声優の前田佳織里がアーティストデビュー「表現者として焦りは常に感じている」【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

声優の前田佳織里がアーティストデビュー「表現者として焦りは常に感じている」【インタビュー】

前田佳織里1st EP『未完成STAR』インタビュー。「本番を最高のものにしたい」「表現者としての焦りは常に感じている」という言葉から、表現者のプロとしてのポリシーと、大好きな音楽への思いを感じた。

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 声優の前田佳織里がアーティストデビュー。3月15日(水)には、1st EP『未完成STAR』をリリースする。学生時代にガールズバンドを組んでいたという彼女だが、小さいころは外で遊びたがりで、ピアノのレッスンに通うことも億劫だったという。そんな前田佳織里にとって、音楽とは? インタビューで彼女が語った「本番を最高のものにしたい」「表現者としての焦りは常に感じている」という言葉から、表現者のプロとしてのポリシーと、大好きな音楽への思いを感じた。

[取材・文・:M.TOKU]

表現者として焦りは常に感じている

――アーティストデビューおめでとうございます! ファン待望のデビューではありますが、ご自身としては声優活動をはじめた頃から、できればアーティストとしても活動したいという気持ちはありましたか?

 私、高校生のときにガールズバンドを組んでいまして。そのときから漠然と「人前で何かを表現する仕事に就きたい」と思うようになったんです。それから役によって様々な表現ができる、色々な人や人外も演じられる「声優」という職業を知り、惹かれるようになりました。音楽は今につながる道しるべとなったものであり、たくさんのことを教えてくれた、私にとってかけがえのないものなんですよね。ですからアーティストデビューできるのが、夢のようです。

――ガールズバンドとしてずっと人前で表現していきたい、プロとして活動したいという気持ちはなかった?

 ありました。当時ガールズバンドを組んでいたメンバーとは会うべくして出会ったと思っていたくらい、運命を感じていたんです。実際、その子たちと「音楽レーベルさんにデモ音源送っちゃう!?」っていう話もしていました。ただ、メンバーのなかには他にやりたいこと・夢を持っている子もいて。このメンバーじゃないと意味がないと思っていたので、別のバンドを組んでデビューしようとは考えませんでした。悔いはないですね。

――運命的な出会いだったんですね。声優として活動されている方のなかには、前田さんより前にアーティストデビューされている方もいらっしゃいます。そういう仲間の活動は、前田さんの目にどのように映っていましたか?

 事務所の先輩である富田美憂ちゃんがデビューしたとき、ライブを見に行ったんです。すごいなって思うと同時に、間近で声優としての活動も見てきたから、お芝居と音楽の活動を両立する大変さも分かって。そういう先輩方の背中や姿勢を見て、逆に覚悟が決まりました。

――周りの仲間たちがデビューしていくことに、焦りはなかった?

 デビューしていくことに、というより表現者として焦りは常に感じていますよ。それはなくちゃダメだと個人的には思っています。役者としてもアーティストとしても、自分はまだまだ周りに追いつけていないと感じるなら、磨いていかなきゃ。お芝居も歌も実力が足りているのかどうかは、常に考えています。

――「プロ」ですね。

 私、どんなときでも本番を最高のものにしたくて。練習よりも本番、リハーサルよりも本番。それが私のポリシーなんです。それって、結局はひとつ、ひとつ手を抜かずに取り組まないとできないことだと思っていて。そういう姿勢も含めて、今回のデビューに繋がった部分がある気がしています。自分がやってきたことは無駄じゃなかった、頑張ってきてよかったと思いました。

――本番を最高のものにするというのは、声優のお仕事を始めてから感じるようになったこと?

 ガールズバンドをやっていた頃からですね。自分のなかで決定的な瞬間があったんです。忘れもしない、ガールズバンドとして最初にステージに立ったとき。もう恥ずかしいくらい下手くそで。悔しくて、悔しくて仕方ありませんでした。その気持ちをぶつけるが如く、家に帰ってから腹式呼吸を掴むために、6時間ずっと練習したんです。

――6時間!?

 とにかく、何かが分かるまでやり続けなきゃと思って。それが、「本番でいちばんを出す」と思うようになった一歩。あんな辛い思いを自分もしたくないし、みなさんに恥ずかしい演奏を聞いてもらうのはダメだと思って。突然、理屈じゃない負けず嫌いを発揮したんですよね。絶対に負けないみたいな。そうやって練習を繰り返していたあるとき、本番で自分でも思ってもみなかったパフォーマンスをできて。いわゆるゾーンに入ったのかな? それがすっごく気持ちよかったんです。

――その体験があるからこそ、今もステージに立っている。

 そうなのかもしれません。あの感覚は病みつきになりますよ(笑)。ライブって、本番も準備もすごく大変なんです。そこに至るまでに、身も心も削っているときがあります。それでもステージに立って、本番でしか届けられないパフォーマンスができて、お客さんの笑顔を見たとき、頑張ってよかったなと報われるんです。ステージの規模は関係ありません。地元のライブハウスでも、いまコンテンツを通じて立つ会場でも、「本番をいちばんに」という気持ちは一緒です。

「歌 前田佳織里」の文字が出たとき感動しました

――高校生の頃にガールズバンドをやっていたというお話ですが、それまでは何か習い事などやっていましたか?

