短編作家の所属が多いJAAへの高橋監督の参加は珍しく思われるかも知れないが、これはJAAの初代会長が手塚治虫だったことに由来している。高橋監督は虫プロダクションに勤務していたこともあり、その流れでJAAの会員としての在籍歴がある。また、当日はサンライズの企画開発室室長である井上幸一氏も登壇した。
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高橋監督は、「漫画原作を貰わずに監督や脚本の人たちを中心としてプロダクションの独自制作でテレビ放送までこぎつけた作品」をこれまでオリジナルとして意識してやってきたという。
そうして制作された監督の作品『太陽の牙ダグラム』から話が進められた。一時期ギャグものをやった方がよいという意見もあったことから、『ダグラム』が終わった後に2頭身の『チョロQダグラム』をパイロット版として作った。
「その当時『アラレちゃん』(Dr.スランプ)が大人気で、頭身を縮めてディテールを描きこんだものがギャグの世界を展開するのが面白いなぁと思った」と話す。
続いて『装甲騎兵ボトムズ』に話題が移った。『マジンガーZ』から『機動戦士ガンダム』に至る白装束ヒーローの要素は人気を維持しているため、その方向性は要らないと感じたところから始まっている。
それに加えて「やっぱりガンダムの世界がもし戦争だとすると、海軍や空軍はやっちゃってるわけですよ。それなら地べたを這いずり回る陸軍しかない。しばらく僕のロボットは空は飛ばなかったですね。飛ぶと言うか吊り下げられてく感じ」と高橋監督は述べた。
また高橋監督は『ダグラム』で色々やり残したことを完結させたらどうだろうと考えたうちの1つが『ボトムズ』だったという。例えば、アクション部分にスピード感を持たせるためには、ロボットのサイズの限界が4メートルだったそうで、「あれより小さくなるとイメージはパワードスーツになる」。
それに関して井上氏は、「パワードスーツだと中に人間も入れて2重の構造にしないとオモチャ屋さんが商品にしてくれない」、「あと、番組上ロボットは手とか足とかバラバラになったりするんですけど、パワードスーツでそれやると放送しにくいなぁ」と当時の事情を語った。
最後に井上氏は、アニメーションが子供向けのものが物凄く減っており、次の世代が見てくれないとどんどん年寄りのものになってしまうことを危惧した。それに対して「『ボトムズ』を新しくしていくのもアリかな」とした。
そして高橋監督は、「漫画の読み手として傍で仕事が出来たこと、アンタも作り手なんだからと言われたこと。先生は対等に見てくれた」と手塚治虫がいた幸せに感謝した。
イントゥ・アニメーション5・横浜の会期中は、実物大ボトムズの屋外展示や高橋監督をフィーチャーした「テレビアニメから生まれたアート」と題した特別展示コーナーも設けられていた。
【真狩祐志】
イントゥ・アニメーション5・横浜 /http://www.jaa.gr.jp/into5/
ボトムズ /http://www.votoms.net/
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