アニメの貴重な文化財「セル画」は消えてしまうのか? 専門店取締役が語る、セル画の現状と今後 3ページ目 | アニメ!アニメ!

アニメの貴重な文化財「セル画」は消えてしまうのか? 専門店取締役が語る、セル画の現状と今後

かつてアニメ制作をするうえで欠かせない素材であり、ファングッズとしても愛されてきた「セル画」。セル画販売の老舗「アニメワールドスター」取締役を務める平喜裕氏にインタビューを行い、セル画の魅力と国内外のファンの動向、セル画という技術継承まで話を伺った。

インタビュー
アニメの貴重な文化財「セル画」は消えてしまうのか? 専門店取締役が語る、セル画の現状と今後
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アニメ制作のデジタル化で、セル画は消えていくが…


――セル画専門店としてのアニメワールドスターの特徴はどういったところにあるのですか?


ものすごく根源的なところで言えば、お金を払ってセル画を買えるシステムですので、トレードに伴う交渉力や資産、知識といったスキルがないカジュアルなアニメファンにもセル画を入手していただけます。また、店舗ではセル画を手にとって楽しんでいただけるような工夫もされています。
また、弊社では基本的に特定のスタジオや作品と契約を結び、許諾を得られたものを中心に販売をしています。

――確かに、それなら「盗品かも」「偽物かも」という後ろ暗さがなくセル画を買えますね。


セル画をいただく際に制作スタジオさんに代金をお支払いしているので、弊社でセル画を買うことで、アニメスタジオやセル画を描いたアニメーターのみなさんにも、少しは金銭的なバックをすることができるようになっています。

――それは素晴らしいですね! こういったお店はいつから始められたんですか?


1994年に創業し、1996年に中野ブロードウェイに移転してきました。この頃、ディズニーはデジタルに移行していたので日本もいつかデジタル化していくだろうと考えていました。個人的には20年位はこのままだろう、と思って開業したのを覚えています。
ですが、実際には日本も90年台中頃から東映アニメーションさんの作品を皮切りに急速にデジタル化が進み、セル画の時代の終わりが、予想より5年か8年は早まってしまいました。

『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』のセル画

――デジタルに移行してしまうとセル画は不要になってしまいますが、そういう作品では何を売っていたのですか?


「リレイズセル画」と呼ばれるセル画を作りました。というのも、一点物のセル画がほしいというアニメファンのニーズは、アニメがデジタル化してもあったんですね。
デジタル用の動画や原画からトレスマシンでセルへの転写を行い着彩をし、「実際には使わないので作らないんだけど、あえて作ったセル画」としてリレイズセル画を販売しました。

『地球へ…』などの作品では店の前に行列ができるぐらい好評を博し、原作からの往年のファンだけでなく、アニメで入った若いファンの方にもセル画を買っていただきました。
今は海外のアニメファンも多いですから、英語圏や中国、アラブ圏の言語対応と決済対応ができれば、海外での可能性はかなり高いと感じます。

――リレイズセル画というのは、やはり特定の人気のシーンをたくさんコピーするのですか?


いいえ、同じシーンのコピーはディズニーなどで販売していた「リミテッドセル画」と呼ばれるものですね。
リレイズセル画は実際のセル画と同じく、同カットでも通しナンバーが違うため、全く同じ絵はありません。

――セル画は一品物だからこそ、というファンのニーズを受けたものですね。


はい。ただこれも厳しい面があって、2000年以降アニメが1クール化していき放送期間が短くなってくると、放送終了後に改めて作り出すリレイズセル画が出た頃には、もう他の作品に需要が移ってしまっていたりするんですね。

また、作り手側の問題もあります。日本で最後にセル画で制作されたのは、『サザエさん』を除けば2003年版『ASTRO BOY 鉄腕アトム』で、その『サザエさん』も2013年にデジタルに移行しました。
すると、セル画職人はもうメインの仕事が無いので別の道を探すようになり、リレイズセル画の制作をなかなか請けてくれなくなるんですね。

――セルの仕事がなくなると、原材料としてのセルも流通が減り、入手困難になってしまいますよね。


セル自体は富士フィルムから買えばいいのでまだいいんですが、問題なのは塗料の方です。セル画の塗料は専門の技師が調合したもので、その出来によって作品の色味への影響が出てしまうくらい重要なものです。
現在、その専門家の方がかなり少なくなってしまっており、現存する塗料も使用期限があるため、これを過ぎるとセル画を塗る色が使えなくなってしまいます。

実際、私が今回実店舗を閉じてWeb販売のみにしようと決めた理由の1つがそれです。
一緒にリレイズセル画を作っていた業者さんが、塗料切れのため続けられなくなったんです。
示し合わせたわけではないのですが「それならお互い仕方ないね」となったわけです。

『きんぎょ注意報!』のセル画


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《いしじまえいわ》
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