「名探偵コナン」のメインテーマで笑う日が来た!? 秋アニメ「犯人の犯沢さん」大地丙太郎監督インタビュー | アニメ!アニメ!

「名探偵コナン」のメインテーマで笑う日が来た!? 秋アニメ「犯人の犯沢さん」大地丙太郎監督インタビュー

10月3日より放送スタートとなるアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』。黒タイツのようなビジュアルの“犯人”を主人公とした“日常・クリミナル・ギャグ”を、大地丙太郎監督が手掛ける。

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『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』キービジュアル(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会
  • 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』キービジュアル(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会
  • 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』場面カット(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会
  • 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』場面カット(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会
  • 『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』場面カット(C)かんばまゆこ・青山剛昌/小学館・「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」製作委員会

10月3日よりTOKYO MXほかにて放送、4日よりNetflixにて配信されるアニメ『名探偵コナン 犯人の犯沢さん(以下、『犯人の犯沢さん』)』
『名探偵コナン』でおなじみの、黒タイツのようなビジュアルの“犯人”を主人公とした“日常・クリミナル・ギャグ”が展開される本作は、青山剛昌(原案)とかんばまゆこによる『名探偵コナン』のスピンオフ作品が原作のアニメで、監督はこれまで多くのコメディ作品を手がけてきた大地丙太郎が担当する。

アニメ!アニメ!では、久しぶりのギャグに燃えているという大地監督にインタビュー! 憧れの犯罪都市・米花町に降り立った犯沢さんのハートフルな日常を描く本作の注目ポイントやアフレコ裏話、さらに大地監督のギャグ作品への想いなどを語ってもらった。

■ギャグ作品だけを作って生きていきたい(笑)


――『名探偵コナン』100巻プロジェクトの一環として、『名探偵コナン ゼロの日常(ティータイム)』とともにアニメ化が発表された『犯人の犯沢さん』。本作にはどのようなイメージを持っていましたか?

大地 原作を初めて目にしたときは、アニメ化するうえでどこから手をつけていいかわからなかったので、とりあえず本家(※以下、本家=『名探偵コナン』)を1巻から読みました。10巻くらいまで読んだところで「のんびりもしていられない!」と気付いたのですが、ざっくり最新刊まで目を通しました。

『犯人の犯沢さん』をアニメにするときに重要になるのは導入部分だと思っていたのですが、『名探偵コナン』の劇場版を一緒に観に行く娘からは「とにかくいいテンポにしてね」とリクエストされました(笑)。ギャグ作品でテンポが大事なのはもちろん知っていましたが、その上で「テンポよく」と強調されたということは、この作品においてテンポがかなり大事なことなんだと再認識できるきっかけになりました。

――原作のかんばまゆこ先生、青山剛昌先生とはどんなお話をされましたか?

大地 青山先生とはお話する機会はなかったのですが、かんば先生とは、毎回原作の読み合わせに参加していただきました。アニメ化する際のリクエストは特別なく、ほぼ「おまかせ」していただいています。本家との絡みなどで小ネタとして求められているところなどは、伝授していただきました。

打ち合わせはほぼリモートで、実際にお目にかかれたのは最初のアフレコのとき。『犯人の犯沢さん』についての話で盛り上がると思いきや、僕が手掛けた過去作品『こどものおもちゃ』や『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『ギャグマンガ日和』についての質問がバンバン飛んできて、取材をされているような感覚になりました(笑)。

――とても懐かしい作品がズラリですね。

大地 「どんなふうに作ったんですか?」と聞かれたので「一生懸命作りました」と答えたことしか覚えていないです。せっかくたくさん見てくださっていたのだから、気の利いたことが言えたらよかったなとちょっぴり後悔しています。

『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』場面カット

――オフィシャルコメントで「久しぶりのギャグに燃えてます」とおっしゃっていましたが、大地監督がギャグ作品に挑む際のこだわりを教えてください。

大地 僕の原点は赤塚不二夫先生の『おそ松くん』です。面白さに衝撃を受けて、笑いの凄さを見せつけられた気がしました。笑いは生活の中で一番の薬だと思っています。人が笑っている姿ってすごく素敵ですよね。愛想笑いや作り笑いなど、笑いにもいろいろあるけれど、心から笑うことって本当に健康的だと思うんです。フィジカルにもメンタルにも健康的だから、笑える社会であってほしいという思いで、ギャグ作品を作っています。

――大地監督が手掛けた作品は、ギャグものでなくてもコメディ要素が多く含まれていますね。

大地 笑いの作品にも、コメディ、ギャグなどいくつか種類はありますが、やっぱり僕はギャグが一番好きだし、許されるのならギャグ作品だけを作って生きていきたい(笑)。この気持ちは『おそ松くん』を初めて見た瞬間から思っていることなので、久しぶりに回ってきたギャグアニメの仕事には燃えずにはいられませんでした。

■『犯人の犯沢さん』は蒼井くんに預けた


『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』場面カット

――そんな待ちに待ったギャグアニメである本作でのこだわりは?

