フランスの劇場用アニメ動向 -ジブリの穴は埋められるのか- 第2回:意外な映画がランクイン | アニメ!アニメ!

フランスの劇場用アニメ動向 -ジブリの穴は埋められるのか- 第2回:意外な映画がランクイン

豊永真美氏によるフランス劇場アニメーション興行における日本アニメの分析。今回は興行ランキングから市場の特徴を読み解きます。

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■ 豊永真美
[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]

■ ジブリ以外は意外な映画がランクイン

一方ジブリ映画以外で、人気を集めたのは、日本人にとっては意外な映画だったかも知れない。「キャプテンハ―ロック」と「聖闘士星矢」は、80年代から90年代にかけて、フランスのテレビ放送で人気を集めていたことが人気の要因であろう。フルCGアニメということも動員に寄与したかもしれない。
 さらに、前述した「見放題パス」が人気に一役かっている可能性が高い。パスを持っている観客は対象の映画館でなじみのあるタイトルであれば見に行く確率が高まる。

「キャプテンハ―ロック」のヒットは東映アニメが自らニュースリリースで発表している(http://www.toei.co.jp/release/anime/1203137_983.html)。それによると、フランスの興行収入は8億円を超えており、5億円といわれる日本の興行収入を上回ったと考えられる。
「キャプテンハーロック」ほどのヒットではないにせよ、「聖闘士星矢 Legend of Sanctuary」が観客を集めているのも、「聖闘士星矢」シリーズになつかしさを感じる人が映画館に足を運んだと考えられる。

さらに意外が結果なのが「こま撮り映画 こまねこ 」が25万人以上の動員を集めていることであろう。「どーもくん」で知られるドワーフが制作したこの映画はフランスでロングラン上映となり、ドワーフのホームページにも紹介されている(http://www.dw-f.jp/works/komaneko.html)。
フランスでは、子どもの休暇時にあわせ昼間の時間に上映されており、これも、日本を上回る興行収入をあげている可能性が高い。ドワーフ制作の作品はどーも君といい、こまねこといい、欧米で人気を得る「何か」をもっていそうである。

一方、「おおかみこどもの雨と雪」の観客動員は17万人にとどまっている。日本映画としては決して低い数字ではないが、日本の観客動員実績を鑑みると、もっと観客が集まってもよいのではないかという気がする。

■ ヒットすべき映画の不在

一方、この期間、日本では「ドラゴンボール」、「One Piece」、「NARUTO」など、フランスでコミックもテレビアニメも人気のあるシリーズの劇場版映画が公開されヒットしている。にもかかわらず、劇場公開は限定的なものとなっている。allocineで動員数が確認できたのは、「The Last: Naruto the Movie」(2015年公開)68,114人のみで、それ以外のこの3作の劇場用アニメはDVD発売に留まっているようだ。

コミックやテレビアニメの人気を鑑みると、劇場用アニメがきちんとした形で公開されてもそれなりに観客を集められるのではないかと期待される。それが、あまりよい結果となっていないのは、00年代後半からは、フランスで公開される劇場用アニメは3Dが主流となり、これら3作品の「図柄」に不安を抱いた可能性があること、フランスのアニメの観客は子どもむけであり、「NARUTO」などは対象年齢が高すぎると判断された可能性があることなどが考えられる。
またテレビアニメ由来のアニメが劇場用となったとき人気を得られるかについて、フランスの劇場関係者が疑いを持っているのも事実だろう。その背景にはポケモンシリーズの大ヒットの後の人気の急速な収縮があるかもしれない。

それにしても、フランスの劇場公開された日本のアニメを見ると、人気のあるのはジブリであり、それを除くと、日本人にはなかなか納得できない、不思議なランキングとなっている。

[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]
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