豊永真美[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員][世界のメディアタイクーンへの道―ネットワークを作るということ]■ わらしべ長者となるサバンサバンはコンテンツのクリエーターというより、その権利を売買することにより、財産を成した人間である。その真骨頂は、パワーレンジャーを放送していたフォックス・キッズ・TVとジョイントベンチャーを始めた1995年ことに端を発している。以下、順を追って見ていこう。1) 2001年 フォックス・ファミリー・ワールドワイドをディズニーに53億ドルで売却 サバン個人は推定17億ドルを入手2) 2003年 ドイツの民放プロジーベンサットを22億ドルで買収3) 2007年 プロジーベンサットを40億ドルで売却4) 2007年 米国最大のスペイン語放送局ウニビシオンを123億ドルで買収5) 2010年 パワーレンジャーをディズニーから買戻す6) 2011年 インドネシアのメディアヌサントラの株式5%を7800万ドルで買収7) 2011年 カナダのライオンズゲート、マレーシアのASTROと共同で香港にセレスティアル・タイガー・エンターテイメントを設立8) 2013年 イスラエル通信企業パートナー・コミュニケーションの経営権獲得9) 2016年 イスラエル企業を対象に1億ドルのベンチャーキャピタルを生成10) 2016年 ウニビシオンが風刺新聞「ジ・オニオン」の株式を取得11) 2016年 ディズニーとともにイスラエル企業プレイバズに出資 プレイバズはオルメルト元イスラエル首相の息子が創業した企業ここで、注目されるのは2010年にパワーレンジャーをディズニーから買い戻したこと、2010年以降アジアへの投資を重視していることの2点である。特に、中国、インドネシアへの投資は注目される。その一方で、日本に投資をしないことは、サバンと日本との「距離感」を感じることができる。■ パワーレンジャーの新たな展開パワーレンジャーブランドは再びサバンの手に渡ったが、かつてのような熱狂的な人気を巻き起こすことには成功していないようだ。それでも、世界展開は着々と進めている。2015年に始まった「パワーレンジャー ダイノチャージ」(「獣電戦隊キョウリュウジャー」を元にしている)にはブルーレンジャー役にインドネシア出身のヨシュア・スダルソを起用。インドネシア人に親近感を抱かせるためのキャスティングだ。また、海外の保護者への配慮も進めている。日本ではスーパー戦隊は1年ごとに新シリーズがリリースされる。日本ではレンジャーを演じる若手俳優が入れ替わることも魅力だ。しかし、海外では、毎年玩具のデザインが変わることは子供の過度の欲望を刺激するとして好まれない。このため、パワーレンジャーシリーズでは、人気のシリーズをできるだけ引き伸ばすことで対応している。さらに、2017年に1月には新たな劇場用映画の公開が予定されている。2016年5月現在、徐々にキャストが発表されており、敵役には中堅女優のエリザベス・バンクスが登用されるなど、体裁を整えた映画になるようだ。レンジャーズの配役には、白人、アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系の役者が発表され、アメリカの現状を反映したキャスティングとなっている。■ パワーレンジャー以外の子供向けコンテンツ展開にも協力サバンは2010年にパワーレンジャーを買い戻して以降、子供向けコンテンツの開発にも力を入れている。2012年には「デジタルモンスター」シリーズのアジア地域を除くライセンスを獲得した。2014年にはハリー・ポッターシリーズの監督・製作で知られるクリス・コロンバスとともに「ザグ・アニメーション・スタジオ (Zag Animation Studio)」を設立。このスタジオを実際に取り仕切っているのはジェレミー・ザグというフランス人だ。ザグは2000年にサバンのインタビュー番組を見て、同じようなビジネスを展開することを考え、まずはサバンの最初のビジネス・パートナーだったジャクリーヌ・トルジュマンとフランスでザグ・トゥーンを設立、その後アメリカに渡り、ついにサバンとビジネス・パートナーとなった。ザグ・トウーンはDICアニメーションが80年代に製作した「ポップルズ(Popples)」をリメイクし2015年よりネットフリックスで放送している。サバン・ブランドはポップルズの玩具などのライセンスを行っている。 最新作は「ミラキュラス:レディバグとキャットノワールの物語(Miraculous: Tales of Ladybug & Cat Noir)」で韓国、フランスとの合作だ。第1シーズンは2015年9月の韓国を皮切りにフランスではTF1、米国ではニコロデオンで放送されている。音楽監督はノアムだ。2016年1月10日のAnime News Networkの記事によると、現在テレビ放送されている3D版とは別に、2D版のOVAを東映アニメーションと共同制作予定である。またこの作品の玩具はバンダイとなる予定だ。
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