高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第9回 『マクロスΔ』とアイドルアニメとの三角関係 2ページ目 | アニメ!アニメ!

高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第9回 『マクロスΔ』とアイドルアニメとの三角関係

高瀬司の月一連載です。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。今回は『マクロスΔ』をはじめとした”アイドル”、それをモチーフにしたアニメについて取り上げています。

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■ AKBグループから『ラブライブ!』シリーズへ

『アイドルマスター』シリーズ、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ、『アイカツ』シリーズ、『プリティーリズム』/『プリパラ』シリーズ(『KING OF PRISM by PrettyRhythm』)、そして『ラブライブ!』シリーズ、あるいは『マクロス』シリーズ――これらが一例に過ぎないほど、2010年代はアイドルアニメが隆盛を極めている。
そしてそれらが、ゼロ年代末から2010年代前半にかけてのカルチャーシーンで中心的役割を果たした「AKBグループ」の爆発的な人気を背景にしていることは容易に見て取れる。

アイドルアニメは歴史的に、実在のアイドルと密な関係を取り結んできた。ジャンルとしての最初期の作品を見ても、マンガ原作ではあるが『さすらいの太陽』(1971年)は藤圭子、『ピンク・レディー物語 栄光の天使たち』(1978年-1979年)はそのタイトルどおりピンク・レディー、また『超時空要塞マクロス』(1982年)のリン・ミンメイも、当時絶大な人気を誇っていた松田聖子や中森明菜がモデルと言われる【注2】。

▼注2:アイドルアニメの歴史的系譜に関しては、泉信行が『アニメルカ vol.4』(2011年)所収の「魔法少女アニメの過去と未来――『魔法少女まどか☆マギカ』が描けなかった少女たち」で、魔法少女アニメからコーデ系キッズアニメ、そしてアイドルアニメへという連続性を詳細に論じている。

またもちろん、現代のアイドル文化においては、AKBグループ以外にも、「モーニング娘。」「Perfume」「ももいろクローバーZ」「BABYMETAL」といった、アニメとも相互の影響関係を認められるだろう無視できないアイドルグループは少なくない。
事実、アニメの主題歌も数多く手がけ、サブカル色の強い演出で知られる「ももいろクローバーZ」をはじめ、たとえば『プリティーリズム』シリーズはK-POPアイドルとのコラボレーションプロジェクトであったし、現在放映中の『プリパラ』3rdシーズン「神アイドル編」(第90話-)における、真中のんが1人で3アカ(かのん、ぴのん、じゅのん)を使ったユニット「TRIANGLE」は、その曲調やホログラムというガジェットからPerfumeをモデルにしていることが見て取れる。

しかしそれでもなお、AKBグループの存在感は特権的と言わざるをえない。
昨今の例で言うなら、話題を呼んだ応援上映につづいて2016年6月からはライド型アトラクション(4DX)上映もスタートした『KING OF PRISM by PrettyRhythm』における「PRISM KING CUP 次世代プリズムスタァ選抜総選挙」のような参加型投票イベントは、言うまでもなく「AKB選抜総選挙」の盛り上がりを受けた企画であるはずだし、『アイカツ!』シリーズの初代スペシャルコラボパートナーを板野友美、二代目を島崎遥香と連続してAKBグループのメンバーが務めていたことは、TVCMのほか女児の後ろに並びながら筐体上のポップなどで目にしてきた者も多いはずだ。

なかでも、最も直接的にAKBグループを下敷きにしているのが(後述する『AKB0048』シリーズと)『ラブライブ!』シリーズである。
先に挙げた「センター争奪総選挙」や、秋葉原という土地性、1stシングルPVの衣装もAKBの赤いタータンチェックを思い起こさせもすれば、劇場版での秋葉原でのライブ「SUNNY DAY SONG」の演出から「恋するフォーチュンクッキー」のPVを連想させられたとの声も少なくないだろう。楽曲面においても、AKB48はキングレコードへの移籍第一弾シングル「大声ダイヤモンド」(2008年10月)以降、アイドルソングによくある擬似恋愛視点も含んだラブソングが大きく後退し、一人称を「僕」とした、自分たちのいま・ここの状況を自己言及的に反映させたリリックが全面化するが、μ'sも1stシングル「僕らのLIVE 君とのLIFE」、TVアニメ第1期OP「僕らは今のなかで」、TVアニメ第2期OP「それは僕たちの奇跡」、劇場版テーマソング「僕たちはひとつの光」、あるいは「ススメ→トゥモロウ」「START:DASH!!」「No brand girls」「ユメノトビラ」「Wonderful Rush」「KiRa-KiRa Sensation!」「MOMENT RING」「ミはμ'sicのミ」「SUNNY DAY SONG」……といった主要な楽曲郡において明確に同様の傾向が見出だせるだろう。その意味で、メジャーデビューからその目標を達成するまでの6年間、AKB48公式ブログのタイトルが「AKB48~TOKYO DOME までの軌跡」だったことを思い出せば、声優ユニットのμ'sが東京ドーム公演をもって最後のワンマンライブとしたことも、劇場版との連動以上のものとして読めるだろうし、そもそもアイドル活動を「スクールアイドル」という部活動として、作中の大会「ラブライブ!」を「アイドルの甲子園」として描き出した点も、秋元康がたびたびAKBグループを「高校野球」に例えてきたのだから、アイドルものとして正しく現代的な形式であったと言える。

こうした影響関係の指摘をあまり見ないのは、当たり前過ぎるがゆえにいまさら指摘されないためか、あるいは類似性の指摘がなぜかネガティブな言明と短絡されることがあるため避けられがちなためかはわからないが――ちょうど『ラブライブ!』と『ラブライブ!サンシャイン!!』の序盤が一見したところ類似した要素に満ちていると同時に、その魅力に潜りこむにつれまったく異なる輝きを見せはじめるように――『ラブライブ!』シリーズを理解するためには確認しておいたほうがよい前提だろう。
《高瀬司》
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