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数多くの異世界転生作品を世に送り出した小説投稿サイト「小説家になろう」で、連載終了後も長期にわたって同サイト累計ランキング1位を維持した人気作のアニメ化とあり(執筆時点ではアニメ放送中の『転生したらスライムだった件』が1位)、Twitter上では、ファンから「ようやく!」「やっと!」といった待望のコメントが多く見られました。

以前アニメ!アニメ!で実施した「アニメ化してほしいライトノベル・小説は?」アンケートにおいても2位にランクインするほど、期待値の高い作品です。
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『無職転生-異世界行ったら本気だす-』は、なぜこれほど多くの人の支持を集めるのか……本稿では、その魅力に迫ります。
■成長する主人公が最大の魅力
主人公は引きこもり無職34歳男性。
彼は両親の葬式にも参加しなかったことから、兄弟に見限られて家を追い出されてしまいます。そして道を彷徨っていたところ、トラックに轢かれそうな高校生3人を助けようとして、代わりに命を落としてしまうことに……。
しかし、目を覚ました時、彼は剣と魔法の異世界で赤ん坊・ルーデウスに転生していました。
ルーデウスは、「今度こそは悲しい人生の末路を迎えまい」と、異世界で本気で努力して生きることを決意。前世での反省を糧に、剣術と魔法を学び、常にへりくだって周りの人を思いやることを忘れません。
幼少時の魔力トレーニングと後に明らかとなる“ラプラス因子”によって魔力総量が桁外れに多く、さらには独自の閃きから無詠唱で魔法を使えるようになり、まだ年端もいかない子供のうちから頭角を現していきます。
しかし、異世界転生作品特有の「俺TUEEE」で終わらないのが醍醐味です。この世界には七大列強や魔王を始めとしたそう簡単に太刀打ちできない強者が多くおり、ルーデウス自身も前世でのトラウマや欠点を克服したわけではありません。周りの人と触れあうことで精神的に成長を遂げていくその姿に、頼もしさとヒーローモデルのようなカッコ良さを感じるのです。
■これは紡がれる家族の物語
同作はタイトルからは想像がつかないほどに、家族の大切、絆の深さを描いています。オタクで、スケベで、お茶目なルーデウスは赤ん坊から少年、青年へと成長していきます。この世界の父・パウロや母・ゼニス、妹達との家族の交わりを通し、やがて自身も恋をして結婚をして、家族を守ることを強く意識するように。
作中にはルーデウスを始め、様々な種族や国、立場が違う人々が登場しますが、多くは悩み苦しみ、問題を抱えています。それらは戦って強ければ解決できるほど単純ではなく、ルーデウスはトライアンドエラーを繰り返しながら解決して行きます。そこから輪が広がる世界はあたたかく感じられるのですが、裏には邪な意志が蠢いているのです。成長したルーデウスはやがて、その存在を認識し、立ち向かっていくことになります。
同作はルーデウスの物語ですが、さらに広い視野で見れば、世界や歴史においてルーデウスは自身の役割を全力で全うするだけです。父から自分、そして、自分から我が子へと紡いでいきます。魅力的なキャラクター、緻密な設定、張り巡らされた伏線など、世界観に引き込まれた先には、多くの人の共感を呼んだ家族の物語があるのです。