――キャスティングについて伺います。主演の直井玲斗役に高橋文哉さんを起用された理由はなんでしょうか。
玲斗という役については、イケメンかどうかはわかりませんが、「情けないけどかわいらしい、放っておけない感じ」を出せる人を探していたんです。そんなとき、ある実写映画の予告編で彼が情けない表情を見せていて「これだ」と思い、オファーしました。結果高橋さんは、玲斗のダメ男だけど愛すべきキャラクターを見事に演じてくれたと思います。

――千舟役の天海祐希さんは指名だったそうですね。
手紙を書いてお願いしました。天海さんは、生き方や佇まいが千舟というキャラクターに重なる気がしたんです。アニメの強い女性キャラはピーキーな感じに描かれがちですけど、天海さんなら落ち着いていて、強く格好いい女性像を体現してくれると思いました。
――佐治優美役の齋藤飛鳥さんも素晴らしかったです。
彼女はオーディションに来てくれたんです。「私がここに来ていいのかな?」という雰囲気で佇んでいましたが(笑)、第一声を聞いて「あ、この声だ」と感じました。
――音楽についてもお聞かせください。作中では佐治家にまつわる「歌」が重要な鍵になりますね。
音楽の菅野祐悟さんには、本格的に劇伴を作る前に、まず「記憶をこじ開けるような曲」として劇中で重要なハミング曲を作ってほしいと依頼しました。先日NHKの番組で、ビートルズの曲を聴いた高齢の方が「心のカーテンを開いたようだ」って言っていたんですけど、まさにそういうイメージです。菅野さんはピアノだけで素晴らしい曲に仕上げてくださいました。
■日本のアニメ制作の現状―「日常芝居」を描ける人材とは

――伊藤監督にとって長編映画は3作目となりますが、映画を監督することに特別な思いはありますか。
意外と映画に対して特別な思いがあったんだなって感じです。細田守監督の下でやっていた経験もあるからだと思いますけど。そういう自覚を持ってからは、意識的に映画館でお金を払ってアニメ、実写に限らず映画を見るようにしています。そうしないと作り手として文句も言えませんから(笑)。
――近年の長編アニメ市場についてはどう感じていますか。シリーズもののヒットが目立つ一方で、単発のオリジナル企画の難しさも言われています。
ジャンプ作品や『名探偵コナン』のようなシリーズの劇場版は作られ続けるでしょうが、単発の映画を作るときにスタッフ集めが困難になってきています。アクション満載の作品なら、世界中から「描きたい」というアニメーターやスタッフが集まり、さながら作画博覧会のようになるかもしれませんが、今回のような「地道な日常芝居」を丁寧に描けるアニメーターは世界的に見ても貴重だと思いました。日本のベテランの方々の存在が有難かったです。そういう職人のようなアニメーターを大事にし、同時に若手も育てていかないといけないと感じています。
――そういった「日常芝居」を描ける人材の育成に課題があるということですか。
数年に1本単位でもいいから、今回のような企画が継続的にあることが大事だと思います。俺自身も、原恵一監督や山田尚子監督のように、日常芝居を大切にする作品も作り続けられたらいいですけど。
――本作はフランスのセールス会社Charadesがセールス権を獲得したというニュースもありました。海外展開も視野に入った作品なわけですね。
Charadesは細田監督のプロデューサー齋藤優一郎さんが繋いでくれたんです。『HELLO WORLD』のときはコロナで海外に行けなかったので、今回は海外に作品と一緒に行きたいという思いがあります。
――最後に、これから映画をご覧になるアニメファンに向けて見どころをお願いします。
気楽な気持ちで見に来てほしいです。ちゃんと泣ける作品になっていると思います。映画のチケット代の元は取らせますよ。損はさせませんので、ぜひ劇場でご覧ください。

『クスノキの番人』
1月30日(金)全国公開
【CAST】
高橋文哉/天海祐希
齋藤飛鳥 宮世琉弥/大沢たかお
【STAFF】
原作:東野圭吾「クスノキの番人」(実業之日本社文庫刊)
監督:伊藤智彦
脚本:岸本卓
キャラクターデザイン:山口つばさ 板垣彰子
音楽:菅野祐悟
美術監督:滝口比呂志
美術設定:末武康光
色彩設計:橋本 賢
衣装デザイン:高橋 毅
CGディレクター:塚本倫基
撮影監督:佐藤哲平
編集:西山 茂
スーパーヴァイジングサウンドエディター:勝俣まさとし
リレコーディングミキサー:藤島敬弘
制作:A-1 Pictures / Psyde Kick Studio
配給:アニプレックス
【主題歌】
Uru「傍らにて月夜」
作詞・作曲:清水依与吏
編曲:back number
(C)東野圭吾/アニメ「クスノキの番人」製作委員会










