文化庁メディア芸術祭は、現在のライブな文化を伝えることを目的としている。そのため死後贈賞は行わないこととしている。今回の特別功労賞は、その慣例を破ってのものである。それはもし存命であれば、いずれは顕彰されるべき人であったはずと、若くしてなくなった金田さんに何かしらの賞を贈りたいというアニメ関係者からの強い要望から今回の特別功労賞が実現した。
受賞者シンポジウムの主役の不在は、そんな異例さを象徴し、金田さんがアニメ界に残した業績の大きさを示すものだ。その金田さんの代わりに出演者となったのが、アニメの巨匠りん たろう監督、そしてアニメ評論家の氷川竜介さんだ。金田伊功さんの研究家としても知られる氷川竜介さんがその業績、アニメ業界における成果を語る一方で、りんたろうさんが現場の中で経験した金田さんの素顔を紹介する。
当初は本人の出演がない1時間半もの長さをどのように使うかを心配したが、氷川さんの映像や原画など豊富な資料、様々なエピソードを次々に紹介するりん監督の巧みな語り口に、あっという間に時間が過ぎ去った。
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りんたろう監督は『銀河鉄道999』をはじめ、『幻魔大戦』、『ダウンロード』などの自身の代表作でたびたび一緒に仕事を行った。しかし、今回意外だったのは、そうした初期の作品だけでなく、『X』や『メトロポリス』のような90年代、2000年代のりん監督作品にも、要所要所で金田さんが参加していることだ。それは金田さんに対するりん監督の信頼と高い評価を反映したものなのだろう。
りん監督は金田さんについて、「変な人だった。アニメーターには変な人が多いけれど、金田さんはそれがポップで楽しかった」と話す。そして、その仕事ぶりについては「時間軸の使い方が際立っていた。ひとコマに対する執念が凄まじく、独特の感性を持っていた」と賛辞を贈る。また「日本独特のリミテッド・アニメの間を生み出し、それがフォロワーを生み、海外にも評価された」と国内外への影響の大きさにも言及する。
氷川さんはそうした金田さんが作り出したコマの効果や爆発シーンにみられるエフェクトなどの動画を実際に映し出し、その効果を解説した。スクリーンに登場したのは、『無敵鋼人ザンボット3』から『地球へ』、『さらば宇宙戦艦ヤマト』など数多くの代表作、エフェクト表現のひとつの頂点となった『幻魔大戦』まで、ファンにとってはとても贅沢なものだったに違いない。
そして、シンポジウムの間に紹介されずに不満に思っていた『銀河旋風ブライガー』のオープニング映像が、シンポジウムを締めくくった。ファン心を捉えた心憎い演出だ。
文化庁メディア芸術祭 /http://plaza.bunka.go.jp/