「最初は断るつもりだった」神風動画の初となる長編映画「ニンジャバットマン」での挑戦とは…水崎監督インタビュー 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「最初は断るつもりだった」神風動画の初となる長編映画「ニンジャバットマン」での挑戦とは…水崎監督インタビュー

6月15日(金)に公開を迎えたアニメーション映画『ニンジャバットマン』より、監督を務めた水崎淳平氏にインタビュー。本作の見どころとなる豪華クリエイター陣についてはもちろん、日本のアニメ業界で本作を作った意義やアニメーターの労働環境問題などうかがった。

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  • Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics. (C)Warner Bros. Japan LLC
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■神風動画が実現する「アニメ業界とクリエイター個人への貢献」とは?



――話の視点が少し変わるのですが、神風動画さんに聞いてみたい質問がありました。神風動画さんの作品を見返してみると、尖った作風でありながらいわゆるエログロ表現がほとんど見られないことに気が付きました。これは意図してのことなのでしょうか?

水崎
はい、それは意図しています。要は作品を手掛けたスタッフが、奥さんや子供や親に「最近これ作ったんだ」と胸を張って見せられるか? 自分から「見てほしい」と思えるか? ということです。
それを考えた時、過激な表現や過度に残酷な描写は僕にとっては不要なんです。
特にアニメ業界は今、労働環境などの面で問題視されることが多いですから、スタッフひとりひとりのことを考えた時に、彼らが家族や友達に後押しされ応援されてアニメを作っているという環境を作ることが非常に大事だと思うんです。

――神風動画さんは設立から15年が経過していますが、その姿勢と作風は創業時から変わっていないですね。

水崎
変わってませんね。この仕事をやることで親孝行、家族孝行できるか? ということです。

――アニメーターの労働環境といえば、神風動画さんは『ジョジョの奇妙な冒険』のオープニングの頃辺りまでは、10時出社19時退社、定時には「蛍の光」が流れ、徹夜厳禁で毎日必ず戸締りをして帰るという業界きってのホワイトスタイルでしたが、それは今も変わらずでしょうか?

水崎
『ニンジャバットマン』は初の長編映画でしたし、正直なところこの時期だけは諦めかかっていました。
制作が終わった今はその分のホワイトさを取り戻すため定時出社退社に戻しましたし、給料と採用時の初任給は『ニンジャバットマン』制作開始前よりも上げ、むしろ制作に入る前よりホワイトにしました。今は前以上に誇れる状態になったと思います。
あと『ニンジャバットマン』の制作に入る前に、制作期間の2年くらいは厳しい体制になる旨は全スタッフに説明し、それでもいいというスタッフにだけ参加してもらいました。

――社内で厳しい仕事になるであろう『ニンジャバットマン』チームとその他のチームを分けたんですね。

水崎
当然、定時に帰ってプライベートを大事にできるから神風動画がいい、というスタッフもいますからね。

――アニメ業界の改善について考えるとき、まずはスタッフひとりひとりにとってどうか? という視点から入られるんですね。そこが非常に印象的です。

水崎淳平氏

■『ニンジャバットマン』は後世に残す石造りの金字塔(ピラミッド)



水崎
『ニンジャバットマン』の制作に入る時、スタッフにこんな話をしました。
クフ王のピラミッドは作られてから5000年近く経過した今も綺麗に残っていますが、諸説ありますが、石を切り出して運んであの規模のものを作るのは相当大変だったようで、人的な犠牲もかなり出たそうなんです。
でも苦労して後世に残るものを作ったおかげでピラミッドもクフ王という名前も今に残っています。

一方、後年作られたピラミッドは石ではなくレンガで作るようになり、その分制作は楽になったのですが、風化しやすく今はもう綺麗な形では残っていません。
『ニンジャバットマン』も、レンガで作れば短期的にはみんな楽です。でも数年もすれば風化して忘れ去られてしまうし、それでは作る意味がない。
僕は過酷だけど『ニンジャバットマン』を石でできたクフ王のピラミッドにしたかったんです。世界中で名前が残り語り継がれる作品にすれば、日本のアニメ業界全体の力を世界に向けて見せつけることになりますし、参加した人ひとりひとりにとっても大きな実績と誇りになりますから。
だから妥協せず可能な限りのクリエイターを集めましたし、この話をして賛同してくれた人にだけスタッフに入ってもらいました。

本当に過酷だったので制作終了後に辞めてしまったスタッフもいますが、離れた後も「あの作品、俺が関わってるんだぜ」と誇れる作品にできたと思います。

――手掛けたスタッフにとっても日本のアニメ業界にとっても、後世に残る石造りの金字塔(ピラミッド)的作品、それが『ニンジャバットマン』なんですね。最後に、神風動画さんの次のステップについても伺いたいと思います。『ポプテピピック』と『ニンジャバットマン』とで長編もTVシリーズもできることを証明してしまいましたから、オファーが増えているのでは?

水崎
ありがたいことに長編含めてオファーは今かなり多くいただいています。ですが今回やり切ったので、正直しばらくは『ニンジャバットマン』以上のものはできる気がしませんし、何か電流が走るようなものがない限りは、長編はしばらくいいかなと思っています。
一方、アニメや実写映画の原作になるようなオリジナルの物語を作ることに関しては実現できる手ごたえがあり、着手しているところです。
またアプリ『タテヨコ』を通じて配信インフラの整備もしていますから、次に世を騒がせるとしたらこのふたつかもしれません。

――それが世に出るのが楽しみです。でもまずは日本が誇る石造りのピラミッド『ニンジャバットマン』ですね。本日はありがとうございました。


【2018年5月 渋谷区・神風動画本社にて】

Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics. (C)Warner Bros. Japan LLC
《いしじまえいわ》
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