アニメ・マンガに目がない「アニメ!アニメ!」編集部が、まだアニメ化されてはいないけれどぜひ読んでほしいおすすめマンガを紹介する連載<おすすめマンガ手帖>。今回は、芳文社の雑誌『まんがタイムきららMAX』にて連載中こかむもによる4コマ漫画『ぬるめた』を紹介する。
今日も人造人間くるみは、ちあきに施された実用性のない機能を披露する。ゆきはそれに生真面目に驚き、さきなは悪ノリをしながらちあき達を煽る。そして会話は明後日の方向へ果てしなく転がり続ける。これが『ぬるめた』の日常だ。本作は2020年より現在も連載中。可愛らしい絵柄とテンポの良い会話劇が魅力の、オルタナティブ日常系と銘打たれた一作である。

※以下の本文には“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意ください。
◆天才科学者と人造人間、そして幼馴染たちが織りなすカオスな日常
魚住くるみは、高度な科学技術で生み出された人造人間。見た目も性格も小学生そのものだ。くるみの保護者である宗円千明(ちあき)は、天才的な科学力でくるみを改造したり変形させたりと、悪ふざけが絶えない。ちあきとよく行動を共にする幼馴染の鴉越咲樹菜(さきな)は、一見ダウナーでクールな文学少女だが、実はノリがよく笑い上戸。そして、この三人に振り回されてばかりのオタク少女、高田詩雪(ゆき)。本作は、この四人が織りなす、楽しく騒がしく、そして混沌とした日々を描いている。
絵柄もキャラクターも非常に可愛らしく、特に私服姿が描かれる回は必見。キャラクター同士の濃密な絡みも多く、ハイテンションなコメディでありながら、ほのかな好意の矢印が交錯するドラマ性もあるため、関係性の変化を楽しみたい読者にもおすすめだ。
◆カオスな非日常も笑い飛ばす、最強の“内輪ノリ”

『ぬるめた』は、“内輪ノリ”の楽しさに満ちた漫画だ。四人はいつも馬鹿馬鹿しい改造にはしゃぎ、くだらないことで笑い転げる。改造という設定は非日常的でも、そこに流れているのは完全に「放課後」の空気である。
くるみが突然重油を飲み始めるなど、日常生活ではまずありえない突飛でカオスなシチュエーションでさえ、日常モノとしてすんなり受け入れられる。それは、この状況を全力で楽しむ彼女たちの姿が、バカ騒ぎに興じる高校生の微笑ましい日常そのものだからだろう。彼女たちは、くるみの奇妙な改造も、銭湯で見つけた変な柄の湯桶も、すべてを等しく笑い飛ばす。『ぬるめた』は、周りから見れば理解不能かもしれない、そんな”どうでもいいこと”ではしゃぐ放課後の時間を描き続けているのだ。
気心の知れた友人同士の会話というのはそれだけで面白く、それが可愛らしいデザインの少女たちともなれば多幸感も生まれるというものだ。
◆“内輪”から“外”へ。広がる世界と深まる関係
同じような楽しい日々が続くように見える日常系作品も、物語の進行とともにキャラクターの関係や内面には変化が生じていく『ぬるめた』も例外ではない。
当初は閉じた“内輪”だけを描くかに見えた本作だが、巻を経るごとにクラスメイトとの交流を描き始める。くるみは、その子どもらしさと人懐っこさからクラスメイトと男女問わず親しくなっていく。一方、ちあきとさきなは身内以外への関心が薄く、クラスメイトとの交流に消極的だったが、くるみを通じて徐々に接点を持ち始める。また、高校からこのグループに加わったゆきが、少しずつ“内輪”に馴染んでいく過程も、見逃せない変化の一つだろう。
変わらないように見える日常を積み重ねながら、確かに新しい一面や新しい関係が生まれていく。彼女たちの日常に宿る、このさりげなくも確かな変化は、ハイテンションで息つく暇もないギャグと両輪をなす、『ぬるめた』の大きな魅力と言える。そして、内輪の外との交流が増えることで、逆説的に“内輪ノリ”の特殊性も強調される。外部の視点によって『ぬるめた』という世界の輪郭を鮮やかに描き出した、6巻収録の第69話「ぬるめた以外」は必読のエピソードだ。
◆作品の原点 フルカラーで味わう『ぬるめた アーキタイプ』
もし『ぬるめた』を読んでハマったなら、連載開始以前にニコニコ静画で公開されていた原型作「ぬるめた アーキタイプ」もぜひ読んでいただきたい。現在の連載版とは多少の変更はあるものの、同じキャラたちによる空気感が味わえる。「ぬるめたアーキタイプ」は本編がカラーであることも特長だ。『ぬるめた』本編は教室や帰り道など、シチュエーションに根差した描写が巧みだが、「アーキタイプ」では背景に色がつくことで、その場の空気感や温度感がより一層豊かに表現されている。
少し変わったキャラクターたちが紡ぐ、愛おしい日常。この物語が続いていくことを願いながら、みんなで『ぬるめた』のアニメ化を応援しよう!




