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「プリンセス・プリンシパル」のスパイ描写はどこがスゴイ? 軍事研究家の小泉悠氏に聞いてみた

TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』の“スパイ描写”の魅力を探るため、軍事研究家・小泉悠氏にインタビューを敢行。本編第3話までをご覧いただいたうえで、実際のスパイ活動や世界情勢と照らし合わせつつたっぷりと解説していただいた。

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「プリンセス・プリンシパル」のスパイ描写はどこがスゴイ? 軍事研究家の小泉悠氏に聞いてみた
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■スパイに向いている資質、それは“良心を持っていない”こと

――アンジェらのスパイとしての能力をどう分析しますか?

小泉
まず身体能力がすごいですし、第2話では限られた時間の中でものすごく機転をきかせています。あと、第1話で非常に面白かったのは、あえて自分の弱みを見せて――それは嘘なのかもしれないけれども――、相手の心のブロックを解いて信用させるという手法。これもスパイ工学的に計算されたものです。
現実世界でも似たような例があって、約20年前のボガチョンコフ事件です。海上自衛隊の3佐がロシアスパイに情報を漏らしていたのですが、3佐には難病を抱えた息子がいてお金が必要であったりと、そうした心の弱みにつけこんでくるんです。第1話の妹が難病だったというところにもちょっと重なりますが、そういう冷徹な判断や非人道的な手法はスパイではよくありますね。


――ちなみに、キャラクターの中で、もっともスパイとしての資質に優れているのは誰だと思いますか?

小泉
皆、それぞれに才能を持っていると思いますが……やっぱりアンジェかなと思います。彼女は人を騙したり自分が嘘をついたりすることに全く罪悪感がない感じがして、それはスパイにとっては最も優れた資質です。
逆に言うと第1話で殺された人はまともな良心を持っていたんでしょうね。実際アンジェに「スパイに向いていない」と言われていましたし。良心を殺すとか言っているうちはスパイにはなれなくて、最初から存在しないか無視できる人でないとスパイはやっていけないんだと思います。

――プリンセスのお付きのベアトリスは一番可愛らしい感じですが、いかがでしょうか?

小泉
この作品は視聴者を騙しにくるから、一番それっぽくない人が逆にエグいことをしそうな気がします(笑)。彼女のマトモそうな感じもフェイクである可能性があります。プリンセスにこれほどまでの権力欲があったんだと第2話で分かりましたし。
ドロシーはこの中で一番良心がありそうな気がします。人間として一番理解できそうな感じ。でもこれからどういう風になっていくかわかりません。唯一の成年者で自覚的にお色気技を使うし、これから先はハニートラップな話もあるかもしれないですね(笑)。


――「個人」だけでなく「チーム」としての働きについてもお訊きしたいのですが、実際のスパイはどのように動くものなのでしょう?

小泉
組織全体として、チームの最小単位は3人だとよく言われています。そのうちリーダーだけは自分の上位の指揮官を知っているけれど、他のチームのことはしらない。残りのメンバー2人が捕まっても、そもそも他の細胞や指揮官のことは知らないというわけです。これは潜水艦のような極秘行動を行う軍事組織でも同じです。
情報戦や諜報活動では、知っているものはなるべく限定することが鉄則です。彼女らにもそういう思惑があって、もしかすると上に繋がっている組織も違うのかもしれませんし、腹を読み合いながら付き合っている関係ということも考えられます。

――彼女らの所属する“コントロール”の人々もまた謎めいています。

小泉
この人たちも信用できるかどうか分からないですよね。例えばこの中に王国の内通者がいるかもしれない。情報機関の中に内通者を持ってしまえば絶大な情報が手に入ります。
有名な例としてオレグ・ペンコフスキーという人物がいます。彼はソ連の参謀本部の中にいたCIAの協力者、つまり二重スパイだったんです。それによってソ連がキューバに核兵器を持ち込んでいることを知らせることができました。キューバ危機の裏側です。
あと、この作品で面白いのは大佐という存在です。情報機関と軍部って、やはり思惑が一致しないもの。だからこそ、軍は独自の情報機関を持ちたがりますが、この作品においてコントロールルームに常に軍の人間がいるところを見ると、どうもこの共和国の情報機関はひとつしかなくて、共同で運営しているらしいというところが見て取れます。
《日詰明嘉》
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