この動きは他社に瞬く間に波及し、『鋼の錬金術師 FULL METAL ALCHEMIST』、アニメ『ONE PIECE』など有力作品が次々に国内外同時展開を開始した。わずか一年で、日本で放映されたかなりの作品が、ほとんど時差を置くことなく海外でも視聴出来るようになった。
さらにVIZ Mediaが北米で行う『境界のRINNE』の様に、マンガにも波及し始めている。2009年に日本アニメの海外のビジネスは、インターネットを中心に全く異なる様相を見せ始めた。
しかし、違法配信対策も含まれている海外同時展開は、ビジネス面では依然脆弱である。クランチロールは日本の権利者と話合うことで著作権に対する意識を飛躍的に改善させたが、サイトの有料会員は伸び悩んでいる。今後は、同時展開の利益化が大きな課題となる。
それは、北米でやはり同時展開を手掛けるVIZ MediaやFUNimationにも共通する問題である。依然、残る違法配信、そして『ONE PIECE』の配信前の番組ネット流出事件に見られる違法配信利用者の合法配信に対する悪意の存在など解決されていない問題は依然多い。
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写真: 2009年米国ロサンゼルスアニメエキスポでのクランチロールの様子