SNSアニメ「モモウメ」誕生秘話! 共感の嵐を呼ぶ“あるあるネタ”はどう生まれる? スタッフが明かす【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

SNSアニメ「モモウメ」誕生秘話! 共感の嵐を呼ぶ“あるあるネタ”はどう生まれる? スタッフが明かす【インタビュー】

「職場あるある」をネタにしたショートアニメ『モモウメ』より、内田真之介プロデューサーと中道一将監督にインタビュー。キャラクター設定やネタづくり、さらにマーケティング会社ならではのSNS戦略とは――。

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『モモウメ』(C)モモウメ2019
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■時流を掴んだネタづくり


――キャラクターデザインや年齢差は「薬剤師篇」から受け継がれていますが、もう一つ個人的に大好きな『4C2』ネタも「薬剤師篇」から。あのネタが生まれたキッカケをぜひ教えてください!



中道監督:先ほど話に上がった『モモウメ』の立ち上げから一緒に作品づくりに携わってくれているデザイナーの子を喜ばせるためにつくりました。

内田P:2.5次元がめっちゃ好きなんですよ……。ネタの企画会議でその子が「2.5次元やりたいで~す」と言って。
薬剤師ということでワセリンをテーマに2.5次元のネタを考えてくれました。保湿を「4C2」で表現したときはさすがだな、と。

中道監督:閃きましたね~。ただ、その時はおもしろいと思ってつくりましたけど、私の予想以上に反響が大きくて(笑)。逆に聞きたいんですけどなんでここまでウケていると思います……?

――2.5次元とBLという、どちらも話題性の高い題材を組み合わせているのが注目されるのかなと…。あと、歌詞の面白さと歌謡曲的な曲調が絶妙です。

中道監督:なるほど。2.5次元もBLも全く分からないまま作っていましたね。

内田P:あれはイケると思いましたよ! 僕も監督もおっさんなので、最初は2.5次元のことをどれだけ議論しても分かりませんでしたけど。
女性メンバーに歌詞を見せて、意見を聞いて、反映して、どんどん良くしていきました。

中道監督:次は『ワセリンの王子様』が主役の話やりたいです……。

――4C2以外にも、『モモウメ』では1話ごとにさまざまな話題を取り上げていますが、テーマはどのように決まるんでしょうか?

内田P:制作チームと監督の定例会議でざっくりネタ探しや取り上げるネタの順番、スケジュールを決めて、監督にシナリオをお願いしています。
そして僕らがマーケティング会社の強みを活かし「OLの方はどんなことを考えて行動しているのか」をリサーチしてファクト集めをし、枠組みとインサイトを組み合わせて最終的なネタをつくっている感じです。

ただの「あるあるネタ」ではなく、『モモウメ』の世界観に合うかを監督の方で判断してもらっていますね。

――今年3月の時点ですでに「テレワーク」ネタを取り入れていましたよね。


内田P:ネット上ではトレンドの流れが速いので、WEB上でアニメを展開している以上、時流を取り入れていくのはマストだと思っています。
テレワークが増えている話を耳にした時、それをモモウメに取り入れようと監督と会話しました。

――時事やトレンドをなぜここまで早く配信できるのでしょうか。

中道監督:動画を制作するときは、A案だけではなくB案も考えているんです。時世がどう転んでも共感できるネタを仕込む状況をつくれるように、2本道で進んでいる。
具体的に落とし込んであるA案と、ざっくりとしたボケ・ツッコミのテンポだけが決まっているB案があって、時事ネタを取り入れたいときはB案と結びつけるようにしています。

――時流を掴むためにSNSからネタを仕入れることもありますか?

内田P:もちろんそれはしていますが、SNSは氷山の一角でしかないと思っています。だから、生の声はとても重要です。
直接ヒアリングをすることでわかるココロの本質がある。

見る人の気持ちに寄り添って、素直に代弁することが『モモウメ』の大事な部分だと思います。

――『マウンティングマウンテン』ネタもSNSきっかけですか?