大地 犯沢さんが蒼井(翔太)くんであること、そして本家のメインテーマを使うこと。この2つが決まったときに、一番ホッとしました。まさかメインテーマで笑う日がくるとは思わなかったです。蒼井くんをキャスティングし、メインテーマが使えればもう大成功。ギャグが成り立つと思っていたので、本当にうれしかったし、作るのもすごく楽しくなりました。

――犯沢さん役の蒼井さんはどのように決まったのでしょうか?

大地 かんば先生とリモートで初めてお話しした際に一番印象に残っていたのは、犯沢さんは男だとか女だとか性別は分からないという言葉でした。そのときにふっと頭に浮かんだのが蒼井くんの顔でした。実現はしなかったのですが、以前、別の作品でやはり性別不明なキャラクターのキャスティングを検討する際に、蒼井くんをよく知っているプロデューサーから「このキャラなら蒼井くんがやったら一番いい!」と教えてもらったのを覚えていて。その後『明治東亰恋伽』という作品で滝廉太郎役を演じてもらいました。そのときにあまりにも「良い!」と思ったことが頭をよぎって、この役はぜひ蒼井くんにという想いが強くなりました。

――どんなふうに「良い!」と感じたのでしょうか?

大地 滝廉太郎が「鳩ぽっぽ」の作曲に悩みながら、メロディを口ずさむシーンがありました。その際、僕がたった1度口ずさんだいわゆる未完成版をイメージしたいい加減な「鳩ぽっぽ」のメロディ、なんなら口ずさんだ僕でさえよく覚えていないメロディを、蒼井くんは完コピしてアフレコしたんです。

それだけでもすごいと思ったのですが、もう少し本物の「鳩ぽっぽ」に近づけるようリクエストすると、しっかりアジャストして絶妙なメロディに仕上げてくれました。音響監督と「この子、すごいね」とびっくりしたのを覚えています。

――そんなエピソードがあったのですね。すごい!

大地 そのときに「蒼井くん、絶対ギャグ作品イケる」と思ったんです。そんな経緯もあって犯沢さん役を検討する際に、蒼井くんが浮かんだわけです。中性的なところも含めて、彼しかいないと思ったし、蒼井くんに決まった時点で『犯人の犯沢さん』は勝ちだな、と思いました。声も存在も神秘さがあるし、何より彼の感性を信じているので「インスピレーションでやってください」とお願いしている部分はかなり多いです。

――では、大部分は蒼井さんの解釈での犯沢さんになっていると?

大地 かなり入っています。なので、演出はとても楽です。やっていただくたびに「いいね!」「そうそう!」と思うところばかりなので(笑)。キャスティングの時点で『犯人の犯沢さん』は蒼井くんに預けたみたいなところはあります。

――SNSでは犯沢さんの声予想がかなり盛り上がりを見せました。

大地 本家のイメージが強いので、機械音を予想した方も多かったようです。SNSでの盛り上がりを見ながら「早く言いたい!」という気持ちでいっぱいになっていました(笑)。発表後のみなさんの反応は、「違う!」という声もなかったですが、「蒼井さん、あぁ、そうか」という感じで割と静かだったのが印象的でした。これ以上、何も言いようがないと思っていただけたと前向きに解釈しています。

――腑に落ちたというか、その線があったかという感じなのかなと思いました。本家の声のイメージはあまりにも強かったし、正直想像ができなかったというのも大きい気がしています。

大地 声を聞いたら「納得!」と思っていただけるはずです!

――人気作品のスピンオフということもあり、ファンの期待は高いと見受けられます。アニメ化が決定してからのファンの反応はいかがでしょうか?

大地 意識すると堅くなっちゃうし余計な情報も入ってしまうので、SNSはなるべく見ないようにしています。思った以上にSNSは、いいことも悪いこともたくさん情報を得てしまいます。

「見ないようにしよう」と思ったきっかけは、ペヤングでおなじみのまるか食品の3つの掟を目にしてから。1つは「流行の調査を一切しない」、2つめは「ライバル企業の新商品は絶対に参考にしない」、そして3つめは「毎日絶対に試食会を開く」こと。僕には最初の2つがすごく響きました。なんと言われようと、自分が一番面白いと思ったものを提供すればいいと思えるようになりました。

――なるほど。

大地 元々そう思ってはいたけれど、いろいろなしがらみでそれが通らないこともあります。でも、僕がギャグ作品に携わるときは、クライアントの意向さえOKであれば、この気持ちは貫き通したい。

全員にウケる、全員に喜んでもらうことなんて絶対無理な話。とくにギャグにはそういう側面があります。「あんなアニメ見ない、と思っていたのに見たら結構笑っちゃった」となるのが理想です。そこを目指して作り続けていきたいです。


《タナカシノブ》
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