 ピアノを習おうとしていた時期があります。ただ、当時は体を動かすのが好きで、外で遊びたくて。座って何かをやるってことが苦手だったんです。嫌すぎてピアノの体験授業から逃げていました(笑)。あのときは、むしろ音楽やピアノが嫌いなくらいだったかも。今はピアノの音色も音楽も大好きです!

――その他の楽器をやった経験は?

 ギターを少々……。ただFコードが届かなくて諦めました。もう少しやっておけばよかったなぁ。いつか機会があれば、弾き語りできたら……という夢を抱いています。

――音楽を聞くのは好きだった?

 好きでした! 小さい頃から母が車で音楽を流していて、それを聞いていましたね。中学生くらいからウォークマンが流行りだして、そこから色々な音楽を聞き始めて自分のお気に入りも増えていった気がします。日常的に音楽を聞くようになりました。今でも私の気分転換は、音楽を聞きながら散歩をすることです。そんな音楽を常に聞いていたい人間なのに、なぜかワイヤレスイヤホンを家に忘れてしまいがちで。すぐコンビニで買っちゃうんですよね。そうして、ワイヤレスイヤホンが増えて……(笑)。

――全く一緒です。家に忘れて、すぐにコンビニで買っちゃう。

 まさか、共感してもらえるとは(笑)。カバンに予備入れときゃいいのにねぇ。なんで忘れるんだろう。でも、聞きたいときに聞けないのはストレスなので。コンビニでイヤホンを買える時代でよかったと思います(笑)。

――ですね(笑)。ちなみに、どういう曲をよく聞いていましたか?

 ガールズバンドのときコピーしていたチャットモンチーさん、あとはELLEGARDENさん、阿部真央さんもよく聞いていました。

――声優の仕事を始めてから聞く音楽は変わりましたか?

 声優さんから知って聞く音楽が増えましたね。私、田村ゆかりさんを尊敬していて。歌もお上手でダンスもかわいい、お芝居は言わずもがなすごくて、トークも面白い。何でもできるんです。そんな田村さんをはじめ、アーティストデビューしている声優の先輩方の曲は、自分の世界を広げるという意味でもよく聞くようになりました。

――そんな音楽への思いが強い前田さんがアーティストデビューし、1stEPがリリースされます。こちらに収録される各曲について教えてください。まずは「光ったコインが示す方」。本曲は『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』のオープニング主題歌ですね。

 アニメで「歌 前田佳織里」の文字が出たとき感動しました。主人公のミツハの「楽しく前向きに未来を切り開こう」というマインドに曲がぴったりで、タイアップ曲を歌っているという感覚によりなれてうれしかったです。アーティストデビューするという今の私のマインドともリンクした、このタイミングならではの表現ができた気もしています!

――レコーディングはいかがでしたか?

 キャラクターを背負わずに歌ううえで、自分は何を表現したいのか、この曲をどう歌いたいのかすごく考えました。これまでキャラクターとして歌ってきたなかで、言葉を綺麗に歌わないといけないという意識があったんです。だから、ソロのときもかわいくて、綺麗に歌わないとダメなんじゃないかって思って。そしたら、スタッフさんから「まず、気持ちを届けることを大切にしたほうがいいよ。素直に出た気持ちでやってみたら?」というアドバイスをいただいたんです。そうして歌ってみたら、「すごくエッジが効いているね」「力強さを持っていて、一生懸命さが応援したくなる」と言ってもらえました。

――実際に歌ってみることで、新たな自分に気づくことができた。

 ですね。オンエアされたあと、視聴者の方が「前田さんってこんなにカッコいい寄りのぱきっとした歌声なんだ」とおっしゃっているのを見つけて、うれしくなりました。

「歌」「声優」は生きる道であり、生涯をかけて極めたいもの

――続いて「Fantasy」。

 ロックテイストあふれるダンストラックでかつ厚みのあるメロディが好きです。音源が届いたときから、何度もループして聞きました。ただ、楽曲もいただいた仮歌も素晴らし過ぎたゆえに、ちゃんと実力が伴わないと歌いこなせないと思って。自分の中で、すごく壁を感じた曲でした。

――その分、練習もしてレコーディングに臨んだ。

 そうですね。この曲は厚みを持たせるために、ヴォーカルトラックをかなり重ねて録ったんです。世界観を表現するために必要なことだったので、頑張りました! 私のステージにかける執念や泥臭い気持ちが詰まっている曲なので、ぜひ聞いて欲しいです。

――3曲目は「ポジティブガール」。

 等身大の前田が表現された曲です。メロディはキャッチ―でかつチャーミング。背中を押してくれるような歌詞も印象的です。ただ、底抜けに明るいってわけじゃなくて。「明日も頑張ろうかな」と思えるくらいのテンション感が、私は好きですね。

――こちらのレコーディングはいかがでしたか?