内田P:そうですね。実際に身の回りでそういうことって起きているのかヒアリングをしてみると、海外のホテルのプールでサングラスをかけて撮影した写真や夜景の綺麗なレストランで恋人とフレンチディナーなどの写真がたくさん出てきて、現実離れしたSNSの世界に「これは何かあるぞ」と興味を持ちました。

実際にヒアリングをしてみると、Instagramに投稿するために、海外旅行に行ったり、テーマパークの新アトラクションは日本に上陸する前に海外で乗ったりする。というお話をお聞きして…僕おじさんだからそういうのに疎かったんですけど、すごい世の中だなぁと驚愕したのがきっかけです。I

でも、「Instagramに投稿する心理って、マウントの取り合いに近いんじゃないか?」と思ったんです。

試しに”マウントを取る”ってどんな気持ちなんだろうと、ファミレスでモモウメ制作チームの男ふたりでマウント合戦をしてみたんです。
実際マウントをとるってめちゃめちゃ大変なんですよ。男ふたりはすぐに限界がきました(笑)。

きっとこのマウント合戦に辟易している人も少なからずいるはずです。だからこそこの窮屈さすらも笑いに変えられたらなって。すぐさま監督にアイデアを話して…『マウンティングマウンテン』が生まれました。

中道監督:転機となった回でしたね。実はマウンティングマウンテンの前につくってお蔵入りした幻の0話があるんです。

内田P:いつかは出したいですね(笑)。

中道監督:今のテンポやフォーマットはこの動画で確立されました。

そもそも現代はなかなかじっくり動画を見る時流じゃなくなってきているんです。会社の若いメンバーと話してみるとテンポが速くないと見ないです」「ながら見できるくらいでいいんじゃないですか?」と言われて…ハッとしました。

中道監督:このやり取りがすごく重要だったんです。内田さんと僕だけじゃ考えつかなかった発想だと思います。
若い世代の人がアドバイスしてくれたから、今のモモウメテンポになってより多くの人に見られるようになりました。

■学生をターゲットにしたTikTokの縦動画が『モモウメ』の転機に


――『モモウメ』はYouTubeでの動画配信だけではなく、Twitter・Instagram・TikTokなどさまざまなSNSを活用しています。それぞれのSNSの役割、媒体によって合う動画のフォーマットなどはあるのでしょうか?

内田P:『モモウメ』は新しいジャンル“SNSアニメ”に挑戦しています。“SNSアニメ”という言葉も僕たちが生み出しましたが、それぞれのSNSの特徴に合わせて配信コンテンツを変えているアニメは他にないと思います。

YouTubeは『モモウメ』のメインとなるショートアニメを配信し、世界観を楽しんでもらう場所です。
Twitterはユーザーとのコミュニケーションを取る場所、Instagramはモモちゃん・ウメさん・その他キャラクターの画像や素材を見ることができる場所、いわばギャラリーとして活用しています。

TikTokは音楽とともに若い世代のみなさんにも楽しんでもらいたいという考えですね。
どのSNSでもモモウメの世界観に触れてもらえるようにすることが目的です。

――だからTikTokでは、学生ネタになっているんですね。

内田P:そうです。いろいろ調べてみたらTikTokが若い世代に支持されていることを知り、使ってみようと。TikTokは実写が主でアニメがさほどありませんでしたから、もしかしたら受け入れてもらえるんじゃないかと。

中道監督:TikTokを使い始めた最初もいろいろ模索していましたよね。変わったノリに挑戦してみたり、4コママンガを動画にしてみたり。
そんなとき、内田さんが「TikTokに合う学生ならではの雰囲気でやりましょう! 」と風呂敷を広げ始めて。

内田P:TikTokは中高生が多く見ているので、OLではなく学生のモモちゃんを登場させることにしました。一発目にタピオカのネタを持ってきたのも、流行をいち早くとらえたかったから。

@momo_and_ume

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恋のタピオカ - モモウメ


中道監督:あの動画は遊び心を爆発させましたね(笑)。歌をうたえるスタッフに歌ってもらって、動画もクリエイティブとしての粗さをかなり残したままでした。

内田P:かっかっかっかっと笑ってしまった。あまりに面白かったのでそのままアップロードしました(笑)。

中道監督:正直、本当にこのまま世に出しちゃっていいんですか!?と思いました。

内田P:でも、一気にたくさんの方に見られるようになりました。それまでは平均の再生回数が100回前後だったのですが、タピオカの動画はアップロードして間もなく100万回ほど再生されました。

中道監督:驚きでした…!

