フランス マンガ事情 2008年パリ編 | アニメ!アニメ!

フランス マンガ事情 2008年パリ編

レビュー そのほか

【マンガの3倍 バンド・デシネの存在感】
 JETRO(日本貿易振興機構)の調査資料によれば、フランスの日本マンガの売上高はおよそ150億円程度とみられている。
 この数字は200億円超とされている米国よりは少ないが、人口比でみるとフランス人は、国民一人当たりで米国人の3倍以上のお金を日本のマンガに注ぎ込んでいることになる。

 今回、ジャパンエキスポでパリを訪れて、こうした日本マンガブームの姿を少なからず期待していた。しかし、実際には期待していたものとだいぶ違うフランスのマンガ事情がそこにあった。
 日本マンガが人気と言うと、書店の棚にマンガが多数並ぶような姿が思いつくが、そもそもパリには書店の数が少ないし、書店で普通にマンガが置かれている状況でもない。

 マンガ販売の中心は量販店のようである。しかも、量販店で驚かされたのは、マンガの存在感というよりも、フランスのバンド・デシネの存在感の大きさである。バンド・デシネは、日本のマンガや米国のアメリカン・コミックスにあたるもので、絵で物語を追う点でこれらと同様の役割を持っている。
 ヴァージンメガストアのシャンゼリゼ店では、日本のマンガだけを扱ったかなり広いコーナーの一角がある。しかし、バンド・デシネのコーナーは、このマンガコーナーの3倍を軽く超える広大な面積である。

【マンガとバンド・デシネの共通点】
 バンド・デシネの大半はハードカーバーで価格も高い。それは手軽な読み物というよりも、一般的な書籍単行本と同列にあるように感じた。
 そして驚くべきは、バンド・デシネの作品数の多さである。恥ずかしながらバンド・デシネにこんな多様な作品があるとは今まで知らなかった。

 米国での日本マンガ成功の理由は、これまでほとんど存在感のなかった書籍形式のマンガであるグラフックノベル市場の開拓と普及によるものとされることが多い。しかし、フランスではむしろ、この巨大なバンド・デシネ市場の存在こそがマンガ成功の理由でないだろうか。
 もともとフランス人がバンド・デシネを通じて持っていた、絵に描かれた物語を読む習慣のなかに、マンガという表現形態が比較的容易に入り込んだというわけだ。
 そう考えれば、日本の水木しげるさんや谷口ジローさん、つげ義春さんなどの作品が認知されているフランスの独特の状況も理解出来る。マンガは書籍であり、文学としても語ることの出来るものなのだ。

 書籍としてのバンド・デシネの影響はマンガの価格や、装丁にも影響を及ぼしている。フランスでは、一般的なマンガ単行本は1冊7ユーロ程度、1000円から1200円程度である。この価格は日本のマンガ単行本や、米国のグラフィクノベルよりも高めである。
 しかし、マンガを書籍と考えられることで、この価格が正当化されているように思える。さらに米国のグラフィックノベルは、ペーバーバック同じ質の悪い紙でペラペラの表紙だが、フランスではマンガ単行本には日本と同様多色刷りの小奇麗な表紙カバーなどがつく。ここでも使い捨てでない、長く保存する書籍としてのマンガ感覚が感じられる。

【日本マンガ人気は続くのか?】
 一方、アメリカン・コミックスとバンド・デシネの関係も興味深い。アメリカン・コミックスは、バンド・デシネのコーナーの一角に一棚が存在するのみであった。その存在感は大きくない。
 米国でブームの様相をみせているアメリカン・コミックスのグラフィックノベルの勢いは、まだフランスには達していないようだ。雑誌感覚のアメリカン・コミックスは、バンド・デシネと相容れにくいものなのかもしれない。

 日本マンガはフランスでブームというよりも、もう少し深いもののように感じる。それは日本で考えられているような寡占的な市場進出でも、一過性のものでない。
 フランスのバンド・デシネ文化のなかに存在する場所をうまく見つけだしたということでないだろうか。そう考えれば、フランスにおける日本マンガの人気はもうしばらく続くと考えてもいいだろう。
[数土直志]
《animeanime》
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