「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」木下麦監督の証言「ただの総集編にはしたくない」【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」木下麦監督の証言「ただの総集編にはしたくない」【インタビュー】

『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』より、木下麦監督のインタビューをお届け。

インタビュー
注目記事
(C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
  • (C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ
キャラクターたちの何気ない言動がひとつの事件につながり、真相が一気に見えていく心地よさ。オリジナルアニメ『オッドタクシー』はその巧妙な群像劇や独自の世界観で、TVシリーズ放送後にたちまち注目作となった。

4月1日より公開中の『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』は、TVシリーズを新たな視点で描き、新作シーンを加えた作品。「ただの総集編にはしたくない」と木下麦監督が語るように、ファンにとっても新鮮さや驚きに満ちた物語となっている。

鍵を握るのは17人のキャラクターによる証言。アイデアが生まれた経緯や、演出のこだわりなどを木下麦監督にうかがった。

[取材・文:ハシビロコ]

打開策となった“証言”


――映画制作作業を終えた今の心境はいかがでしょうか。

自信を持って世に送り出せる作品になったと思っています。映画はTVシリーズとは少し異なり、お客さんが作品や結末を知っている状態からのスタートです。最終回後を描くことのできる嬉しさを感じると同時に、身が引き締まるような緊張感を持ちました。監督としてもベストを尽くしましたし、新規に書き下ろしていただいた脚本もかなりおもしろくなっているので、期待にお応えできると思います。

――脚本担当の此元和津也さんとは、映画化にあたりどのような打ち合わせをしましたか。

無理難題な要求だったと思うのですが、「ただの総集編にはしたくない」と伝えました。

TVシリーズは全部で約5時間ありますが、劇場版は尺が約2時間しかない。どうまとめていくかはかなり難しい課題でした。最初は僕とプロデューサーで脚本の方向性を話し合っていましたが、ピンとくるアイデアが浮かんでこなくて。此元さんに相談したところ、「“証言”というフォーマットを取り入れればうまくいくかもしれません」と提案してくださったんです。この切り口が決まったおかげで、映画の方向性が見えたと感じています。

あとはとにかく、TVシリーズを楽しんでくださったお客さんの期待に沿える作品になるよう心がけました。その甲斐もあり、鑑賞後に気持ちよく劇場を出ることができるラストになったと思います。



――脚本を読んだときの感想はいかがでしたか。

予想以上に此元さんのサービス精神が旺盛だと感じました。お客さんを楽しませようと工夫をこらしていることが強く伝わってきて。監督としても「絶対におもしろくしよう!」と気合いが入りました。

――演出でとくにこだわったポイントを教えてください。

本作はTVシリーズの合間に証言シーンが挟まる構成です。「この場面は証言なんだ」とお客さんが認識できるよう、カメラのアングルをあえて固定し、記号としての役割も持たせました。

また、証言シーンの仕草や演技では、TVシリーズでは描けなかったキャラクターの新たな側面も見せています。特に山本は、これまで人には見せていない部分が出たと思うので注目してみてください。



改めて気づいた小戸川の魅力


――TVシリーズの映像を映画用に編集するとき、軸にしたポイントはありますか。

本作の根本にある「女子高生の失踪事件」を軸に、必要なシーンを取捨選択していきました。ただ、シーンを選ぶ作業がとても大変で。TVシリーズでも編集を担当してくださった後田(良樹)さんからアドバイスをもらえてよかったです。「この部分の説明はほかの場面にもあるから、このセリフを削っても話が成立する」、「このシーンはキャラクターの感情を表すうえで絶対に必要だから残そう」など、各シーンについて一緒に話し合いながら判断しました。

TVシリーズは各話ごとにおもしろさが出るように作りましたが、映画は約2時間という大きな流れの中でひとつの物語が成立するようにしています。時間をかけて編集したおかげで、いい映像になりました。

――映画の編集作業で改めてTVシリーズと向き合い、新たに気づいたことはありましたか。

小戸川は友達思いだな、と感じました。今井や柿花、白川などほかの人を助けるために行動する場面が多くて。新作カットでも、小戸川が窓の外を見ながら感謝を口にするシーンがあります。その場面を見たとき、僕自身も「小戸川は友達思いで感謝を忘れない、いい子なんだな」と改めて感じました。



キャストの演技も光る43秒間


――TVアニメでは、映像制作前に音声収録をする「プレスコ」を採用していました。映画の収録も引き続きプレスコだったのでしょうか。

映画の新作シーンはアフレコで収録しました。ヤノだけは、独特なリズム感を出すためにプレスコをしています。

収録手法でそれほど演技に違いはありませんが、役者さんは映画の方が演じやすかったかもしれません。TVシリーズは絵ができていない状態で、作品全体の世界観もまだわからない。だから役者さんが困惑した部分も多かったと思います。しかし映画では全員が共通の世界観を持って臨むことができたので、安心して演じているような印象を受けました。



