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「製作委員会方式に並ぶ選択肢がもっとあっていい」ヤオヨロズ福原Pが展望するアニメビジネスの未来像

『けものフレンズ』『ラブ米』を手掛けたアニメ制作スタジオ・ヤオヨロズの福原慶匡プロデューサーにインタビューを敢行。なぜアニメプロデューサーという仕事に注目するのか? その必要性とは? 昨今話題となっている製作委員会方式の是非や

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■製作委員会方式に並ぶ選択肢がもっとあっていい

福原P
製作委員会方式の難しいところの一つは、クリエイティブサイドとビジネスサイドの利害が対立しやすい構造になっている点です。製作委員会側が制作会社にアニメ作りを発注するわけですが、レストランにたとえるならキッチンとホールが別会社になっているようなもので、難しくて当たり前です。
昨年、ロサンゼルスや中国に行っていろんな人と話してきましたが、製作委員会制度は日本しかなく、他の国では基本ワンオーナーで自分の会社で全ての権限を一元化しています。日本でいうところの製作と制作が分かれていませんし、分かれていたとしても系列会社です。そういう面では中国の方がよほど資本主義的で合理的です。

――それでも日本では製作委員会方式が主流なのには、どういう理由があるのでしょうか?

福原P
理由はいろいろあると思いますが、ヒットしてもしなくても儲かる人がいるから、というのもその一つではないでしょうか。

――それはたとえば誰ですか?

福原P
委員会収益からの配当と窓口手数料というのが出資者の利益なのですが、権利を獲得している出資者は窓口手数料で収益を得る事が可能です、時代によりますが収益性の高い窓口を持っている会社等は委員会出資会社の中でその会社だけ黒字で他の会社は赤字というような不均衡も発生します。
また委員会を組成した会社は幹事手数料というものが得られますので、委員会全体の売上からトップオフで収益を得ることができます、もちろん幹事を務める会社は多くの出資をするという点でリスクはあります。
また、原作を提供する会社であれば、ヒットしなかった場合でも原作の売上が収入になります。出資をしないで原作印税のみを取るケースもあるのでこの場合は原作側はリスク無く収益を得る事ができます。
同様にSNSゲーム等もそもそも広告宣伝費に数億円かけているので、アニメ自体をCMと考えればそこまで高くなかったりします。
またアニメ制作会社も出資をしなければ当然制作手数料をきちんと残せば経営は黒字になります。
このように作る事で経済をまわしている会社が多数存在しています。

――なるほど。

福原P
とはいえ、僕は製作委員会方式がなくなるべきだとは思っていません。1990年代前半頃から製作委員会方式でTVアニメが作られるようになって30年近く続いてきたのは、やはり良いシステムだからです。
ただ、当時は今より作品数が少なかったですし、パッケージも売れやすく、それによって制作費が出せていた時代でした。今は制作費もコストカットされていますし、アニメの本数も増えているのでアニメーターを集めるのもひと苦労です。制作そのものがすごく大変になり、製作委員会方式のメリットが以前より減ってきています。それでもなお、このやり方がマッチする作品はありますし、実際僕も委員会を組むことが多いです。
その中で学んだ僕の考えは、作品の特性に応じていろんなストラクチャーから形式を選べる自由度があると良いな、ということです。選択肢を持てず、本当なら他のやり方をした方が最大化できるのに製作委員会方式でしかアニメを作れない、制作スタジオはそれに従うしかない、ということが一番の問題だと思うのです。

福原慶匡氏
――製作委員会方式の是非と並んでアニメーターの給与問題も昨今よく取り上げられますが、それについてはいかがお考えでしょうか。

福原P
日本では原作者は法的にも手厚く守られていますが、アニメ制作会社は自社発のオリジナル作品を作らない限り権利を持っていないのでいくら作品が売れても作り手には返ってきません。
仮にアニメーターに月給30万円等、アニメに関わるスタッフに適正な給与や休日を与えると1話あたり4000万円ぐらいかかることになります。が、実際の制作費は1500万円くらいです。ということは、そもそもそのしわ寄せが制作会社にかかる構造になっているということです。これでは儲かるはずがありませんし、当然クリエイターに還元することもできません。
僕は元々アニメ業界にいたわけではありませんが、ある時本気でアニメをやろうと思って音楽関連の仕事も辞めてアニメに軸足を据えたんです。その結果作品としては話題にはなりましたが、その割に全然儲からないんです。そこで「やはり権利交渉も全てスタジオの方でやらないといけない」と思い至りました。
僕は基本的にクリエイターにお金を払ったらそのぶん良いことがあると思っています。彼らに金銭的余裕ができればそのぶん時間的余裕もできますし、それをより良い作品作りに活かしてくれます。理想論かもしれませんが、そういう環境を作ることもまたプロデューサーの務めだと思います。
理想ということだったら、本当なら委員会側から「監督印税出さなきゃ」と言ってほしいんですけどね。
《いしじまえいわ》
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