2016年6月、Amazonプライム・ビデオにて日本のアニメーションスタジオが参加するオリジナルアニメーション企画が相次いで明らかになった。6月21日に発表されたのは、『Lost in Oz』である。日本を代表するCGアニメーションスタジオのポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作をする。また、6月17日には、国内のストップモーション・アニメーションの雄であるドワーフが、『ワクワクこまちゃん(仮題)』にてAmazon プライム・ビデオのオリジナル作品パイロット・シーズンに参加したことを発表した。 Amazonプライム・ビデオはインターネットショップの世界有数のAmazon.comの映像配信サービスで、2013年よりオリジナル番組・映画も製作・配信している。『Lost in Oz』と『ワクワクこまちゃん(The Curious Kitty & Friends):仮題』は、いずれもこれに関わるものだ。
『Lost in Oz』は、児童文学の名作『オズの魔法使い』に基づいたAmazonプライム・ビデオとBureau of Magicが製作するキッズ向けのアクションアドベンチャーコメディである。不思議な国に迷い込んだ12歳の少女ドロシーの魔法に満ちた旅を描く。 製作のBureau of Magicは、デジタル時代のエンタテインメント番組を制作するとして2014年に設立された。『Lost in Oz』は2015年にアマゾンのパイロット・シーズンのためにパイロット版が製作されて、好評を博したことからフルシーズンの製作にこぎつけた。本格的な制作に進むにあたり、『トランスフォーマー プライム』や『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』などのCGテレビアニメーションで実績の高いポリゴン・ピクチュアズの力を借りるかたちとなった。
ポリゴン・ピクチュアズは、CGアニメーションのテレビシリーズで世界に広く知られたスタジオである。近年は、国内向けのセルタッチのCGアニメーションにも乗り出している。『シドニアの騎士』『亜人』を製作、大きな話題を呼んだ。 その際には、映像プラットフォームとの協業にいち早く乗り出した。『シドニアの騎士』ではNetflixが海外独占配信、『亜人』では世界独占配信をしている。 この2つの作品から、ポリゴン・ピクチュアズはNetflixと密な関係にあると見られていただけに、Netflixとライバル関係にあるAmazonプライム・ビデオ作品への制作参加はやや意外感もある。 ただ、『シドニアの騎士』『亜人』はポリゴン・ピクチュアズが自ら製作出資に参加するもの、『Lost in Oz』はアニメーションパートの制作という違いがある。これはポリゴン・ピクチュアズが、ひとつのビジネスの枠組みに縛られずに、いくつもの異なるビジネスモデルを取り入れていることを示している。同時に、多様な映像配信プラットフォームの存在が、様々なビジネスを可能にしているようだ。ポリゴン・ピクチュアズは、映像配信時代の新しい環境に素早く適応する代表的な日本企業と言っていいだろう。