日本アニメの海外展開、“交渉”でモヤモヤする5つのポイントとは?【レポート】 | アニメ!アニメ!

日本アニメの海外展開、“交渉”でモヤモヤする5つのポイントとは?【レポート】

都内アニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、2017 年度より実施されている「海外進出ステップアッププログラム」。全5回のうち第4回海外ビジネスセミナー「海外とのアニメーション作品における交渉のポイント」が10月1日に開催された。

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社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏
  • 社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏
  • 社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏
  • Volca株式会社代表取締役の加治佐興平氏
  • 特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)統括部長兼グローバル事業推進部長 森下美香氏
2018年アニメ産業は2兆円(2兆1,527億円)の市場規模に達成した。うち、およそ5割(9,948億円)を海外の市場が占めている。
動画配信サービスの普及が進んだことで、海外からの日本アニメ需要が増加したことが大きな理由の一つだろう。時差なく全世界に配信できることにより、日本のアニメコンテンツが広く海外に知れ渡らせることが可能になった。

そんな時代の変化の中、日本国内でも「クールジャパン」の名の下に、アニメーション・マンガ・ゲームを代表とする国産ポップカルチャーコンテンツの海外進出の動きが活発化している。
この取り組みの一つとして、東京都が都内のアニメーション関連事業者の海外進出を支援するため、2017年度より「海外進出ステップアッププログラム」を実施しているのだ。

本プログラムは、有名講師によるセミナーや実践的なワークショップを通じて、海外進出へのノウハウやスキルを学んでもらうことを目的としている。
さらに習得したスキルを競う「東京アニメピッチグランプリ」(2020年2月13日・14日開催予定)に出場して、最優秀賞・優秀賞を受賞すると、東京都から海外展開に向けたサポートを受けることができる。

10月1日には、全5回のうち第4回目となる海外ビジネスセミナー「海外とのアニメーション作品における交渉のポイント」をテーマに、3人の講師が登壇した。
今回の講師は、海外IPを取り扱ったビジネス経験から現在は自社IPを海外展開している株式会社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏と、MIFA2018(アヌシー国際アニメーション映画祭併設の国際見本市)の東京都ブースに出展及びピッチセッションに参加したVolca株式会社代表取締役の加治佐興平氏、日本のコンテンツを海外へ届ける市場開拓の活動をされている特定非営利活動法人映像産業振興機構(以下、VIPO)統括部長兼グローバル事業推進部長 森下美香氏。
海外交渉でつまずく点、そしてそれを乗り越えるための手段が語られた本セミナーのレポートをお届けする。

海外交渉でモヤモヤする5つのポイントと、ピッチに外せない4つのポイント


海外IPの権利運用、海外作品の映像版権買い付け・配給・展開、海外アニメ専門チャンネルの番組購入・編成・日本語版制作(ローカライズ制作)を経て、現在は株式会社ティー・ワイ・オー ドワーフにてコマ撮りアニメのプロデュース業の傍ら海外への配信交渉などを行っている岡田氏。

そんな岡田氏から、「海外交渉におけるモヤモヤポイント」について語られた。

社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏
ポイントは大きく5つ。「言語の壁」「商習慣の壁」「ゴール設定」「相手のニーズ」「テンポ」だ。当たり前のことだが、海外では英語での交渉がマストになってくる。しかし、英語で上手くコミュニケーションを取ろうと意識しすぎる必要はないという。「平易なワードを書面に落とし込む」ことが言語の壁を乗り越える対処法だそう。

また、違う国の人と交渉をするため、言語同様にビジネスの価値観も異なる。理解し合えないことでモヤモヤすることも大いにあるが、そこは割り切ってコミュニケーションを取ることが重要だと述べた。
「言語の壁」「商習慣の壁」と同じく、「相手のニーズ」「テンポ」「ゴール設定」も文化の違いや価値観の違いから認識のズレが生じる可能性もあり、モヤモヤするポイントなのだそう。

それぞれ共通した対処法は、「事前に交渉相手や海外の視聴者の求めるニーズを想定しておくことが重要」だと語られた。
さらに、交渉する側も、交渉相手へ求めるニーズを整理しておくことが必要だという。全てを交渉相手に譲るのではなく、自分たちの企画を交渉相手にどう扱ってほしいのか考えておくことが重要だ。

社ティー・ワイ・オー ドワーフ スタジオ プロデューサーの岡田由里子氏
モヤモヤポイント以外にも海外交渉の1段階目といえるピッチプレゼン。この「プレゼン時に外せないポイント」についても教えてくれた。

主なポイントは4つ。「テーマ」「視聴ターゲット(年齢)」「フォーマット」「ジャンル」だ。
ここで挙げられた4つは、日本アニメコンテンツ従事者があまり重要視しないポイントだと話した。ところが、海外交渉を行う際には非常に重要なポイントだという。

「テーマ」は、作り手が作品にどのようなメッセージを込めているか、その作品に込められた軸や思いが説明できると非常に強いそうだ。
さらに、「テーマの中に社会との関わりを持っているか、次世代に何を届けたいのかを明快にして、いかに幅広い層へ伝わるものに変換できるかが問われる」と話した。

「視聴ターゲット(年齢)」は、特にアメリカ、イギリス、フランスなど欧米がかなり気にするポイントだという。ターゲットによってメッセージの伝え方が変わってくるため、細かい年齢を設定することが必要となる。

