【ネタバレアリ解説】「鬼滅の刃 無限列車編」結末を知っていても感動してしまう、アニメならではの演出とは? | アニメ!アニメ!

【ネタバレアリ解説】「鬼滅の刃 無限列車編」結末を知っていても感動してしまう、アニメならではの演出とは?

10月16日に公開が始まった劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』が、記録破りの大ヒットスタートとなっています。

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『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』本ポスター(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』本ポスター(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 劇場版『鬼滅の刃』無限列車編(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』第1弾キービジュアル(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
10月16日に公開が始まった劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』が、記録破りの大ヒットスタートとなっています。

筆者もさっそく見てきましたが、その数字に恥じない堂々たる大作で、改めて原作とアニメーション制作を務めたufotableのポテンシャルを実感しました。

おそらく、初週に詰めかけた観客の多くは原作を読んで、本作の結末も展開も知っていたと思われます。にもかかわらず、多くの観客を感動させているということは実に驚くべきことではないでしょうか。その事実に、アニメーションを映画館で観るという体験の特別さを感じずにはいられません。
そんな映画の持つ力が、今回の『無限列車編』の物語をいかに輝かせたのかについて考えてみたいと思います。

※一部作品のネタバレがあります。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』本ポスター(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

動き出す列車が高揚感を高める冒頭


『無限列車編』は、全編のほとんどが走行列車内で物語が展開します。冒頭、走り出す列車に炭治郎たちが飛び乗るシーンから動く絵の魅力が満載です。
3Dで作られた蒸気機関車がうなりを上げ、煙をもうもうと拭き上げながら深い夜の中を動き出すと同時に物語も動き出します。

考えてみれば、あれだけ巨大な物体が猛スピードで走るというのは驚くべきことです。山育ちの伊之助がやたらと驚いて、「すげー、すげー!」とはしゃいでいますが、その高揚感は「この大人気マンガの人気エピソードがついに動いた!」という観客の感動と似ているでしょう。
観客と伊之助の気持ちがリンクさせているわけです。大きなスクリーンで見るからこそ、大きな列車が動くことに感動する伊之助の気持ちがよくわかります。

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列車ならではのアクションの見せ方を工夫


映像化された際は、やはりアクションシーンの仕上がりは気になります。結論から言えば、アクションシーンは、多くの観客の期待に応える素晴らしい出来だったと言えるでしょう。

列車内という空間の狭い舞台のため、派手なアクションを見せるには様々な工夫が必要になりますが、映画のパンフレットによれば、列車内の3D背景は通常バージョンとアクション用に広めにしたバージョンを制作しているそうです(さらにもう一つ魘夢と融合したバージョンの計3種類あるようです)。

また、列車は一列に車両がつながった直線的な舞台なので左右にキャラクターを動かすのが難しい分、屋根の上のバトルでは上の飛び跳ねるアクションを多用しています。原作では炭治郎が一直線に突進していくシンプルな描写でしたが、空中でアクションを展開することで立体的なシーンにすることで迫力を作っています。

また、瞬間的なスピードと直線的な動きが魅力である善逸の「霹靂一閃」を、別の車両から飛び込んできて斬り伏せるという、直線的な舞台を逆に利用する形で、格好良く演出しています。このシーンは善逸の技のすさまじい速度を、この舞台だからできる演出で描いています。

そして、今回の劇場版の主役ともいえる煉獄のアクションシーンはどれも煌びやか。映画パンフレットの外崎監督に対談によれば、「炎の呼吸」の斬撃は、鳥羽伏見の戦いを描いた錦絵の炎を参考したそうです。
錦絵とは多色摺りの浮世絵木版画のことですが、それまで単色摺りだった浮世絵がこの錦絵の登場によってより華やかになりました。基本モノクロの漫画からカラーのアニメになったことで、そのような華やかな要素を加えることも可能になったわけです。



煉獄の戦いを見守ることしかできない観客と炭治郎たちがリンクする


『鬼滅の刃』は光に生きる人間たちと闇に生きる鬼たちの戦いと言えます。本作のクライマックスである煉獄の戦いは、そんな作品全体の構造を象徴するようなシーンでした。
ufotableは光の表現が上手いのですが、その上手さがクライマックスに活かされています。あの朝日が昇るシーン、外崎監督は「濃密な時間がゆるやかに流れていく過程を、美術スタッフが美しく描いてくれました(映画パンフレットより引用)」と語っています。

ここで外崎監督が言う、「濃密な時間がゆるやかに流れる」ところに、映画というメディアの力が最大限に発揮されています。漫画は自分の手でページをめくって読む時間をコントロールできますが、映画は全ての時間を作り手がコントロールします。
映画館の暗闇で朝日が昇るのを、観客は黙って見ることしかできない。きっと観客の多くは「朝日、早く昇ってくれ!」と祈るような気持ちになったでしょう。

この時の観客の状況は、やはり戦いを見守るしかなかった炭治郎と伊之助ともリンクしています。主人公たちと同じ状況を高度に再現できる映画館だからこそ、見守るしかなかった炭治郎の悔しさがより深く伝わってきます。

煉獄は「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ」と言います。この映画で描かれた煉獄の生きざまは、その言葉通りでなおさら切なくなります。
しかし、煉獄の雄姿は本当に朝日のように美しくて、最後に残した彼の笑顔と言葉は、太陽よりも輝いていました。映画館は真っ暗闇の中で作品を鑑賞します。映画館の暗闇だからこそ、煉獄の笑顔はより光り輝いて見えます。

だから、知っている話なのにもかかわらず、この物語を映画館で観るとこんなにも感動してしまうのです。
《杉本穂高》
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