 この曲は音に対して言葉が詰まっているので、リズムをとりながらも早口で歌う必要があったんです。一方で気軽に、のびのびと歌いたい曲だったので、そのバランスが難しかったですね。歌はしっかりと、心はのびのびと、という絶妙なバランスが求められる曲でした。

――意識し過ぎると、どっちかに引っ張られちゃう。

 そうなんですよ! 個人的には五分五分じゃないと成立しないと思っていたので、その調整に苦戦しました。歌詞にもある、「真面目のなかの遊び心を入れる」ことは大変でしたが、レコーディングは楽しかったですね。

――ラストは「花香リ春薫ル」。

 ゆったりとしたバラード調の曲です。1stEPのリリースが春で、私も春や桜の歌が好きなこともあり、桜並木を歩きながら聞きたい曲があったらと思って、提案をさせてもらいました。この曲で伝えたかったのは、綺麗に咲いているお花にも過程があるということ。お花は美しく咲き誇る前に、冬を乗り越えるというプロセスがあるんです。ずっと耐え抜いてきたからこそ綺麗に咲いて、多くの人を感動させることもできると思うんですよね。

――結果も大事だけれど、それに至るまでの過程を知れば、もっと感動したり違う感情が生まれたりするかもしれない。

 そうなんです! 成功している人を見て「いいなぁ、才能があって」って羨ましがっちゃうときってないですか? でもそれって、どこかでその人の努力を見ようとしてないんじゃないかなって。圧倒的な才能を持っている方もいらっしゃいますが、みんなには見せていない努力ってあると思うんです。私はその過程や努力を見ない・考えない人にはなりたくなくって。

――その人にはその人なりにやってきた努力があって、結果につながっている。

 自分にはないものって、どうしても綺麗に見えると思うんです。ただ、その人の結果だけを見るんじゃなくて、過程も踏まえたうえで「自分はそこまでやってきたのか」と考えることも必要なんじゃないかな。そういうメッセージをこの曲に込めました。

――素敵なメッセージだと思います。1stEPは、バラエティに富んだ一枚に仕上がりましたね。

 こんなに色々なジャンルを歌えると思ってなくて驚きました。前田佳織里ってこんな表現もできるんだって感じてもらえる一枚になっていたら、いいな。

――そういう意味では、アーティスト・前田佳織里の方向性はまだ模索中と言えるかもしれない。

 そうかもしれません。自由だからこそ、色々なことをやっていきたいです。

――では、今後やってみたいことは?

 みんなの背中を押せるアーティストになりたいです。例えば、夢を叶えたいけど、どうしたらいいか分からないって学生さんを応援する青春ソングなんかを歌ってみたいですね。私自身、歌に力をもらいながら夢を叶えるために進んでいたので、同じような気持ちの方に歌を届けたいです。そうして、ゆくゆくは「ジャンル:前田佳織里」を確立したいですね……!

――本日は色々とお話ありがとうございました。最後に、前田さんにとって「歌」「声優」とは?

 生きる道であり、生涯をかけて極めたいものです。お芝居したり、ラジオでお喋りしたり、ライブをやったりすることって、簡単なことではないんですよね。大変なことも多いです。でも、やったら不思議と心が回復している自分もいて。そして、みなさんの応援がさらなる力となる。それが表現として出ていく。自分のなかで素敵なサイクルができあがっているなと感じています。

 私、応援してくださるみなさんの活力になりたいんです。例えばライブに来てくださる方って、時間を割いて来てくれている訳じゃないですか。そうやって人生のなかの貴重な時間を使っていただいている方々には「今日のライブに来てよかった」「すごく楽しかったから明日も頑張ろう」と思ってもらいたいんです。だからこそ、やっぱり「本番でいちばんを出す」。その気持ちを忘れず、これからも活動していこうと思います!

前田佳織里1st EP『未完成STAR』
【発売日】3月15日(水)
【価格】
初回限定盤(CD+DVD)3,850円(税込)
通常盤(CD)1,980円(税込)
【CD収録内容】
1. 光ったコインが示す方
2. Fantasy
3. ポジティブガール
4. 花香リ春薫ル
【DVD収録内容】
Music Videoほか、メイキング映像を収録
※初回限定盤:40Pスペシャルフォトブック封入、三方背スリーブケース仕様

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