「フォーマット」は、尺や本数を表す。年齢との関連性が強いものだ。
例えば、小さい子供だと長時間集中してアニメを視聴し続けることが困難である。ターゲットを設定する場合に、尺は重要な要素となるだろう。
そして、フォーマットを考える上で「一気見できるか、繰り返し視聴できるかが作品の魅力を左右する」と岡田氏は述べた。

最後に「ジャンル」だ。日本の作品はジャンルが曖昧になっている場合が多いという。コメディ、アクション、エデュケーションなどさまざまなジャンルがあるため、プレゼン時には説明できるようにすることがポイントだと語った。

MIFA出展は長期戦


続いて登壇した加治佐氏からは、「MIFA2018に出展して分かったこと」について語られた。
加治佐氏は、2017年に本セミナーを受講、2018年にピッチグランプリ受賞、MIFA2018へ参加を果たしている。約1年以上の時間をかけてMIFA参加のための準備を行った。

Volca株式会社代表取締役の加治佐興平氏
ピッチグランプリ参加前からMIFA参加までの気づきを大きく4つにまとめてくれた。

まずひとつ目に、本セミナーであるアニメーション海外進出ステップアッププログラムの重要性を強く述べた。セミナー内容を咀嚼してピッチ資料を練り上げることが受賞を狙うコツだという。

また、セミナーの後に開催される海外プレゼンスキル向上ワークショップは本気で取り組んだ方がいいと話した。「資料やプレゼンの弱点を洗い出せるいい機会なので、受賞できる確率が上がる」とのこと。

ふたつ目に、ピッチグランプリ時には映像資料が役立つと伝えた。実質3分ほどといわれる短い時間の中で企画の魅力を伝えなければならない。
映像資料は必須でないものの、ピッチ時の配布資料を分かりやすく整理するとともに、中身を補うツールとして強い武器になるという。「完成版の映像でなくてもいいです、ピッチ時に魅力を伝えやすくするため用意しておくことがオススメ」と語る。

3つ目は、MIFAへの参加はプライスレスな経験であるということ。出展やMIFAでのピッチセッションの準備、さらにMIFA終了後も海外交渉は続くためかなり長期戦となる。
しかし、MIFAでしか得られることのできない体験や人脈があるため、「大変だけど後悔はしていない」と語ってくれた。

そして、最後の4つ目は、前述でも少し触れたが「長期戦であることを心掛けてほしい」と話した。
2~3年かけて進めるという意気込みで進めた方がいいという。ピッチグランプリへの準備のみならず、受賞後はMIFAの準備、MIFA出展、海外交渉など、やらなければならないことが山積みだ。会社員の場合、仕事と並行して準備を進める可能性もある。

また、MIFAへ行く場合は、約1週間国内不在になる。仕事との折り合いをつけること、周囲からの理解を得て味方につけることで、長期的に戦える体制を作ることが重要だと強調した。

目的・用途に合った支援ツールを有効活用して海外交渉の不安を取り除く


最後の登壇者である森下氏からは「アニメーションの海外展開に役立つ支援ツール」が語られた。森下氏が所属するVIPOは日本のコンテンツを支える人材の育成と、海外への市場開拓からコンテンツ業界をサポートする活動を行っている。

特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)統括部長兼グローバル事業推進部長 森下美香氏
まず、アニメーションの海外展開に必要な要素は「作品を理解する」「ゴール設定」「ピッチの実力をつける」「売り込む」「KEEP IN TOUCH」「支援を有効に活用する」の6つだと述べた。
本セッションでは、主に6つ目「支援を有効に活用する」の部分が語られている。

さまざまな支援を多くの団体が行っているため、「目的・用途に応じてその支援を有効活用しましょう」と強調。
同時に、目的・用途別にいくつかの支援ツールを紹介した。紹介されたツールのうち、海外交渉に有効的なツールをピックアップして挙げる。

企画したアニメを海外展開向けにパイロット映像を制作するための支援ツールとして、経済産業省の「クリエイターを中心としたグローバルコンテンツエコシステム創出事業費補助金」が活用できる。
中でも、試作コンテンツ開発支援事業はパイロット版映像製作において役立つツールだろう。

また、海外交渉する上で特に重要とされるピッチ。このピッチのトレーニングを受けられる、経済産業省の「コンテンツ産業新展開強化事業」がある。
アニメーション海外展開サポート・ピッチトレーニングプログラムや、プログラム受講者による英語ピッチセッションが開催される。英語でのピッチに自信がない人にとってはありがたいツールだろう。

さらに、森下氏が所属するVIPOでもさまざまな支援ツールを実施している。パイロット映像制作事業の支援や、海外見本市で役立つピッチトレーニングプログラムなど、海外交渉を考えるアニメコンテンツ従事者にとってありがたいツールといえるだろう。
他にも海外展開する上で重要なツールを多く展開しているVIPOだ。「皆様の海外展開が成功しますように」という言葉で本セミナーを総括した。

今後のセミナー予定


実践的な事例から海外進出のノウハウを学べる「海外進出ステップアッププログラム」。残り1回のセミナーは、10月25日に開催。また、「海外プレゼンスキル向上ワークショップ」は11月8日と11月16日に開催される。

「東京アニメピッチグランプリ」は今回から映像のない企画段階の作品についても応募可能となり、申し込みやすくなっている。
応募には、「セミナーとワークショップへの各1回以上の参加」が必須となっているので、興味を持たれた方は公式サイトより申し込んでみてほしい。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《阿部裕華》
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