――演技に対して監督からはどのようなディレクションをしたのでしょうか。

TVシリーズと同じく、自然体な演技をお願いしました。動物のキャラクターで写実的なドラマを描くことで生まれるギャップは、本作の企画書段階から終始こだわっています。

映画のアフレコでは各キャラクターが置かれた状況や心情についても説明しましたが、演技そのものは役者さんにお任せしました。僕が細かく言わなくても、みなさん演技が上手なのでキャラクターのニュアンスをきちんと演じていただけるんです。

――アフレコでとくに印象に残ったシーンはありますか。

ラストに登場する、ワンカットで見せる43秒間のシーンです。小戸川役の花江(夏樹)さんが脚本から温度感をしっかり察知してくださったおかげで、イメージ通りの演技になりました。空気が読めておらず不器用になってしまう、そんな小戸川の声が表現されています。映像もとてもいい雰囲気に仕上がっていて、僕自身も気に入っています。

「夢を見ているよう」予想外だったファンからの反響


――『オッドタクシー』はTVシリーズ放送前後で反響が大きく変わった作品です。監督ご自身も、放送前後で変化を感じましたか。

僕のTwitterフォロワー数が一気に増えました(笑)。最初は200人くらいでしたが、放送後は1万2000人に増えて驚いた記憶があります。

TVシリーズ終了後もBlu-ray BOXの発売や映画化が決まり、夢を見ているような気持ちになりました。当初は「今はBlu-rayが売れない時代だから」と聞き、商品化されないのも仕方ない、と考えていて。ファンの方々の応援があったからこそBlu-ray BOX発売企画も成功し、感謝の気持ちでいっぱいです。

――本作はファンの間で考察が盛んに行われています。これは監督の予想通りだったのでしょうか。

予想外です。作品を楽しんでくれたことや、僕以上にしっかり考えてくれていることも伝わってきました。予期せぬシーンが考察の対象になっていて、「これはミスリードになっていたのか」と逆に気づかされる部分もあったほどです。

たとえばTVシリーズ第1話で剛力が「俺は何に見える?」と聞いて、小戸川が「ゴリラ」と答えるシーン。何気ない会話ですが放送後に考察対象になっていて、「よく考えたらここもヒントになっていたな」と気づかされました。

――初監督作品となった『オッドタクシー』の制作を通して、監督自身が感じた変化はありますか。

自分の中にある設計図や情報の解像度をもっと高くするために、画面の隅々まで意識してアニメを見るようになりました。TVアニメや劇場版アニメは参加するスタッフの人数がかなり多いので、監督の考えや表現したいことを共有しておかなければスムーズに制作できません。だからこそ伝える力の重要さをとくに実感し、今後に活かしたいと思いました。

もしまたアニメを作るチャンスがあれば、スリラー系やサスペンス系など、大人向けのハードな作品にも挑戦したいです。

――最後に映画を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

温かい声援や多くの熱量があったからこそ、映画化に至ることができました。本当にありがとうございます。

本作はTVシリーズを見た人も新鮮な気持ちで楽しめる内容になっています。最終回では描ききれなかったひとつの答えも出しているので、映画館で見届けていただけると嬉しいです。

また、エンドロールの演出も工夫しているので、最後まで見逃さないでほしいです。音楽もみなさんが聞き覚えのある曲をアレンジしているので、エモーショナルな余韻に浸ることができると思います。



映画『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』は4月1日より公開中。証言でつむがれる新たな真相や、TVシリーズ後に小戸川たちが迎えた結末を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」
2022年4月1日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開

■スタッフ
企画・原作:P.I.C.S.
脚本:此元和津也
監督:木下麦
副監督:新田典生
キャラクターデザイン:木下麦、中山裕美
美術監督:加藤賢司
色彩設計:大関たつ枝
撮影監督:天田雅
編集:後田良樹
音響監督:吉田光平
音響制作:ポニーキャニオンエンタープライズ
音楽:PUNPEE VaVa OMSB
音楽制作:ポニーキャニオン
音楽制作協力:SUMMIT, Inc.
アニメーション制作:P.I.C.S.×OLM
配給:アスミック・エース
製作:映画小戸川交通パートナーズ

■キャスト
花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、三森すずこ、小泉萌香、村上まなつ、昴生・亜生(ミキ)、ユースケ、津田篤宏(ダイアン)、たかし(トレンディエンジェル)、村上知子(森三中)、浜田賢二、酒井広大、斉藤壮馬、古川慎、堀井茶渡、汐宮あまね、神楽千歌、虎島貴明、METEOR


(C)P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ

※上記リンクより商品を購入すると、売上の一部がアニメ!アニメ!に還元されることがあります
《ハシビロコ》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集