ーオーディションはどのようなかたちで行われたのでしょうか。
水瀬
まずテープオーディションがありました。その後にスタジオオーディションの流れでした。たた順は資料を読んでもセリフを読んでもどうお芝居をしたらいいのかわからなくて。「喋るとお腹が痛くなる」という順の気持ちにどうしたらなれるのか迷いながらでした。やっていることが正しいのかわからないまま演じて、歌って、オーディション会場を後にして……。自信はなかったのですが、作品については「こんな映画を公開するんだ、楽しみ!」とわくわくしていました(笑)。
ー雨宮さんはいかがでしたか?
雨宮
実は私も最初は順ちゃんを受けていたんです。ところがスタジオオーディションで順ちゃんをやった後に「菜月も受けてください」ってその場で言われて、資料やセリフを読ませてもらって、すぐに菜月を演じました。後から考えると、短い時間で「こういう子だ」と抱いた印象をパッとそのまま出せたのがよかったのかなって。
ーアフレコの後、完成した本編をご覧になった際はどう感じましたか?
水瀬
拓実役の内山(昂輝)さんとの掛け合いですごく勉強させていただいたんです。内山さんはまるで自分自身がしゃべり出すかのように芝居をしておられて、その掛け合いの中で活き活きと順を演じられたと思います。掛け合うことで生まれる順の呼吸感がそこに残っていたので、ホッと安心しました。
ー雨宮さんは菜月を演じられる時、どういうところを意識されていたのでしょうか。
雨宮
菜月は、すごく優等生で、女の子からも憧れられる存在だと思います。一方で気を遣って自分の気持ちを押し殺したりするんです。それが計算ではなくて自然にそうなってると感じていました。ですので「あざとさ」みたいなものは絶対に付けたくないと思って演じてました。
後半で、拓実に自分の気持ちをぶつけるシーンも、思いが漏れ出してぶつけてしまうんですが、ヒステリックにはなりたくないと思ったんです。私の中の菜月のイメージは「男らしさのある子」、優等生らしさは保ちつつも女っぽさはセーブするという気持ちでした。

■ アフレコ現場はまるで本物の高校
ー本作はミュージカルシーンも印象的です。歌の収録はどう進んだのでしょうか。
雨宮
セリフを全部録り終えてから、ひとりずつ呼び出されて収録です(笑)。
水瀬
ひとりひとり消えていくんですよ。
雨宮
みんなで待ってて、「誰々さん入ってくださーい」って次々と呼ばれていくんです。
水瀬
終わった人は帰るので、少なくなるにつれて残った人はどんどん緊張して。
ーアフレコではみんなで作品の空気感なども共有されたと思います。
雨宮
自分の意識の変化がありました。みなさん、本物の高校生みたいにすごく自然に言葉を発している気がしたので、私も自然にやりたいなって思えて。こういう空気感の作品なんだって、スタジオにいることで分かっていきました。
水瀬
みなさんすごく自然に声を出していましたね。雨宮さんの声も菜月の声のまんまだなって思うし、声をガラッと変えたりしない。それがすごく心地よくて。
アフレコの休憩で、みんなでお昼食べようとなった時も、「学校のお昼休みってこういう感じだったな」って思い出したり。みんなと話をしたりした時間も、全てが作品に繋がっていてすごく新鮮で楽しかったです。

■ 高校生が誰でも体験するうまくいかなさを描いた『ここさけ』
ー物語ではストーリーが進むにつれて人間関係が変化していきます。クライマックスまでの後半をお二人はどうご覧になりましたか?
水瀬
これが岡田さんの書くシナリオなんだな、現実でもきっとこういうことあるなと思いました。恋愛にかかわらず、人間関係の中では「絶対大丈夫」って思っていたことほど意外に最後で覆されたりします。そういう想像を心の中で膨らませるにふさわしいすばらしい展開だなと。
雨宮
作品は高校生のうまくいかなさがすごくたくさん描かれているんですよね。きらきらというよりはリアルな青春、たくさん悩んで泥臭いところもありながら、うまくいかない。でもそれは決して不幸せじゃなくて。高校生の時期のうまくいかなさと、何が起こるか分からない感じと。必死にもがいて生きている様がすごく現されていて、すごくいいなと思いました。
