2013年のアニメ産業売上は史上最高額に「アニメ産業レポート 2014」刊行記念セミナー | アニメ!アニメ!

2013年のアニメ産業売上は史上最高額に「アニメ産業レポート 2014」刊行記念セミナー

「アニメ産業レポート 2014」の刊行を記念するセミナーが10月17日に開催された。レポートは2008年より日本動画協会がアニメ産業関連の統計をまとめて発表しているものだ。

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「アニメ産業レポート 2014」の刊行を記念するセミナーが10月17日に開催された。同レポートは2008年より一般社団法人日本動画協会がアニメ産業関連の統計をまとめて発表しているものだ。今回の2013年のアニメ産業市場(広義)をまとめた「アニメ産業レポート 2014」で6冊目となる。アニメ産業の売上の分類、テレビアニメの制作分数、劇場アニメ興行収入、アニメビデオ売上などさまざまな角度から統計・分析を行っている。
産業レポートによると、2013年のアニメ産業市場(ユーザー市場)の売上は前年比8.7%アップの1兆4913億円で、過去最高だった2008年の1兆4086円を超え史上最高となった。また今回のレポートの特筆すべき点として、新たにライブエンタテインメント(アニソンコンサート・アニメミュージカル、展示会など)の項目が加わった。これは統計上無視できない規模にまで成長したためだという。

「アニメ産業レポート2014」刊行記念セミナーの登壇者は次の通り。
モデレーター:
増田弘道氏(株式会社ビデオマーケット 取締役)

パネラー:
氷川竜介氏(アニメ・特撮研究家、明治大学大学院 客員教授)
数土直志氏(「アニメ!アニメ!」編集長)
陸川和男氏(キャラクター・データバンク 代表取締役社長、キャラクターブランド・ライセンス協会 理事・事務局長)
森祐治氏(電通コンサルティング 取締役 シニア・ディレクター、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授)
小野打恵氏(ヒューマンメディア 代表取締役社長)

セミナーでは2013年のアニメ産業市場を総括しつつ、各パネラーによる振り返りが行われた。まずは、2013年アニメ産業(ユーザー市場)の売上が史上最高額に達したことについて、アニメ産業の景気動向についてパネラーがそれぞれの見地から意見を述べた。

「アニメ産業の景気について聞くところによると、このままアニメ制作本数は増えて続けていくのではないかと。その本当の理由は誰にもつかめていませんが、グッズなど副次収入があることによりオープンレンジで回収できるためアニメは投資回収の効率がいいのではないかと言われています。もう一つはこれまで制作本数が増えなかった背景として、テレビだとチャンネル数に限りがあることが挙げられます。しかし昨今普及してきたネット配信はそうではない。増える要因があっても減る要因は無いんです」と氷川氏。一方、アニメの制作は“自転車操業”状態になっているため先に向けた投資を作ってキャッシュフローをまわしていかないといつかつまづくのでは、と懸念も示した。

また数土氏は「2000年代後半から2010年ごろまであった業界のどんよりとした空気は感じられない」とした上で、「だからといってすごく儲かっているという印象もない」とコメント。ソーシャルゲームの権利料が流れ込んだことで、スタジオのラインをあけることなく制作できるのでアニメ業界の歴史的にはいい時代だという。

キャラクター業界から見たアニメ産業の印象については、陸川氏が2013年の動向を「2013年のキャラクター業界の売上は前年並みでしたが、今まで定番キャラで市場を牽引してきた部分がシェアを落としています。ただ、あまりキャラクターグッズを買わないと言われていた女子中高生のマーケットが伸びています。ディズニーなどのファンシーグッズの売上減少と、大人向けの深夜アニメのグッズを買う人が増えたことで前年並みに落ち着いたといえます」話してくれた。2014年についてはまだ統計をとっている段階だが、「妖怪ウォッチ」と「アナと雪の女王」が市場を占める方向に向かいそうだ。

森氏は、「複数のカテゴリに対し同時に訴求するブームが減って、商品が小粒化・多様化しています。ようやくマーケティング関係者がキャラクターの力が大きいことに気づいた段階で、トヨタのCMにドラえもんが起用されたように日本で世代を超えて訴求するキャラクターというとアニメにあるんです。アニメに興味が無かった人もこれを感じているのではないでしょうか」と大人と子供をブリッジする何か、はアニメにあるとした。
「こんなことを言うととんでもないと言われてしまうかもしれないけど」と前置きした上で小野打氏は「ゲーム・マンガ・アニメが産業の根幹になり、そこから建設やファッションなど他産業に派生し広がっていくのではないでしょうか。現にASEAN諸国に輸出されている日本の白物家電にはドラえもんをデザインしたほうが売れるという実績もあります。アニメ頼りという意味ではなく、アニメが世界の羅針盤として、世界を見つめ支えていけるようになれれば」と話してくれた。

このほか、海外における日本のアニメ・マンガ・ゲームコンテンツ、いわゆるクールジャパンが再び浮上しつつあること、アニメにおける遊興関連(パチンコ・スロット)の売上が安定的に伸びていることにも触れ、海外との共同制作も以前と比較して増えているという話題に。全体として、アニメ産業の景気は拡大しつつあるようだが投資面などで先のことを考えなければという、楽観視するにはまだ危うさを残した状況にあるようだ。
また、2016年には制作現場がキャパオーバーする“2016年クライシス”という言葉も登場し、この先どうアニメを作っていくかを考える時期なのかもしれない。
[川俣綾加]
《川俣綾加》
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