『ジャパニーズ・クール』の波に乗る -マンガ・アニメ・ゲームの海外戦略-主催: 財団法人セゾン文化財団 / 10月4日(月)/ 東京国際フォーラム講師: 小野打恵氏 株式会社ヒューマンメディア 代表取締役社長ゲスト: 株式会社GDH 代表取締役会長 村濱章司氏 セゾン文化財団の主催で上記タイトルの講演会が開かれた。講師は、様々な分野のプロデュースで活躍されている株式会社ヒューマンメディア代表取締役社長小野打恵氏、ゲストにはアニメビジネスで斬新な動きを見せている株式会社GDH代表取締役会長村濱章司氏である。 講演は、主にジャパニーズクールと称される日本のポップカルチャーの世界市場での広がりと、そもそもポップカルチャーとは何なのかという文化的側面が中心となった。 小野打氏のポップカルチャーの誕生と広がり、歴史的な流れについての考え方は、非常に判り易く論理的であった。特に、日本のポップカルチャーを(1)混血的世界性、(2)若者・大衆・子供による表現、(3)多メディア展開、(4)商業的流通による同時代的評価、(5)シンボル価値のコレクション消費、(6)作り手と受けてのコミュニティ形成の6点によって解説されたのは、曖昧に使われることの多いポップカルチャーの定義にひとつの示唆を与えるであろう。 もっとも、個人的にはポップカルチャーを伝統や権威へのカウンターカルチャーであることや現実社会よりも空想といった面を強調することにはやや抵抗を感じた。私自身の考えでは、ポップカルチャーとはそういったものも含めた文化の融合現象の一面に思えるし、おたく的世界を包括するがもっと幅広い文化のような気がするからだ。 ゲストの村濱氏のトークは、一転してGDHを中心としたアニメーションビジネスの具体的な内容であった。特に、ビジネスマネジメントと高品質のクリエーター集団を統合するGDHの歩みと具体的な数字を出して説明するビジネス戦略には参考になることが多かった。 村濱氏は、アニメーションのビジネスを映像放映(TV放映)の収入から主に成り立つ映像ビジネスと関連商品の販売から成り立つプロモーションビジネス、劇場展開を中心としたビジネス、そして、DVDを中心としたビデオグラムの収益からなるビジネスと4つに分類した。そのうえで、比較的資金が少なく済み、リスクも少ない点からGDHのビジネスの中心はビデオグラムのビジネスになっていると説明した。 さらに、急激に拡大している海外市場にも注目をしている。村濱氏は個人的に将来は北米の日本アニメ市場は規模で日本市場を抜くのでないか思っていると述べ、それにもかかわらず、多くの日本企業が有効な海外戦略を行っていないため新興企業が入る余地があるとGDHの存在意義を強調した。 また最後に、GDHの企業強みとして(1) いち早く海外法人を設立し、スタッフを中心に現地化を進めたこと(2) 海外イベントの積極的な参加で認知度を向上させていること(3) CG(コンピュターグラッフィック)の品質の高さ(4) ブランド・アイデンティの確立(5) 市場のニーズに合った派手な企画を打ち出すこと以上の5点をあげて話を締めくくった。 参加者は、どちらかといえば文化・芸術関係のマネージメント団体のかたが多くマンガ・アニメ・ゲームといった領域のかたは少なかったようだが、村濱氏の積極的なビジネス展開の姿勢は大きな参考になったのでないだろうか。/セゾン文化財団 /株式会社ヒューマンメディア /GDH