東映アニメーション「100年アニメプロジェクト」発表 代表取締役社長・高木勝裕が語る“過去と現在の変化”とは? | アニメ!アニメ!

東映アニメーション「100年アニメプロジェクト」発表 代表取締役社長・高木勝裕が語る“過去と現在の変化”とは?

2019年6月6日、東映アニメーション株式会社は創立60年の歴史で初となる、アニメ企画の一般公募企画「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」を発表。これに伴い代表取締役社長・高木勝裕が同プロジェクトに対する思いや、変化し続ける業界のあり方についてを語った。

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2019年6月6日、東映アニメーション株式会社は創立60年の歴史で初となる、アニメ企画の一般公募企画「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」を発表。
これに伴い、東映アニメーション代表取締役社長・高木勝裕が同プロジェクトに対する思いや、変化し続ける業界のあり方についてを語っている。

新たに発表された「東映アニメーション 100年アニメプロジェクト」は、『ワンピース』『ゲゲゲの鬼太郎』『ドラゴンボール』など、時代を代表する作品を数多く生み出してきた東映アニメーションが、新しい発想を持つクリエイターと100年続くアニメ企画を発掘するため、年齢、性別、経歴などを問わず、オリジナルアニメ企画を一般募集するプロジェクト。

この発表にあわせ、高木社長にインタビューを実施。本プロジェクトへの思い、そして『ドラゴンボール』『Dr.スランプ アラレちゃん』『美少女戦士セーラームーン』といった人気作品の裏側や、昭和・平成そして令和と、変化し続ける業界のあり方について語った。

<以下、コメント全文掲載>


東映アニメーション代表取締役社長:高木勝裕
【東映アニメーション代表取締役社長:高木勝裕】

――本プロジェクトを実施することになったきっかけをお教えください。

アマチュアからの募集も含め、今回のように広くアニメ企画を公募するのは東映アニメーションにとって初の試みです。いま社内でも多くの企画が出ていますが、それ以外にも、これまで弊社になかったような新しい視点の企画が生まれることを期待して、外の人の力を借りていこうと考えました。

具体的には「どこかで見たことがあるな」「何かに似ているな」と感じさせない作品です。うまい、下手ではありません。こんな発想があったのか、と驚きを感じさせる内容をお待ちしています。映像の技術は日々進化しています。だからこそストーリーの大事さが浮き彫りになってくるのです。

――プロジェクトのテーマ「100年アニメ」に込められた思いはどのようなものですか?

弊社の代表的アニメである「ドラゴンボール」シリーズが34年、「ワンピース」が20年、「プリキュア」シリーズが16年続き、いまもこれらの作品がヒットの前線にいます。時代背景によって設定などを変えていく必要があると思いますが、良い作品であれば長く続いていくはずです。

テーマ「100年アニメ」には、細かい変化はあっても100年継続するタイトルを進めていきたいという思いが込められています。

――高木社長が考える「長く続くアニメの定義」とはどのようなものでしょうか?

それは私も知りたいところですが。ひとつ言えることは時代にあった作品を作り続けること。同じタイトルの作品でも、その時々の価値観や時代背景を考慮して柔軟に対応していくことが大事だと思います。

――今、アニメ業界はどのような状況にあるとお考えですか?

本音を言えば、世に出ていく作品数に対してヒット数が少ないと感じています。制作にお金のかかるアニメ作品からどうやって利益を出していくか。それには作品の二次利用を成功させるかどうかが鍵になります。

厳しく言うなら、制作側が満足のいく作品ができたとしても、世間の目に触れる機会がなければ自己満足で終わってしまう。確かに技術の進歩によって、個人でもアニメ制作ができる時代にはなりました。しかし、多くの人を巻き込むことで作品はできあがっていくものだと考えています。

ですからアイデアをお持ちの方には、本プロジェクトをぜひ、活用してほしい。私たちには作品を成功させるための、長年培ってきたノウハウがあります。海外進出も視野に入れ、しっかりとバックアップしていきたいですね。

――受賞作品は海外展開もありうると?

そうですね。東映アニメーションは日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、アジアにそれぞれ拠点を持っています。昨年末に公開した「映画 ドラゴンボール超 ブロリー」は、日本はもちろん、それ以上に海外で大きなヒットとなりました。受賞作品は世界規模での展開を考えていきたいですね。

――現在どのようなアニメが多くの人々に愛されるのでしょうか?

大ヒットにつながる作品に共通するのは、どのような層にも受け入れられる内容です。アニメに興味のない人たちでも「ちょっと見てみようかな」と思わせる、間口の広い作品が求められています。

私が東映アニメーションに入社したころは「アニメは子どものもの」というのが常識でした。それが時代とともに視聴者層が広がっていきます。性別ごとにターゲットを分けた「男女別作品」も、いまでは少なくなりました。アニメの社会的地位は大きく変わりましたね。昔と比べ、劇場公開作品が増えたことにもあらわれていると思います。

――具体的にはどのような変化を体感してきましたか?

私が入社して間もないころに、鳥山明先生原作のアニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」がヒットしました。それ以前は、ヒロインは金髪で目がぱっちり、きれいな服を着ているのが“お決まり”でした。

ところが本作の主人公・則巻アラレは紫色の髪にメガネ、カジュアルな帽子をかぶっている頭身が低い女の子。当時の常識から外れた見た目でしたが、いざ放送してみると作品がヒットし「これが当たるのか」と驚きを隠せませんでした。

「週刊少年ジャンプ」に連載していたこともあり、男性向け作品として舵を取りましたが、放送が始まると女の子からも多くの支持を受けました。“常識”に当てはめて動いてみたら、意外な結果が待っていた(笑)。

――まさに、アニメの常識が大きく変化した瞬間ですね。

それから10年ほど経ち、次はアニメ「美少女戦士セーラームーン」が女の子の間でブームになりました。“女の子たちの戦隊もの”も当時としては衝撃的でした。「時代の当たり前」を変える力を持つ作品。その目新しさが多くの人の目を引くのかもしれません。

――新元号・令和を迎え、新たな価値観の作品が生まれる日はやってくるでしょうか?

遠い話ではないと思います。固定概念にとらわれず新たな想像力で企画を生み出してほしいですね。むしろこれまでアニメ業界に関わってきていない人のほうが、損得や過去の成功例を気にせず自由に発想できるのでは。どんな斬新な企画が寄せられるのか、いまからとても楽しみです。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
《MoA》
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