松本零士さん熊本で講演会 「この本をアニメにしたい」 | アニメ!アニメ!

松本零士さん熊本で講演会 「この本をアニメにしたい」

8月27日、熊本市総合体育館の青年会館ホールにて「大宇宙の旅 ~荒木俊馬博士と私~」と題された講演会が開かれた。

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 8月27日、熊本市総合体育館の青年会館ホールにて「大宇宙の旅 ~荒木俊馬博士と私~」と題された講演会が開かれた。登壇したのは漫画家の松本零士さん。同じ敷地内にある熊本近代文学館では特別展「大宇宙の旅 荒木俊馬展」が9月5日まで開催されている。この講演会は同展と、松本さんが客員教授を務める京都産業大学主催の「京都産業大学DAY 2011」の一環として実施された。
 宇宙物理学者の荒木俊馬は熊本出身で、京都産業大学の創設者および初代総長でもあった。松本さんは、その荒木俊馬の著書「大宇宙の旅」に感銘を受けて漫画家となった。「大宇宙の旅」は『宇宙戦艦ヤマト』、『銀河鉄道999』、『キャプテンハーロック』といった名作の原点だ。

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 松本さんの「大宇宙の旅」との出会いは小学校5年の頃である。戦後の漫画ブームの第1波、九州で言えば『サザエさん』の長谷川町子さんなどの洗礼を受けて自主的に漫画を描き始めた時に出会った。
 「学級文庫に担任の先生が、この偉大な荒木俊馬博士の『大宇宙の旅』を入れてくださった」と松本さん。「これは少年少女向けということですが、実はこの本は物凄い専門書なんですよ。ですから中開けますと数式が1ページ全部あったりですね、何光年とか速度、時間、重力、宇宙の全ての概念が全部書いてあるんです。小学生が見ても何となく宇宙の概念を把握したような気持ちになれる名作であります」。

 途中、デビュー作『蜜蜂の冒険』のインスピレーションの元となったのは兵庫県明石市に居た5歳の頃に見たアニメーション『くもとちゅうりっぷ』であるが、手塚治虫と同じ日に『くもとちゅうりっぷ』を見ていた話、西南戦争などで活躍した谷干城と桐野利秋の刀を持っている話、柳生連也斎の刀を持っていたら、家の前に建った柳生歯科医院の院長が小松左京さんの同級生だったという話、企画中の『銀河鉄道999』実写版のメーテル役を小雪さん、エメラルダス役を天海祐希さんに頼もうと思っている話なども語られた。

 また「『夢は時間を裏切らない。その代わり夢も時間を裏切ってはならん。2つが出会った時に夢は叶うと信じて頑張ろう。そして涙は恥ではない。如何なる偉人鉄人と言われる人たちも、生涯一度も泣かなかったことは無い筈だ。しかし諦めなかった。涙は恥ではない。自分の信念を放棄することが恥なんだ。泣いてもいいから歯を食いしばって頑張る。いつか必ず笑う日が来る』。そういう心情を一生懸命描きたいんです」と一部『銀河鉄道999』の名フレーズも交えた。
 そして最後には「願わくば、この本そのものをアニメーションにしてみたい」と「大宇宙の旅」への思いを述べた。「出来たらこれが生涯の夢になるわけです」。

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 講演会後は熊本近代文学館で「松本零士フェスティバル」も実施された。こちらでは7月7日から開始された肥薩おれんじ鉄道の『銀河鉄道999』ラッピング列車に対する松本さんへの記念切符の贈呈式や、松本さんによる 作画パフォーマンスと題して色紙へ各サインが描かれるなどした。
 熊本マンガミュージアムプロジェクト代表・橋本博さんの公開インタビューでは、講演会で触れられた「大宇宙の旅」のアニメーション化についての質問もなされた。これについて松本さんは「構想はあるんですが、どこでどう作るか、誰が制作費を出すかについては全くの無です。これからなんですよね」と答えた。「でも『大宇宙の旅』を映像化出来れば、これはこれでドラマとしてキチンと成り立ちますし、今の天文観測の新しい部分を入れて、宇宙の概念を描きながら何とかなると思うんですね。それがもし可能になれば生涯を賭けた仕事になると思って、つい口走ってしまった」。

 それから「私は手塚さんの本から何から全て初版を持ってる。小松左京さんの漫画まで持ってるんです。『大地底海』とか『イワンの馬鹿』とか。こないだ亡くなられたけど『復刻してもいいですか?』って言ったら『いいですよ』って言ってた」などといった小話も続いた。

 松本さんは福岡県の久留米市で生まれ、同県の小倉市で育った。来年は小倉市内に北九州市マンガミュージアムが開館する予定で、松本零士コーナーも設けられる。熊本でもマンガミュージアム構想が持ち上がっており、これを機に何らかの進展が期待される。
 このほか最近の熊本の関連では、合志市の夏祭りのPRで初音ミクが使用されて話題となった。8月20日には同市で声優の田中真弓さんによる子ども劇団の公開稽古も行われている。
【真狩祐志】

熊本近代文学館 /http://www.library.pref.kumamoto.jp/kindai/

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