「囚われのパルマ」キャラデザ実田千聖に迫る 厚塗りに隠された苦労とは | アニメ!アニメ!

「囚われのパルマ」キャラデザ実田千聖に迫る 厚塗りに隠された苦労とは

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「囚われのパルマ」キャラデザ実田千聖に迫る 厚塗りに隠された苦労とは
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カプコンより好評配信中のスマホアプリ『囚われのパルマ』。少女漫画風のビジュアルが並ぶ乙女ゲームの中で、リアル系厚塗りの本作はひときわ異彩を放っています。本作のキャラクターデザインを手がけるのはカプコンのグラフィッカー、実田千聖さん。実田さんは同社発売の『エクストルーパーズ』やTVアニメ『マクロスΔ』のキャラクター原案なども手がけており、その作風の広さに驚かされます。


そこで本稿では今最も注目のクリエイター・実田千聖さんにインタビューを敢行!『囚われのパルマ』制作秘話を中心に、キャラクターデザインのノウハウ、カプコン入社から現在までのお話など、人柄やクリエイティブな部分、そしてグラフィッカーの仕事について語っていただきました。

■実田千聖(@mitachisato)



カプコンのグラフィッカー。代表作はiOS/Android『囚われのパルマ』(キャラクターデザイン、スチル、背景画担当)、PS3/3DS『エクストルーパーズ』(キャラクターデザイン、背景、UIデザイン担当)。TVアニメ『マクロスΔ』のキャラクター原案も手掛けており、今注目のクリエイター。

企画・編集:栗本浩大(@koudai5511
聞き手・文:みかめ ゆきよみ(
@mikameyukiyomi

◆カプコン流の乙女ゲーム『囚われのパルマ』


 

――『囚われのパルマ』のプロジェクトにはどのような経緯で参加されたのでしょうか?

実田:この企画が立ち上がってすぐ、プロジェクトに参加していたスタッフから、『エクストルーパーズ』からの縁で声をかけていただいてからです。

――『エクストルーパーズ』とは180度デザインの方向性が違いますが、『囚われのパルマ』のデザインはどのように決まっていったのでしょうか?

実田:デザインの方向については、私がチームに入った時から今の「リアル系の厚塗りでいくべきだな」と決めていました。カプコンは乙女ゲームの実績が10年前にプレイステーション2 向けに発売した『フルハウスキス』シリーズだけで、それ以降発売していません。お客様から見ても「乙女ゲームを出しているメーカー」というイメージはほぼないと思うので、他社と同じことをやったら埋もれてしまう。だから「他の女性向け作品と比べて目立たなければ!」という課題がありました。

そこでカプコンのグラフィッカーの特徴を振り返ったところ、人体デッサンがしっかりしてたり、色を塗り重ねて描く人が多いよねという話になって、この系統だったら沢山ある乙女ゲームの中で埋もれないのではないかということで、リアル系厚塗りでいくことが決まりました。

――『囚われのパルマ』は男性ユーザーも多いと聞きました。リアル系の絵柄だから男性ユーザーでも抵抗なくプレイできるのかなと思ったのですが、狙いとしてあったのでしょうか?

実田:男性にもプレイいただき嬉しいです。乙女ゲームの雑誌をパラパラとめくった時に「異質」に見えるように、という狙いは当初からチーム目標にありました。「カプコン流の乙女ゲーム」という部分が、男性にも受け入れられている理由ではないかと思います。

――キャラクターデザインについて、さらに詳しくお聞かせください。

実田:キャラクターのデザインについては、チームメンバーがくれる意見の最大公約数というか、尖りのない、丸い感じとかを大切にしています。男性向け作品のキャラクターは分かりやすく魅力的なアイコンをどこかに付けるようにしているんですが、逆に女性向けでは削って丸めて、平均的に見えるように気を付けています。


