――今回、主要キャラクターが4人、かなり絞られています。映画の長さもありますが、思い切っているなと感じます。
長井
群像劇はまた違うテクニックが必要なんだろうなというのは考えました。むしろ4人でもちゃんと描き切れるのか不安だったりしたんです。各キャラクターの内面も描く作品なので、尺との勝負でした。
――本編の話になりますが、主人公の順はどういう女の子なんですか。彼女はなぜこんなに背負うのだろうと思いました。
長井
きっと素直な子なんでしょうね。でも正直言うと、「子供のころのあまり何も考えていない時期に言葉によって呪いをかけられた少女」、これが今回の順の最初のイメージ像だったんです。しゃべらないことが日常になってしまった少女です。
だからしゃべらないだけで感情表現はわりとストレート。そこで卑屈になっていくキャラクターだとちょっと描きづらいなっていうのもあります。
岡田
物語の冒頭で、彼女は親から「ある言葉」を投げかけられるんです。子どもが親に否定されるって、相当大きな出来事だと思うんですよね。そのショックに対応する方法がわからなくて、でも受け止めようと必死になって、極端な選択をしてしまう。素直でまっすぐだからこそ、背負ってしまうのかなと。
――お話を作るときに、観客を泣かせようとか、エモーショナルなものを作ってやろうみたいなことは意識されるんですか。
長井
今回は本当に意識してないですね。もちろん面白く作ろうと思っているので、触りやすく作ろうというのもあります。
岡田
お話というよりはお話の設計になってしまうのですが、打ち合わせを重ねていくうち、緩急や伏線の回収の仕方など、シリーズものの印象に近づいた感じがします。
劇場のホンを担当させていただく時は、テレビシリーズとは違う文法で書きたいと基本は思ってはいるんです。
だけど私たちはテレビアニメをずっと作ってきて、テレビアニメが好きで。それで以前、3人で劇場をやらせてもらえるなら、多少テレビアニメの文法を入れるチャレンジをしてみたいねと話したことがあったんです。今回の本読みのときも、なんとなくその気持ちがみんなあったかなっていう気はします。
田中
そもそも劇場を作り慣れてないからっていうのもありますね。
長井
最初の合言葉は、テレビシリーズを5本作れば大丈夫(笑)。