代篇のなかでは非常に明るい話です。2作目以降はかなり闇の部分に入っていきます。そうした切り替えは意識されていますか?窪岡そうなんですよ。今回は、バズーソの頭を割って目ん玉が飛び出るシーンがあります。あれは原作にはありますが、脚本にはなかった描写なんです。映画でわざわざそれをやったのは、『ベルセルク』はこういう作品なんです、というのを早めに言っておきたかったからなんです。AA 予告ですね(笑)。窪岡なにか華やかな、さわやかな青春群像物とかいうふうに思っていて、いきなり後半の「蝕」のシーンというのは不親切のように感じました。ここまで振り幅のある作品ですよと、なるべく先に宣言しておきたかったのです。AA今後2部、3部があるのですが、言ってしまえば4時間半、5時間ぐらいの映画を一気に撮っているみたいなことです。それは体力的にはどうですか?窪岡それはもうスタッフが大変なんです。いや、大変ですとしか言いようがないですね(笑)。AA 今回、監督からみて映像的な見せ場で特に見て欲しい部分はありますか?窪岡冒頭でまずは、「おっ」と言ってもらいたいです。音楽や音響もものすごいですから。あとはゾッドですね。ゾッドもパイロット版のときからすごくこだわってやってきました。あれも非常にうまくいっていると思います。剣術の部分もですね。AA 物語の部分、ガッツとグリフィスのやりとりなどはどうですか?窪岡ガッツがグリフィスに出会うところから物語は始まります。ガッツ個人の物語というより、ガッツとグリフィスの物語として構成されているのです。その対照的な二人的なキャラクター、考え方、お互いが感じ合っている魅力も見せ場ですね。階段の木の葉が舞うシーンの二人は、この映画でも、1、2を争う僕のお気に入りのシーンです。設定に目が行きがちですが、どれだけキャラクターに感情移入できるように描けるかというテーマがありましたので、それがうまく伝わるといいなと思っています。AA 本日はありがとうございました。
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