アニメビジネスは今どこへ進んでいるのか―TVと配信、海外状況から読み解く【藤津亮太のアニメの門V 第77回】 | アニメ!アニメ!

アニメビジネスは今どこへ進んでいるのか―TVと配信、海外状況から読み解く【藤津亮太のアニメの門V 第77回】

今後数年、そこからさらに先の数年―10年後のアニメビジネスの概況を決定する重要な要素とは。

連載 藤津亮太のアニメの門V
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12月1日、日本動画協会のサイトに『アニメ産業レポート2021』のサマリーがアップされた(https://aja.gr.jp/download/anime-industry-report-2021-summary_jp)。これは11月にリリースされた『アニメ産業レポート2021』の主要部分をまとめたもの。『アニメ産業レポート2021』本体も日本動画協会のサイト(https://aja.gr.jp/jigyou/chousa/sangyo_toukei)から販売サイトへとリンクが貼ってあり、そちらで購入することができる。

『アニメ産業レポート2021』は、アニメ制作・製作を中心に、アニメが関わる諸産業の、2020年のビジネス状況をまとめたレポートで毎年秋に出版されている。当然、レポートの大きな話題のひとつは「コロナ禍のアニメビジネスに対する影響」だが、そこは実際にレポートを読んでいただくとして(事実、ライブエンターテイメントは大変大きな影響を受けている)、当欄では「アニメビジネスがどういう方向に進んでいるかを確認する」という観点から、その内容を紹介したいと思う。

まず注目したいのは「TVアニメの放送タイトル数」。これが2019年、2020年と連続して大幅に減っているのである。

直近でもっとも放送タイトル数が多かったのは2016年の361タイトル。続く2017年、2018年は352タイトル、350タイトルと微減ながら高原状態だったが、2019年には302タイトルと大幅に減少し、2020年は278タイトルとさらに減少した。

どうして2019年にTVアニメは減少したのか。昨年のアニメ産業レポートでは、その理由をいくつか推測している。

それによると「中国でのセールスが減速した」「中国が全話揃った状態での納品が前提のため2020年の放送が減った」(※)、「配信シリーズや劇場版に制作リソースが移行している」「ファーストウィンドウの多角化により、TV以外のところで最初に発表されるケースも増えている」などが挙げられている。
(※僕が取材で聞いた時は、中国の場合、納品以前に配信するかどうかの審査の時点で全話揃っている必要があるとのことだった)

いずれも納得のいく推測で、2020年のタイトル数減少は、2019年の状況に、コロナ禍による制作スケジュールの遅れとそれに伴う放送スケジュールの組み換えが加わった、ということだろう。

最近、取材でチラチラと聞くのが「全話納品」の話。これは中国の審査に限った話ではなく、配信サービスからそこを求められるのだという。2年ほど前に「配信サービスに全話納品といわれているがなかなか難しい」という話を聞くことがあったが、最近だと「放送・配信前に全話完成している予定で進んでいる」という話を聞くことが増えてきた。もちろんすべての作品がそうなわけはなく、(これまで通り?)「なんとか放送に間に合った」という作品もあるのだが、それでも全体的な傾向として、徐々にTVアニメ制作のスケジュールの立て方がかわりつつあるようだ。

つまり2020年の放送タイトル数減少は、2~3年ほど前に立てられた企画が、全話納品前提でスケジュールを立てたため、2020年ではなく2021年以降の放送となったから、という過渡期ならではという理由もあるだろう。昨今、深夜枠に再放送があるのも、こうして新作が減った分の放送枠を維持するための施策でもあろう。

これはつまり「TVアニメのほうに軸足があっても、配信サービスとの関係性も無視できない」という状況になってきているということだろう。これは単純に「TVの覇権を配信が奪う」というような話ではなく、「どちらが先にリリースされるにせよ、どちらでも楽しんでもらう環境を作るのが当たり前になった」という状況が広まりつつあるということではないだろうか。

TVアニメのタイトル数は、2000年代中盤の2006年をピークに2010年まで右肩下がりが続いたことがある。この時は、動画投稿サイトの登場などを背景に北米のDVD市場の崩壊が原因などが大きな理由だった。レポートでは、今回のタイトル数減少は、その時とはまた状況が異なる、と記している。

