■ど直球なラノベ要素を持つ2作
――『ダンまち』はファンタジー、『デート』はSFテイストな作品ということで、2つの作品を共存させる難しさも今回のクロスオーバーではあったのではないでしょうか?
大森
おっしゃる通り、ファンタジーではない作品とクロスオーバーをするのは手探りなところもあって、まだ構想が固まりきっていない時点では、どうしましょうか……とWFSさんと話し合う場面もあったんです。
でも、原作を読み切った瞬間、「絶対面白くなるからお願いします!」と全力でお願いしました。
というのも、『デート』の士道も『ダンまち』のベルも、ヒロインを助ける王道主人公のDNAが受け継がれているから、このふたりメインの話は絶対熱くなるという確信が持てたんです。
――大森先生の『デート』に対する第一印象はどのようなものだったのでしょうか?
大森
デビュー前、『ダンまち』をGA文庫大賞さんに送るうえで既存の作品を研究していて、そのときに『デート』に出会ったんです。
自分はラノベって訳ありのヒロインを助ける話が直球だと考えている節があるんですが、『デート』1巻を読んだときはまさに「どストレートな作品見つけた!」という感じでした。ここまでヒロインのために主人公が頑張ってるのは初めて見たなと。
ただ、一度3巻で読むのが止まってしまっていたんです。
――それはなぜですか?
大森
というのも、4巻のメインヒロインが五河琴里ちゃんなんですけれど、自分は妹プラスツンデレという王道の属性が苦手みたいで、この子がメインだからしばらく置いておこうかな……みたいな(笑)。
★4[イフリート]五河 琴里
橘
妹×ツンデレがダメ!?(笑)。あー……でも確かに『ダンまち』はみんな素直というか、好意をストレートに伝えてくるキャラが多いかもしれませんね。男キャラにはちらほらいますけど、ツンデレ。
大森
そして年上キャラでしかヒロイン打線組まれてないんです(笑)。原作後半でようやく年下ヒロインが一名出てくるありさまで……。あからさまなツンデレも恐らくいなかったと思います。でも男キャラのツンデレは許せるのかも……!(笑)
とにかく、そんな感じだったんですが、今回のコラボを進めるに当たって『デート』を改めて読んだら止まらなくなりました。
大森先生がコラボのために読み込んだ『デート・ア・ライブ』原作小説。付箋がビッシリ!
橘
僕は作家としては恥ずかしながら、『ダンまち』の入りが実はマンガ版だったんですよ。
そこから小説を読んでみて、やっぱり原作も読まなきゃダメだなと。マンガのクオリティも抜群なんですけど、原作を読んでわかることも多いので。
――いざ原作に触れてみたところ、新たな発見が多かったのですね。
橘
そうですね。改めて読ませていただくと、本当に面白かったです。
キャラクター、展開、全てが渾身で全てが真っ直ぐだなと思って。これ、当たり前かと思われるかもしれませんが意外とできないことなんです。決めるべきところで一歩外したくなったりするのはよくあることなので。
力いっぱい殴りつけるのは得がたい才能なので、いつまでも忘れないでいてほしいですね。
大森
ありがとうございます……!
――作家として感銘を受けたのは、具体的にどういった部分でしょうか?
橘
個人的に好きだったのが6巻ですね。戦争遊戯(ウォーゲーム)自体も良かったんですけれど、そこに至るまでに仲間がひとりずつ加入していくところが好きで。
大森
編集さんもそこは言っていました。「戦いはおまけ」だと(笑)。
橘
6巻は好きなシーンが多くて。ソーマ様もちょっと好きになりました。あとはもっと前の巻になりますが、神様たちが集まって二つ名決めるところも好きです(笑)。
大森
絶†影とかバーニング・ファイティング・ファイターとかですね(笑)。
橘
あとはミアハ様と飲んでるヘスティア様のシーンですね。あのシーンで、惜しみない愛を主人公に注いでくれるヒロインはやっぱりいいなと。
大森
その初心は大切にしたいなといつも思っています(笑)。
そうだ、ひとつ聞きたかったんですが、『デート』はキャラが多いじゃないですか。それぞれの出番の配分は、どう考えられているんですか?
橘
キャラ数でいったら『ダンまち』のほうが多いじゃないですか(笑)。
大森
自分の作品はゲームを意識した設定もあって、メインキャラが固定で、サブは助っ人として割り切ってる部分もあるんです。あとは『人』ではなく『場所』で捉えているというか、ギルドにはあの人が、酒場にはあの子が、のような。
でも、『デート』はヒロインの精霊が集まって、それぞれがメインヒロインの風格と可愛さがあるので、すごいなと。
橘
そうですね、その巻のメインキャラはいるけど、できるだけみんなにも出番を与えないと、っていうのは意識してます。
大森
新しいヒロインとのデートも描きつつ、既存のヒロインもしっかり活躍している展開とか、よくこれだけのキャラを処理できるなといつも思っています。
橘
ギアを上げながら坂道を登っていく自転車みたいなイメージです。どんどんペダルが重くなっていく(笑)。
だから後半に行くにつれてひとり2冊という構成が増えてきたんですよね。1冊目で既存キャラの活躍を描いて、2冊目で新ヒロインの活躍を見せる、という構造になってきて。
……あ、二亜は1冊でしたね。まあなんとかなったのでいいか(笑)。
でも、今になって改めて思うのですが、二亜みたいなキャラクターは後半じゃないと出せなかったですね。序盤はある程度万人受けを狙ったキャラクターを意識的に書いていましたが、後半になるに従って、わりと個性的な要素を足せるようになった気がします。
大森
変化球というか、斜め上に突き抜けて立っているキャラが増えてきましたよね。
橘
シリーズが軌道に乗ったから出せたという側面もありますが、前半から登場しているキャラにはそれまでの蓄積があるので、後半登場キャラはある程度濃口じゃないと太刀打ちできないというのもありますね。
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