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「円環のパンデミカ」 東映アニメがゲームに乗り出した理由を訊く

『円環のパンデミカ』は、東映アニメーションが手がけるオリジナルのスマートフォンゲーム。なぜゲームに挑戦するのか?同社の松浦寿志氏、それに開発プロデューサーの黒川文雄氏にお話を伺った。

インタビュー
■ゲームからのメディア展開、
アニメからのメディア展開


―ストーリー部分は東映アニメーションの中でシナリオを制作しているのですか。

松浦
すでにある程度のボリュームのシナリオが出来ています。ただそれをゲームの中で表現するかといえば、今はまだ様子見です。むしろゲームの邪魔になるのであれば、シナリオは抑えようとも思っています。
またメディアミックスする際も、必ずしも同じシナリオを使わなくても良いと考えています。世界観は共有するが別シナリオもありですし、また極端な話、アニメは日常系の学園モノでもいいのではないかとすら思っています。ゲームからのIPだけ、そういった部分はフレキシブルにありたいと。

―なるほど。ゲームの場合は、メディアミックス展開もユーザーの反応を見て仕掛けていくことができますね。

松浦
そうですね。主要な登場人物を押し付ける気はありません、他のキャラクターに人気が集まるのであれば、そちらをメインにしたメディアミックスもありえます。例えば、感染者側に人気が集まるのなら、そちらサイドのアニメ化を展開するとかですね。

―そうすると、ここに来て東映アニメーションがゲームに乗り出すのは、もっと直接的でフレキシブルなユーザーとのインタラクションを望んでいるということでしょうか?

松浦
そういうことかもしれません。逆に言えば、ゲーム以外の部分は、すでに社内にノウハウが蓄積しています。今はゲームを通したユーザーとのやりとりに関する経験を積んでいきたい。さらに海外への展開という意味でもゲームは足がかりになるのではないかと考えています。


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自身もゲーマーである東映アニメーションの松浦氏。


―しかしながら、東映アニメーションさんは既に強力なIPをいくつか持っていますよね。それを利用するということはなかったんですか?

松浦
実際にこれまで『スラムダンク』や『聖闘士星矢』といった題材のソーシャルゲームは展開してきました。そして、確かに沢山の方にプレイしていただいて、好評も得たのです。さらにそこからある程度のノウハウもつかむこともできました。
しかし、ゲームから新しいキャラクターを生み出すことができないのだったら、結局はテレビやマンガといった他のメディアが先にないと、ゲームが作れないということになってしまう。新しいIPを増やそうと考えた場合、それでは本末転倒です。

―なるほど。この企画自体が既存のIPを使うというより、オリジナルなIPを作ることに力点があるのですね。では日本のアニメビジネスとして、漫画やライトノベルなどの原作付きのものを制作していくスタイルに危惧する部分もあったのでしょうか?

松浦
危惧というよりも、それ一辺倒だと問題があるという認識です。むしろ原作からのアニメ化という流れは、すでにノウハウが蓄積されきった感があります。
本作を発表してから、実はアニメ業界のいろいろな方と話す機会が増えていますが、皆さんも同じことを考えています。つまり、今までのやり方とは異なった形でオリジナルのIPを作っていく必要性を、どこの会社も感じているのです。そして、そのひとつがゲームというわけです。

あとはゲームならではのユーザーとの近さという利点もあります。アニメーションの場合、ユーザーの声を直接聞ける機会というのは実はあんまりありません。特別なイベントや声優さんのイベントといった機会しかありませんし、作品を直接手渡しするわけでもありません。

―私も先日、AnimeJapanに行く機会があり、初めて制作会社の監督さんの話を聞きました。アニメを楽しんでいるユーザーにとっても、実際にはそういう機会はあまりないですよね。

松浦
そうなんですよ。いわゆるプロデューサークラスの方は別として、監督や現場の方が表に出ることは少ないです。彼らも本当にいろんな思い持って作品を作っているのですが。その点、ゲームだと現場の人間がユーザーからの声を直接聞けるチャンスがあると思っています。
またコンテンツの長さや大きさに関してもゲームに利があると思います。放送枠の問題などもあり、アニメは一つの作品を長く継続することはやりにくい。もっとたくさんのキャラクターを登場させたいと思っても、現実的に不可能なんです。

―よくよく考えればそもそもアニメに100人のキャラクターも登場しないですからね。

松浦
出ないですね(笑)。キャストの費用だけでも莫大なお金がかかる。アニメでできないキャラクター展開をゲームでやる。そういった補完関係が理想です。


―では、最後に何かメッセージがあればよろしくお願いします。

黒川
本作品は企画から始まってから2年という長い歳月をかけて取り組んできました。それもこれも松浦さんのゲームに対する思いが強かったからです。その気持をなんとか形にしたいと思い、長く遊んでもらえるゲームに仕上がりました。昨今のトレンドにはないコンテンツかもしれませんが、これからのトレンドを作るゲームになってほしいと思っています。

松浦
完成は少し遅れましたが、その分、自分が最初に想像していたよりも面白くなりました。最初は本当にボードゲームのようなシンプルなものを想像していました。特にたくさんのキャラクターをイラストにして、さらに3Dモデリングでデフォルメして、ゲーム内で操作できるのは、思った以上に面白いです。
ゲームとしての楽しさに加えて、箱庭的な可愛さがあるので、ぜひとも触ってみてください。 

[/INSIDE より転載記事]
《Article written by 今井晋@INSIDE》
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