――確かにグッズ展開にしても、女性向けのものはさりげないデザインが求められる傾向がありますね。

実田:そうなんです。チームメンバーの女性たちはカプコンに入るくらいですから尖ったものが好きなのですが、お客様はそうではない。今までの自分たちがやってきた尖ったデザインを「さあ受け入れてくれ!」と言うのではなく、まず「嫌われないように」という方向で意見をまとめ、キャラクターに落としこんでいきました。

――アオイやサブキャラクターについても、その辺を意識したデザインになっているということでしょうか。

実田:そうですね。簡単に言うと、「髪とか肩とか尖っていない」みたいな(笑)。『囚われのパルマ』は1対1のバストアップでの会話劇が軸にあるので、胸から上にかけての情報が大切になってきます。どのキャラクターも、髪の毛や鎖骨から上の設計に気を遣っています。

――実田さんのTwitterにアップされていたハルトの設計図が「黄金比だ!」と話題になっていたようですが、この辺は意識されていたのでしょうか。

実田:アンドリュー・ルーミスというイラストレーターのイラストレーション参考書が好きで参考にしています。目と目の間は目一つ分の比率だよ、とか、そういうノウハウが詰まっていて。それを参考にしながら、主要パーツから他の部分の比率を導いて描いています。ものが美しく見える比率を守って描いた結果、黄金比っぽく見えたのかなと思います。


――サブキャラクターも個性的で本作の魅力を引き立てていると思うのですが、デザインはどのようにできあがっていったのでしょうか。

実田:実はNPCは一切登場しないつもりでいたんです。ところが、プレイヤーさんが島内を散策して話題を拾うという仕組みは当初からあって、作っていくうちに「独り言だけでは持たないな」となりまして(笑)。

――NPCだけシルエットにすると浮いてしまいそうですしね……。

実田:シルエットだけで表現する案もありました。影でもいいから、ある程度見分けがつくように描けば…という話にもなったのですが、プレイヤーが話題を拾うにはNPCにも個性がないと伝わらないだろうと。おかげで仕事がものすごく増えました(笑)。


――他にも制作裏話や苦労話などありましたらぜひ!

実田:この絵柄が必要であることはプロジェクトが始まった頃からわかっていたことですが、これは長い間このような厚塗りタッチに慣れ親しんだ方でないと実現できない絵柄でして、当時の私では描けないものでした。なので、長い期間試行錯誤を繰り返していたんですが、『パルマ』チームは常に走っていたわけではなくて、私自身も合間に『マクロスΔ』のキャラクター原案をやったり、『大逆転裁判』の背景をやっていたので、この絵に落とし込む画力を身に付けるのに苦労しましたね。

――別の仕事と並行しつつの作業、絵柄を切り替えるのは大変だったのではないでしょうか。

実田:それはもう、現在進行形で苦労しています(笑)!


――デザイン画から3Dに落とし込む際に様々な苦労があったと思います。

実田:平面から3Dへの作業は比率通りに落とし込めばいいと思われがちですが、実は大変な技術が必要です。個人的にあこがれている『バイオハザード』や『大逆転裁判』等で3Dモデルを作っている先輩がおりまして、この方に『パルマ』の3D変換を実現してほしいと思っていました。

――3D化にあたり、デザインの段階の制限などはあったのでしょうか。

実田:制限といいますか、3Dを作り慣れている先輩から「この絵のまま3Dにすると立体の辻褄があわない」と言われました。先輩いわく、多くのキャラクターデザイン画は横顔に比べ正面の顔は顎が引いているそうです。正面はかっこよく見せるためにやや上目遣いになっているんですね。でも横を向かせると顎をすっと伸ばした状態になっているので、「破たんしている」って(笑)。

――言われてみれば…!

実田:ほとんどのデザイナーはその癖で描いていると言われたのです。なので3Dにする場合、正面と横顔どちらを優先する?という話になりました。『パルマ』は5面図を用意したのですが、正面顔がいちばん美しく見えるようにお願いしました。本作は面会で正面で向き合うシーンが多くなるので、プレイヤーさんが一番見る機会の多い真正面顔の比率が整うようになっています。
《みかめ@INSIDE/www.inside-games.jp》
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