特撮作品は数多くの人に支持されている。特に過去の、特撮黎明期の作品を愛する人の中にはSF作家や脚本家、アニメーション監督も多い。7月23日(木)早川書房より刊行された『多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー』は、まさに第一次怪獣ブーム直撃世代のSF作家がウルトラシリーズのオマージュや再解釈などを行い書き上げた円谷プロ公式ウルトラ怪獣短編集だ。〈TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE 01〉と銘打たれている本シリーズは早川書房と円谷プロダクションとのコラボレーション企画であり、続刊予定となっている。8月8日(土)、書泉ブックタワーでは本書の刊行を記念したトークイベントが開催された。イベントには表題作『多々良島ふたたび』を執筆したSF作家の山本弘さん、そして『ウルトラQ』で江戸川由利子、『ウルトラマン』でフジ・アキコ隊員を演じた女優の桜井浩子さんが出席した。山本さんが書いた『多々良島ふたたび』の「多々良島」とは『ウルトラマン』第8話「怪獣無法地帯」の舞台となる架空の島のこと。本作を読んだ桜井さんは「本当に多々良島に行って体験したことを書いたみたい」と臨場感を絶賛した。本作を書いた経緯を聞かれた山本さんは「SF作家はひねくれているので(笑)、ストレートに怪獣ものを書く人はいないかなと思ってストレートな作品を書きました」と語った。9~10才頃、テレビに現れた「怪獣」の存在に衝撃を受け、そこからSFの世界に触れるようになったと打ち明けた。また、特撮作品で矛盾点とされるような部分を独自に考証し理屈を付けていくことで物語を作っていくことを、「穴をふさぐと宝物が生まれる」という独特の言い回しを用い表現。『多々良島ふたたび』はそうして執筆されていったという。桜井さんは『Q』で“マンモスフワラーを初めて見て驚く”という演技をする際、「どういうものか全然わからないけど、とにかく頭の中に得体の知れないものを想像して演じてました。特撮は演じる方にも想像力が問われるんです」と語った。他にも、当時ならではの苦労話や撮影秘話で会場を興奮させた。そういった“撮影の苦労”とはもちろん無縁である『多々良島ふたたび』を書いた山本さんに対しては、「山本先生は本当におもしろがって書かれてますよね。実相寺(昭雄)監督もいつもたのしんで撮影していました。先生の作品からもたのしさがうかがえます」と、往年の名監督を引き合いに出し、うれしそうに感想を述べた。今後も続くという〈UNIVERSE〉シリーズに関して、山本さんは「本当に作家それぞれの個性が出るし、作家が書いた数だけ、怪獣の世界は広がっていきます。どんどん広げてほしいと思います」と述べ、桜井さんは「こうしてクラシカルな作品が新しい物語となることは光栄に思います。このシリーズがみんなに浸透して、いずれはテレビ放送にまで行ってもらえたらうれしいです」と語った。最後のあいさつでは山本さんは「ウルトラシリーズに洗礼を受けて今ここにいるといっても間違いありません。そういう意味では少しご恩返しができたかなと。本日はありがとうございました」と述べた。桜井さんが「『Q』『マン』放送から来年(2016年)で50周年になります。『ウルトラ』だけでなく、特撮では庵野(秀明)さんも含めいろいろな人たちが一生懸命がんばっています。ぜひとも応援よろしくお願いします」と。最後は2016年公開予定の『ゴジラ』最新作で監督・脚本を務める庵野監督にもエールを送り、締めくくった。こうしてトークショーは大盛況のうちに終了した。[細川洋平]
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