読者に人気のアニメ作品から、期待の声優に作品や役柄について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2022年7月号には、『処刑少女の生きる道(バージンロード)』でメノウを演じる佐伯伊織が登場。本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューをお届けする。
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無垢なメノウの思いに寄り添うようなイメージで
――『処刑少女の生きる道(バージンロード)』という作品の第一印象を教えてください。
原作を読み始めてすぐは、冒頭に登場する男の子が主人公で、彼とメノウの2人の物語だと思っていました。ところが、すぐに男の子が処刑されてしまい、とても驚いたことを覚えています。物語としては、日本からメノウたちのいる異世界に転生してきた人が活躍するのではなく、転生者は厄災を引き起こす者であり、異世界人側がそれを処刑しようとする設定がおもしろいなと感じました。
――メノウの最初の印象は?
オーディションのときに初めてビジュアルを見たのですが、私の好みのど真ん中でした。髪の色とポニーテールがとくに好きですね。性格面では、淡々と《迷い人》を処刑していくタイプなんだろうなと思いました。
――物語が進むにつれて、少しずつその過去が明らかになりました。
メノウは、かつて人災(ヒューマン・エラー)化した《迷い人》の純粋概念によって、精神が漂白されてしまっていたんですよね。何も感じない状態でもあったので、導師(マスター)であるフレアと出会い、《処刑人》のノウハウをたたき込まれて、そのとおりに実行しているだけだった。でも、アカリと旅をするようになって、天真爛漫なアカリと接していくうちに、処刑することにためらいや疑問を持つようになっている。だんだんと自発的に考えたり感じたりできるようになっているんだなと思います。
――そんなメノウのどんなところが魅力的だと感じていますか?
ピュアで幼いところです。漂白されているからではありますが、とても無垢で、未来への可能性が無限大に広がっているところもいいなと思います。
――そんなメノウを演じるにあたり、どんなことを心がけていますか?
メノウは精神を漂白されて空っぽなまま過ごしてきたので、頭は切れるけれど、感情や心情が未完成なところがあるんですよね。なので、お芝居をするときはあまり決め込まずに、メノウが置かれている状況をイメージし、そのとき出てきた感情に身を任せるような演じ方をしていきました。
――メノウを演じていて難しかったことは?
すべてです。メノウ自身が自分とはなんであるかを探している部分があるので、演じている私も彼女を理解できていないところが多いんです。それもあって、とにかく彼女の気持ちに心を揃えて一緒に歩くことを心がけましたが、つねに試行錯誤をしていました。
――スタッフから何かディレクションはありましたか?
各話でお芝居に関する細かなディレクションはありましたが、メノウというキャラクターの全体像に関しては川崎芳樹監督からも「お任せします」と言ってもらったんです。最初のころこそ、私のさじ加減で演じてしまって大丈夫なのかなという心配もありましたが、回を重ねるごとに、私が感じたものをそのまま出せばいいんだと思えるようになりました。
――メノウと佐伯さん自身とで、似ているところはありますか?
自分をわかりきれていないところです。私、自己PRをしてくださいと言われたときに「私ってなんだろう?」と考えてしまうタイプなんです。何かを経験して、その場で自分はこういう考え方をするんだなと気づくことが多いので、内面ができあがっていないという意味では、似ているかもしれません。あと自分に無関心なところと、お仕事をきっちりこなすという意識を持っているところは似ていると思います。
――逆に、似ていないところは?
美貌?(笑)あとは、仕事との向き合い方です。私、ひとつのことに集中してしまいがちなんです。処刑するという任務とそれを相手に知られないようにするということが同時にできないと思うので、私に《処刑人》はできませんね。
――メノウと一緒に旅をしているアカリの印象を教えてください。
天真爛漫でおっぱいが大きい(笑)。あまり物事を深く考えない、現代っ子というのが最初の印象でした。でも、頭が切れて、視野が広い。時々急に雰囲気が変わるので二重人格なのかなと思っていました。物語が進んで、時間を巻き戻す力を持ち、メノウとの旅を何度もやり直していることが明らかになり、だからこそ達観しているのだとわかって、すごく納得ができました。
――処刑人補佐のモモと、グリザリカ王国の王女・アーシュナにはどんな印象がありますか?
