登壇したのはスクウェア・エニックス代表取締役和田洋一氏、カプコン代表取締役辻本春弘氏、ソニー・コンピュータエンタテインメント SCEワールドワイド・スタジオ プエレジデント吉田修平氏、コナミデジタルエンタテインメント取締役副社長北上一三氏、そしてバンダイナムコゲームス代表取締役鵜之澤伸氏である。
国内家庭用ゲームソフトの有力メーカーの経営者が、自ら2009年、現在のゲーム業界の状況を分析する興味深い内容となった。
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シンポジウムでさらに興味深かかったのは、異なった立場の異なった特徴を持つ5社にもかかわらず、現状の考え方、見方について意見が一致する点が多かったことである。逆に言えば、異なる企業トップが共通して感じるトレンドは、ゲーム産業の大きな潮流とも言える。
そのひとつめは、現在の景気に対する見方である。世界的な景気の後退と、ゲーム産業との連動について各氏は否定的だ。例えば和田氏は今年同社に大ヒットタイトルが数多く出ていることもあり、「現在の景気はクレジット(信用)に影響を与えたもの。借金をして買う家や車には影響があるが、ゲームはもともと借金をして買うようなものでない」と状況を説明する。鵜之澤氏は「IRで景気悪化を言い訳に使っているところがある」と述べるなど、一様に現在の景気とゲーム業界の業績との連動に否定的である。
もうひとつゲスト陣が大きな関心を示したのは、ネットとモバイルである。大手パブリシャーが、携帯などを中心としたカジュアルゲームやSNS的な展開に遅れを取ったとの思いがあるようだ。
北上氏は携帯電話の優れたところは1人1台持っているところ、本当のゲームはそうあるべきなのにコンソール機はそうは行かないと携帯性の重要性に目を向ける。辻本氏も「『モンスターハンター』は携帯で持ち運べて、見せながら人に勧められる口コミ効果がある」と、携帯の優位性を語る。
しかし、オンライン、携帯ゲームの課金モデルには頭を悩ませている。吉田氏は「アイディアは沢山ある。ただし、課金方法、リリース方法が見えないといけない」とビジネスリスクを指摘する。鵜之澤氏は、「我々はパッケージモデルから抜け出せない。パッケージなら1本7000円、59ドルで売れる。でも、その値段で、ダウンロードで売れると思えない。一方で小さな売上では会社は回せない」と悩みは深い。
逆に言えば、課金の問題を克服すれば、状況は大きく変わるのかもしれない。辻氏は「課金モデル、小額課金をクリアすれば未来はある」と強く主張する。また、和田氏も「求められているブレイクスルーはクリエイティブでなく、ビジネスモデルだ」との見解だ。
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一方、海外市場については、海外マーケットと国内マーケットの違いについて焦点があたった。鵜之澤氏は、「海外に行くのはビジネスを拡大するのではなく、開発費が上がると今までのマーケットだけでは成り立たないから。出て行かないわけに行かないのだ」と現在の日本企業の立場を示した。しかし、「米国のパブリッシャーと同じものを作っても仕方がない。日本の強みはそこにない」と独自の道を進むべきとする。
吉田氏はより具体的に、「ハリウッド的なものは米国が得意。日本の強さはインタラクティブとアイディア」とする。辻本氏はそれを「アーケードゲームの伝統」とする。「体感ゲームが流行る中、アーケードゲームのノウハウを持つ日本企業に可能性がある」と話す。
こうした流れは、和田氏の「グローバルという市場は本当はないんです。いろいろなセグメントの積み重ね。多様なニーズに応えられることが必要」との発言に集約されるかもしれない。つまり、グローバルな市場に行っても、日本と同じでは駄目、それぞれの市場を理解しなければマーケットは拡大しないということだ。
ゲーム産業は、日本のエンタテイメント企業のなかでも最も国際化の進んでいる分野である。そうした中で、「世界で受けるものは共通でない」との意識が主流になっていることは興味深い。
アニメでもマンガでも映画でも、時としていいものはどこの国に行ってもいいのだといった主張が通りがちだ。しかし、ゲーム産業が直面する問題はゲームだけでなく、世界市場を狙う全てのエンタテインメント産業に共通するものだ。
東京ゲームショウ2009 公式サイト /http://tgs.cesa.or.jp/index.html
「グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望」
スクウェア・エニックス代表取締役 和田洋一
カプコン代表取締役 辻本春弘
ソニー・コンピュータエンタテインメント SCEワールドワイド・スタジオ プエレジデント
吉田修平
コナミデジタルエンタテインメント取締役副社長 北上一三
バンダイナムコゲームス代表取締役 鵜之澤 伸