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やらなかったらきっと一生後悔するからー『planetarian』津田尚克監督×青井宏之プロデューサー対談

Keyの名作『planetarian』がこの夏、配信版と劇場版という形で映像化される。アニメ!アニメ!では津田監督とプロデューサーの青井宏之を招き、本作へかける意気込みなどをじっくりと聞いた。

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■ 小野大輔さんの大事な作品をことごとく監督している

ービジュアルアーツさんも監督に完全に委ねたということですが、大きく変わる部分では主人公・屑屋のビジュアルですよね。原作には姿が出てきませんが、デザインはどう立ち上げたのでしょうか。

津田 
まずキャスティングは原作と同じ小野大輔さんとすずきけいこさんがマストで決まっていました。そこを外したらファンに向き合えないと思ったし、僕もいやだったので。声以外をゼロから立ち上げて行くとどうしても声優さんに似通った感じになりますね。そこに駒都えーじさんの男性キャラ感と美少女ゲームの主人公のセオリー「前髪で顔がよく見えない」という要素を加えてデザインしました。

青井 
『planetarian』は小野さん自身、まだ若手だった頃にオファーをもらった役で、それが12年経ってアニメ化するというのは思い入れも強く大事な作品だとおっしゃっていましたね。

ー小野さんだけではなく、監督の思いも拝見した試写で申し分なく感じました。アニメーションで加えられてたキャラクターの演技がきめ細やかに描かれていました。

津田 
アニメならではの「絵で見せる」表現もありますし、ゲームや漫画とは違って、アニメは視聴者自身のペースでは進行してくれません、よりプレイヤーの思い出に近くなるように、淡々とするシーンなどもテンポ感を意識的に調整しました。

青井 
屑屋がヒロイン・ゆめみにデレる過程は難しかったですね。

津田 
どの段階で屑屋がデレるのかは悩みました。ゆめみはロボットですから、その相手をする屑屋は”コンテに悩んで自室にある美少女フィギュアについつい夢中になるオレ”という図式とは違うわけです(笑)。返事が返ってくる存在です。ディストピアを生きる屑屋がプログラムされた存在であるゆめみを通じてどう変化していくのか。これを突き詰めて行くと主人公である屑屋は、つまりは「俺らだ」ということがわかってくるんですよ。

ープレイヤーであり、視聴者。

津田 
そうです。この辛い時代をどう生きるか、何と向き合って何を大事にするのか、自分の気持ちに正直に生きることとは。日常で悩んでいる、なんてことないけど重要な部分と向き合えれば、と。そういった話に最終的には持っていけたらと思いながら作っています。


■ ゲーム本編に小説、ドラマCDを全て包んだ作品

ー本作は配信版で「ちいさなほしのゆめ」を、劇場版として「星の人」を上映します。「ちいさな~」は原作ゲーム版のサブタイトルであり、「星の人」は小説やドラマCDで描かれた、もっと時間尺度の大きな物語となっています。これら全てを描ききるということですね。

青井 
そうですね。『planetarian』は屑屋とゆめみ、二人だけの物語ではないと思うんです。ゲーム本編の後にリリースされた小説、ドラマCDが加わったことで大きな世界の物語になりました。それが更に本作を名作から傑作へ押し上げていると考えています。
配信版ではゲーム本編を、劇場ではそれに加え屑屋のその後の人生を描く。主題歌Liaさんの歌も相まってKey史上でも特に訴える作品になると思っています。

ー劇場版で観る「星の人」はどういった形式なのでしょうか。

青井 
配信版を再構成したものも入れます。特にプラネタリウムの投影シーンは大画面のスクリーンで非常に映えるので楽しみにしていただきたいです。

ー確かにプラネタリウム投影シーンは非常に印象的な仕上がりでした。

津田 
『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』にも参加していた撮影監督の渡辺(有正)さんが『planetarian』の原作ファンで、めちゃめちゃこだわってる作業をしてくれました。たぶん僕が今までやってきたタイトルの中でも屈指の撮影処理がかかってる。普段は撮影に時間を上げられないという非常に心苦しい状況がTVシリーズでは多くて・・・。今回はレンズ効果にこだわりたかったんです。実は一昨年、劇場で見た『たまこラブストーリー』で「やられた!」と思ったんですよ。味のある邦画に似た撮影のボケ足の感じ、細かいレンズ効果はずっとやりたかったことなので目の当たりにした時には相当ショックでした。でもその時にレンズ効果は劇場ですごく映えるんだと実感したんです。今回はレンズ効果をふんだんに入れていて、一画面一画面すごく細かく作ってもらいました。だから配信版を見た方が劇場版を見た時、同じシーンでも、その奥行きにビックリすると思います。

■ 劇場版は総集編ではない

ー劇場版では視覚的にも新発見がある、というわけですね。

津田 
あるはずです。音楽ラインも設計を変えていきます。劇場版は総集編ではないんです。裏解釈的になればいいな、と思っています。そうすることでお客さんにも満足していただけるはずです。

青井 
しかも津田さんの熱い思いが結集していて、配信版は当初予定していた各話10分を余裕で超えてしまっています。

津田 
そうですね。各話10分で収めることも出来たかも知れない。でもその『planetarian』を観る度、僕は消化不良を起すだろうなって。だから今は胸を張って「うん!」と満面の笑みでうなずけますよ(笑)。いや、仕事としては本当にダメなんですけど・・・。


ー他にも見どころはありますか?

津田 
ヒロインのゆめみはロボットですから、見た目の可愛さだけではなく、誰もが感じた事のある機械に対するアプローチ、例えば「このパソコン何でこんな動きするんだよ!」といった部分をアニメでは大事にしたいと思っています。
打ち込んだ命令に対して、プログラムに忠実に、実直に返しているだけなんですけど、こちらは一喜一憂してしまいますよね。そんな部分です。
原作のテキストを担当した涼元(悠一)さんの世界観は他のKeyタイトルと比べて、よりドライな感じです。海外などでは、そうしたハードSFの部分が評価されていると思うんです。ディストピアに美少女というミスマッチ感。他のKeyタイトルにはない色があると思います。

ーありがとうございます。最後に読者へメッセージをお願いします。

青井 
この記事を読んで興味を抱いてくださった方がいましたら、ぜひ配信版をご覧いただきたいと思います。全5話、しかも10分ちょっととコンパクトですし、軽い気持ちで楽しんでいただけると思います。心に残る作品になっているはずです。

津田 
作品自体の世界観が生っちょろいものではないのは見ていただければ分かると思います。それは原作からアニメになってもきっちり引き継がれています。ゲームでみんなが脳内補完していた部分が映像となって出てきているはずです。
観終わった後はみんなでぜひplanetarianの話をしてもらいたいですね。その上で、劇場版にも足を運んでもらえるといいかなと思います。劇場へは僕もこっそりお客さんとして観に行こうと思っているので、一緒に観ようぜ!みたいな(笑)。ぜひお楽しみに!よろしくお願いします!

『planetarian』
7月7日(木)より配信
http://planetarian-project.com/
《細川洋平》
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