モモは、メノウには懐いているけれど、アーシュナに対してはウザいとかキモいとか、思ったことを隠さずに口にするところと、処刑人補佐としてしっかり仕事ができるところが好きです。アーシュナは、口は悪いけどやさしいんですよね。登場するときに必ずテーマ曲が流れるところは主人公感があります。さらに、もめごとが起こったときには、絶対に解決してくれるという安心感を与えてくれるし、カリスマ性があるところが素敵だなと思います。
――アフレコの思い出は?
だいたいメインキャスト4人での収録だったのですが、私だけ隔離されたブースでの収録だったんです。ほかの方の声は聞こえるけれど姿が見えずさびしさがありましたが、皆さんとはほかの現場でご一緒することもあって、とても仲よくなりました。
――第9話までで、印象に残っているシーンはありますか?
第6話のオーウェル大司教との戦いは、アクションがスタイリッシュで熱かったです。大司教はメノウよりも格段に強いので、本当にギリギリの奇跡的な勝利だったところも印象深いです。戦いのシーンでは、メノウの戦闘力の高さを考えて、息をあまり入れずにお芝居したことも思い出に残っています。
――物語はクライマックス目前ですが、この先の見どころを教えてください。
メノウのいる世界には、第一から第三まで身分があるんですが、さらに第四を主張する団体が登場しています。この先は、その団体の代表であり、街に魔薬を流通させているマノンの謎が明らかになり、その結果、メノウたちがいる世界についても理解が進んでいくと思います。また、これまで以上の強大な相手との戦いも待っているので、ぜひ放映を楽しみにしていてください。
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MegamiにQuestion
Q.自分のチャームポイント
A.後頭部
アカリ役の佳原萌枝ちゃんに「後頭部が好き!」と言われたので!
Q.自分のニックネーム
A.いおりん、さえきち
学生時代から、いおりんと呼ばれることが多いです。長谷川育美さんからは、さえきちと呼ばれます。
Q.自分の声の特徴
A.高めのハスキーボイス
声は低くないけどハスキーだね、と言われることがよくあります。あと、息の量が多めです。
Q.自分の性格
A.マイペース
数人でご飯を食べに行ったときは、みんなが会話をしてくれるからと、話は聞きつつもひとり食事に熱中してしまいます。おなかが空いていると、食に夢中になっちゃうみたいです。
Q.いま、ハマっているものは?
A.YouTubeで声芸をする方や動物の動画を見ること
モルモットやカピバラの動画をよく見ています。カピバラが露天風呂に入っているライブ映像は、水の音に癒されます。
Q.自分が武器を持つとしたら何にする?
A.弓
前に出て傷を負いたくないし、すぐ逃げられるところにいたいので。
Q.いま、旅をするとしたらどこに行く?
A.ヨーロッパ、金沢、台湾の九份
国内なら自然が多くて温泉を巡れるところ。金沢は海鮮がおいしいと聞いたので行ってみたいです。九份は、『千と千尋の神隠し』のモデルになったといわれているので、一度行ってみたいです。
Q.本作のキャッチフレーズ
A.人との別れってなんだろう?
作品のテーマに、出会いと別れってありそうな気がするんです。それに、どのキャラも別れを経験していると思うので。
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取材・文/野下奈生(アイプランニング)
プロフィール
佐伯伊織【さえき・いおり】7月22日生まれ。神奈川県出身。スワロウ所属。主な出演作は、『ウマ娘 プリティーダービー』キングヘイロー役、『マブラヴ オルタネイティヴ』彩峰慧役など。
作品Information
時間を巻き戻す力を持つ《迷い人》アカリに対する儀式場での処刑は失敗した。《処刑人》のメノウは、引き続きアカリを殺す方法を見つけるべく、彼女と旅を続ける。しかし、その旅の途中で第四の身分を主張する団体「フォース」による魔薬騒動に巻き込まれてしまう。
放映日:毎週金曜深夜0時30分よりTOKYO MXほかにて放映中
※本稿の内容は「メガミマガジン」2022年7月号でインタビュー時のものです。
(C)佐藤真登・SBクリエイティブ/処刑少女製作委員会