では、配信そのものの状況はどうなのか。2020年は、コロナ禍による巣ごもり需要が背景にあったためもあるだろう、配信ビジネスはまた大きく伸長した。配信売上(配信サイトのアニメ配信による売上の合算)は2019年の685億円から930億円と126.3%の伸びをみせた。この金額は、TV(テレビ局のアニメ関連売上)839億円、ビデオ(ビデオグラムのエンドユーザー売上)466億円を上回っている。配信でアニメを見るという行為が、一層定着したことがうかがえる。

ただし制作・製作会社が配信ビジネスで得た額は216億円(2019年)から191億円(2020年)と減少している。これについて同レポートは、TVのタイトル数減少を踏まえつつ「コロナ禍の影響で配信サービスに納品された作品数が減った」と推測し、そのほかにも可能性として「配信サービスが買取で、視聴数が増えても制作・製作会社にはバックがない」「配信オリジナル作品の調達が一段落」という理由を挙げている。

一方、レポートには「定額制動画配信サービス別2021年上半期トップ10」という表が掲載され、各サービスの人気作品・番組が示されている。ただしそこでは『鬼滅の刃』『ゆるキャン△』などの旧作アニメが強く、配信サービス独占配信のオリジナルアニメはそれほど上にあがってきていない、という指摘がされている。

ここから配信アニメの現状を考えると、ビジネス的には「配信サービスは重要な番組販売先」「TVでも放送された人気アニメが強い」「TVアニメが減ると、配信へのタイトル供給も減る」「配信のみのオリジナル企画はTV放送されたものほどは関心が集まらないが、サービスの存在感は示すことができる」といった状況がわかる。

つまりTVと配信を分けて考えるのではなく一連の流れと考え、どちらをファーストウィンドウにして、どちらをセカンドウインンドウにするといいのか、というふうに考えていったほうがいい状況がきている、ということだ。そういうふうに考えるとすると、配信独占タイトルも、ただユーザーを囲い込むために配信するのではなく、TV放送・映画館での上映など本来のサービス外での露出と組み合わせて、TVから配信へと導線を引くという発想もありうるということになる。

また海外の状況に目を転じると、海外ビジネスは延びている。海外におけるアニメ関連の消費全体は1兆2394億円と、広い意味でのアニメ産業市場(ユーザーが支払った金額を推定・合算した金額)の半分以上を占めている。アニメ業界市場(アニメ制作企業の売上を推定・合算した金額)でも761億円と2019年の718億円から伸びている。内訳を見ると、契約件数ベースでは商品化と配信が目立って大きい。

レポートでは、中国以外の国の存在感が高まっている、とした上で「配信プラットフォーム企業を経由して作品の認知が高まり、更なる消費をゲームや商品、あるいはDVDなどで行うといった、日本市場におけるアニメ作品の消費行動に近い動きがみられるようになってきている。あるいはそのような生態系を確立しようという意向が商品化契約の増加からうかがうことができよう」とまとめている。

以上、TVと配信、そして海外状況のポイントを拾ってみた。こうしてみると、おぼろげながらに2024年から2025年ごろまで、どこに注目をしてアニメを取り囲む状況を見ればいいかが見えてくる。

ここから3~4年は
TVと配信が両輪となっていく過程で、TVを配信の導線に使う方法がいかに確立されるのか
海外では配信を中心に、作品をファンが消費する(日本のような)エコシステムがいかに確立するか
あたりが注目点になるのではないか、と個人的に感じた。

だがこれはあくまでここ数年の話。そこからさらに先の数年―10年後を見据えた未来予想―については、こうした直接的なビジネス的な環境ではない部分が重要になるはずだ。レポートには、関係者による様々な現状報告も掲載されている。そこで挙げられているような「働き方改革」「ギャランティの上昇」「制作環境のデジタル化」「人手不足(人材育成)」といった基礎条件の改善がどこまでなされるか。そここそが10年後のアニメビジネスの概況を決定する重要な要素になるのではないかと思った。

《藤津亮太》

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