「そばへ」牛尾憲輔に学ぶ、アニメの劇伴制作テクニック――“雨”をいかに音楽で表現したのか?【インタビュー】 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「そばへ」牛尾憲輔に学ぶ、アニメの劇伴制作テクニック――“雨”をいかに音楽で表現したのか?【インタビュー】

オレンジが制作したオリジナルショートアニメーション『そばへ』。今回は石井監督と音楽を担当した牛尾憲輔さんにインタビュー。

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■液体の動きのリアリティは、見る人の親近感に繋がる


――牛尾さんは『DEVILMAN crybaby』や『リズと青い鳥』など、ちょっと緊張感が漂うような作品のイメージが強かったので、やすらぎや癒しを感じる本作のような音楽は新鮮に思いました。

牛尾:そうですか?(笑)音選びの趣味が僕はメジャー=長調なほうではないので、たしかに緊張感のある音楽が得意なのかもしれませんね。
そのせいか「ちょっと怖すぎます」とリテイクを出されることもあるんです。

今回は、さっき話したように色味の暖かさや、コンセプトもしっかりしていたのでブレることはなかったですね。
また、福原さんの声など有機的な部分が出たので、いつもとちょっと違う音作りになったかもしれないです。

――湯浅正明監督の『きみと、波にのれたら』や、新海誠監督の『天気の子』など、ちょうど最近、水を描写する作品が続いている印象があります。石井監督は、アニメーションで水を描く面白さはどんなところにあるとお考えですか?

石井:液体の描写がリアルだと、キャラクターをより身近に感じられると思うんです。いかにも二次元的な作風であっても、プールや温泉はリアリティがあったほうが面白いし、そこを追求するのはやりがいがあります。

けれど不定形な自然物である水は、アニメーションで描くのがシンプルにとても難しい。特に作画だと塗れる色数も決まっているので、いかに情報を省略しつつ水らしく見せるかは本当に難解です。
それが、近年はCGを用いることで、作画的な制限の悩みはクリアになりました。本作も、水の挙動やゆがみがものすごく水っぽく、実在感のある感じでできたのは良かったです。


――作品を比較すると、それぞれの監督によって水の粘度が全然違うのが面白いなと。本作の場合、最初はシトシトと降る雨から、徐々に粘度を上げているのかなと感じたのですが。

石井:冒頭は効果音やキャラクターの声も入った、よく見る普通のアニメなので、イメージしやすい普通の雨が降っています。
それが、後半のほうが印象的に、あたかも時間がスローに感じられるように、よりデフォルメされた雨に近づいてるかと。そういう意味で粘度が高いと思われたんでしょうね。

――制作を経て、石井監督は牛尾さんから引き出してみたい、もっとこんな曲も聞いてみたいといった思いは湧きましたか?

石井:そうですね、今回はこういった雰囲気の作品でしたけど、ギャグやロボット、あるいは美少女だったらどうなるのかな、と。あまり今までの作品にとらわれずお願いしてみたいです。

牛尾:作品の内容は何をやっても面白いですが、僕は単純に発注を受けて納品するというだけの仕事は、あんまり楽しくないと思うので。放課後、家に仲間が集まってくるみたいに、ゼロから一緒に作っていけるのが一番良いなと思いますね。

『そばへ』インタビュー 石井俊匡×牛尾憲輔
――それでは最後に読者に向けてのメッセージと、音楽面での『そばへ』の見どころを教えてください。

牛尾:コンセプトがふわふわしたところから作品が無事に着地するまで、首尾一貫したものが出来上がってすごく満足しています。
あとは石井さんのこだわり、たとえば坂を上ったりジャンプしたりする妖精さんに印象的な音を合わせるとか、最後のマルイのロゴが出るカットでも音がバッチリ合っていますので、そういうところにも着目して引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。

石井:作品は2分半ほどですが、音楽自体は2分もないくらいの尺です。普段のアニメの劇伴だと、何曲もある中でそれぞれに牛尾さんの一面が感じられますが、対して本作は牛尾さんの全面を2分で聞けるという面白さがあります。
なので、「ここが」というポイントではなく、全編を何度も見て、聞いていただきたいですね。
《奥村ひとみ》
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