内田P:さらにタピオカのあとに出した『親友と好きな人が被りました』がもっと見てもらえるようになりましたね。

@momo_and_ume

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親友と同じ人を好きになりました - モモウメ


中道監督:1本目のタピオカはロジックが一切なくて、だからこそ面白く、多くの方に見てもらえた動画だと思います。
2本目に出した『タピオカ音頭』は70万ほどの再生回数で、1本目が当たり過ぎたこともあり少し不完全燃焼でした。

しかし1本目が大当たり、2本目はさほど再生回数が伸びなかった事で、3本目以降にどうつくればいいか道筋を考えることができました。
だからこそ『親友と好きな人が被りました』は再生回数が伸びたんだと思います。何事も試行錯誤が大切ですね…。

――TikTokでバズが起こったことで、YouTubeの視聴者層に変化はありましたか?

内田P:実は『モモウメ』はTikTokから知名度が上がっています。学生がおもしろいと思うと、兄弟や親御さんに話しブームが幅広い層へと広がっていく。学生がブームをつくると思っています。
TikTokを楽しみつつ、そのうちYouTubeチャンネルにも気づいてくれます。実際「娘・息子が教えてくれた」「妹から知った」というコメントが多いです。

当初モモウメは20から30代のはたらく女性をターゲットにしていましたが、結果的にTikTokがキッカケで視聴者層が広がりましたね。
今は40~60代の方たちや、男性の視聴者も増えています。「会社や社会はよく分からないけど、おもしろい!」とコメントをくれるお子さんもいらっしゃいますよ。

■いつもユーザーの近くにいる。『モモウメ』を国民的アニメへ


――『モモウメ』を通じて視聴者のみなさんに一番伝わってほしいことは何ですか?

内田P:働く人たちのマインドをポジティブにしたいと思っています。これは「薬剤師篇」からずっと続く精神です。
職場や働き方のネガティブな部分を代弁しつつも、それを笑いに変えていきたいです。

日曜の夜に「明日からまた仕事に行きたくない…月曜が憂鬱…」という想いをどれだけ減らすことができるか。
また金曜日に一週間にあった嫌なことを『モモウメ』を見てスッキリしてもらえるか。常に考えながら制作しています。

「モモウメを見るようになってから最近、自分の職場の上司も可愛く見える」とコメントを見て、僕たちのやっていることは間違いじゃなかったと確信に変わりました。
監督とふたりでニヤニヤしながらいつもコメントを見ています。

中道監督:『モモウメ』の関係を見て、誰と働くかで仕事の楽しさが変わることが伝わってほしいです。楽しい人と働いたら、どんな仕事も楽しいということが言いたい。
ひとりでは仕事は楽しめません。職場で感性の合う人をひとり見つけてほしい、そんな想いが届いてほしいです。

――最後に、『モモウメ』の今後の展望を教えてください。

内田P:もちろん『モモウメ』という今まで積み上げてきたスタイルはありますが、そのスタイルにとらわれ過ぎないようにこれからもチャレンジしていきたいですね。
結局は僕ら作り手が楽しく制作に向き合えていることが大事。僕らが楽しんで仕事する姿がアウトプットされて近い将来モモウメに現れてくると思います。

最終的な目標としては視聴者と近い距離でいられるアニメになりたい。視聴者の心のいつもそばにいるような国民的アニメになりたいんですよ。
今出しているLINEスタンプもこれからもっと種類を増やしていく予定ですし、いつかは近所のスーパーやコンビニエンスストアに『モモウメ』のスイーツがあるなんてこともやってみたい。
必ずどこかに『モモウメ』がいる、生活の一部になれるようにしていきたいです。

中道監督:ショートムービーが最近増えているので、今後どうなっていくのか楽しみです。
ただ今の社会に大きな変化があっても、モモウメはこれまで通りライトな感覚のショートムービーをつくりたいですね。内田さんは長いのもやりたいですか?(笑)

内田P:うん、やる。5時間くらいのアニメやりたい(笑)。

中道監督:それは…逆に長すぎる……(笑)。でも「誰もやっていない」という意味ではいいかも(笑)。やりましょう。

内田P:より多くの人に見てもらえるようになって今までとは比べ物にならないくらいコメントをいただくのですが、『モモウメ』を好きな人はみんな優しくて平和なコメントが多くて、いつも僕たちが癒されています。『モモウメ』で生まれたコミュニティから豊かな世界を僕たちが実現できたらいいなと思っています。
《阿部裕華》
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