感情表現のキモはシワと汗―Netflixアニメ映画「オルタード・カーボン:リスリーブド」のCG制作秘話 | アニメ!アニメ!

感情表現のキモはシワと汗―Netflixアニメ映画「オルタード・カーボン:リスリーブド」のCG制作秘話

「あにつく 2020」より、セッション「Netflixアニメ映画『オルタード・カーボン:リスリーブド』におけるアニメーション/ショット作業について」のレポートをお届けします。

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これからアニメ制作者を目指す次世代とアニメファンを対象に、アニメを作る手法や人材育成、マーケットのノウハウを伝える総合イベント「あにつく」が2020年9月25日から9月27日の日程でオンライン開催された。

本稿では、株式会社アニマの田中剛氏と三山一男氏による「Netflixアニメ映画『オルタード・カーボン:リスリーブド』におけるアニメーション/ショット作業について」のレポートをお届けする。

なお、アニマは本年度「あにつく2021」にも出展し、「Netflixアニメ映画 『オルタード・カーボン:リスリーブド』から紐解く、 世界観を作ることの重要性&CGアニメーターの長編監督デビュー体験記」と題し、また違う切り口でセッションを行った。

田中剛氏は、アニメーションデパートメントマネージャー、三山氏はコンポジットスーパーバイザーを務めている。今回のプレゼンテーションでは、田中氏が『オルタード・カーボン:リスリーブド』のアニメーションについて、三山氏がライティング撮影とコンポジットについて解説した。

まず、田中氏が作品概要を説明。『オルタード・カーボン』はNetflixが手掛ける実写のオリジナルSFシリーズで、Netflixアニメ映画『オルタード・カーボン:リスリーブド』はそのスピンオフアニメーションとなる。

人間の精神がデジタル化され、「スタック」と呼ばれる装置にバックアップでき、スリーヴと呼ばれるボディに換装し直すことで死を回避できる世界を描いている。

田中氏は、本作の中島丈監督が掲げたキーワードを紹介。ハードボイルド、肉体を使うアクション、近未来、太田垣康男先生のキャラクターデザイン、ヤクザと日本らしさ、そしてアニメ作品であることの6つをが制作にあたり大事にされたという。

アニメーションパートとしての挑戦は、太田垣氏のキャラクターをどのようにCGアニメーションに落とし込むかだったという。立体感を感じさせ、骨格や筋肉もリアルに感じさせるデザインに、鬼気迫る表情やマンガ的な記号である汗をいかにハードボイルドなSF世界で描くかを考えたそうだ。

実際に出来上がったキャラクターのモデルはテクスチャの濃淡があり、太い輪郭線が特徴的に仕上がっている。ライティングも凝ったものを当てる予定だったため、解剖学的な正確さとマンガらしさのタッチも残すよう情報量を保持することを大切にしたそうだ。

続いて田中氏は、本作のフェイシャルリグについて解説した。従来型の事前に作られた形を混ぜ合わせていく「ブレンドシェイプベース」のコントロールではなく、どちらかと言骨や筋肉を動かすようなコントローラーを採用し、本作では、アニメーションにモーションキャプチャも採用しているが、太田垣氏の鬼気迫る表情を活かすために、アニメーターが顔の筋肉をコントローラーで動かし、自在に表情を作れるようにしたという。

このフェイシャルリグによって、筋肉を操作し顔にシワ作れ、さらに汗も出せるようにしている。実際の人間の表情に近いコントロールを可能にしているが可能だそう。その上でシワや汗といったアニメ的な記号を載せる事で太田垣氏のキャラクターを再現している。

このシワと汗を表情に加えていくことによって感情表現がいかに豊かになるかを、シワを加える前の画像との比較でわかりやすく説明していく。

本作の制作にあたり、シワと汗の感情の組み合わせをマッピングした「プルチックモデル」と呼ばれる表を用意したそうだ。これは、シワの濃さや汗の量でどんな感情を表すことができるかを表にまとめたものだ。

さらに全ショットの感情表を作ってアニメーターに配布していたとのこと。

続いて、アニメーションのスタイルについての解説に入る。本作ではプリビズを作成して、アクションプランをブラッシュアップする手法を選択。本作の世界観にあわせ、アニメ的な過剰な決めポーズやケレン味は、世界観を壊す恐れがあるために抑え気味にしたそうだ。

また、アクションシーンのプリビズを作成することで、モーションアクターも動きをイメージしやすく、全体の尺やカメラワークも想定できるようになったとのこと。

三山氏は、本作のビジュアルについて紹介した。

まずはキャラクターのビジュアルについて。メインキャラクターのデザインにグラデーションや髪の毛のハイライト、キーライトやリムライトのスタイルなど細かい指示が書き込まれた画像を示し、本作のビジュアルのこだわりを詳細に解説していく。

「キーライトの光・影は固くはっきりとさせる」、「リムライトを固く当てる」、「アウトラインを入れる」の3点が、3DCGをアニメらしく見せるうえで大事な要素だそうだ。

影の中の表現をどうするかに最も多く時間を割いたそうで、周りの環境光をどれだけ受けるのかの塩梅は3Dでアニメルックを作るうえで重要になってくる。

環境光を大きく受けさせればるような影をつければ、3Dのリッチな陰影は表現しやすいが、環境光陰影の影響を少なくしたほうが伝統的なセルアニメには近づく。

最終的には3Dの的な環境の光のに影響を受けつつ、2D的にな明るさをオフセットでできるようにして、3Dと2Dの両方の考え方を取り入れたとのこと。

背景については外部の会社にジオメトリを作成してもらい、シェーダーとライティングを社内で調整しているそうだ。

例として示された路地裏の背景シーンは、最初のころはレンダリングに1フレームで1時間ほどレンダリングに時間がとられていたそうだが、社内での最適化によって20分くらいに抑えられたという。

続いて作品の世界観を規定する背景のイメージボードが紹介された。SFと日本のヤクザの世界が融合した独特の世界観が上手く表現されている。

基本的には暖色が多いが、ところどころにブルーの寒色も使用されており、物語の展開に合わせてどちらの色を多く使っていくかを工夫していったそうだ。

本作の総尺は72分、ショット数は1058ショット、ショット作業の期間が3ヶ月とのこと。そのうちアニマでは747のショットを担当している。

アニマではアクアリウムと呼ばれる内製のビューアパイプラインを使用して作業状況を管理している。ブラウザで動作し、コメントを入れてフィードバックを書き込めるようになっており、ステータスごとの進行状況もわかりやすく管理できるようになっている。

データベースの閲覧も可能で、各ショットに必要なアセットも一覧できる。

ショット作業ではMayaとNukeを使用し、カメラポジションやカメラワークを作り、自動設定されるライティングに微調整を行っていき、演出的に必要ならばカメラのブレなども加えていき、カラーの調整なども細かく行っている。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]

《杉本穂高》
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