ーメディア展開についても聞かせてください。映画化のお話は連載初期にすでに打診があったとうかがいましたが、いつぐらいだったのでしょうか。
三部
二巻が出る直前くらいです。映画のプロデューサーである春名さんが一巻のコミックスを持ってきて、お話をしてくれました。
ーその時はどう感じられましたか?
三部
「担当さんの言うことを聞いてよかった」と思いました。一巻のラストを「昭和63年の小学校の前」にしようと言ったのは担当さんだったんです。当初はもっとゆったり進めて行くイメージでしたが、そのアイデアを聞いてから描き直してスピーディーに展開させたらラストの衝撃とスピード感がハマった。そこが春名プロデューサーにも伝わったから二巻が出る前に話しに来てくれたと思うんです。
ー『僕街』は漫画、アニメと映画がほぼ同時期に完結する仕掛けも見事です。これはどのように実現させたのでしょうか。
三部
アニメ、映画ともに話をいただいた時から終わり方や完結の時期は聞かれました。特にアニメは原作になるべく寄せたいという伊藤智彦監督の強い意向もあったので、何度も話し合った、という形です。
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ー映画をご覧になってどのような感想を抱きましたか?
三部
すごくよかったです! 少年時代の悟を演じた中川翼くんもすごいですよね。あのキャスト、スタッフの中でものすごくチャレンジしたと思うんですよ。それから雛月役の鈴木梨央ちゃんも凄まじかったですね。本当に驚きました。
ー映画では『僕街』のエッセンスが凝縮されつつ、映画としても見事に成立していました。ご自身が生み出した作品と映画の間にある距離感はどう感じられましたか?
三部
尺の問題もあると思いましたし、何より監督は平川雄一朗さんということで“リバイバル”の解釈を含め全部好きに解釈してくださいと伝えていたんです。それでも俺が大事にしているシーンーーご飯を食べるシーンなどは映画でもやっぱり大事にしてくれていて、すごくうれしかったですね。もちろん信頼していましたから、出来に関しては全く心配していませんでした。
ー悟が藤原竜也さんに決まった時はどんなお気持ちでしたか?
三部
「やった!」と思いました。映画『バトル・ロワイアル』でいい役者さんがいっぱい出てる中、ぶっちぎりの存在感を出してると感じたのが藤原さんでした。その頃から好きだったんです。実写になることで、悟のイメージが変わったら変わったでいいと思うんですよ。実際、藤原さんの悟は俺の描いた悟とは確かに違うとは思いますけど、藤原竜也流の悟が確立されていて、それが映画にも、悟という存在にも説得力を持たせてるんです。本当に言うことなしです。
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ーもしご自身がリバイバルで過去へ行くとしたら、どの時期に行きたいですか?
三部
この漫画が描けたり、こんなに注目してもらえるようになったのはたぶん積み重ねがあったからなんです。だから過去に戻ってやり直したい場所はないですね。ピンポイントで「あの時ああ言えばよかった」ところはありますけど、それができてしまうと何も思わなくなってしまうんですよ。やっぱりやり直しが効かないから人生はおもしろいと思います。