-太田さんはどうですか。アニメロサマーライブは、なぜ海外に行くのですか?
-太田
少なくとも、中国本土に関しては採算が合うからです。
-それが不思議なのですが、これまで中国ビジネスを目指したかたはみなさんどうも中国はお金にならないと、10年くらい言われています。状況が変わっているのですか?
-太田
状況が変わっているというよりは、やり方だと思います。要は、自前でイベントを行うことです。興行のほとんどを自分たちでコントロールしたのは、たぶんアニサマぐらいです。すべてを自前でコントロールできれば収支は同じぐらいになります。数年後にビジネスになる状態は作れると思いました。
いまは情勢が厳しいですが、海外で日本と同じくらいの集客を期待できるのは今のところは中国本土だけなんです。
-日本のアニメが人気というと、上海についてよく言われます。中国は広いのですが……。
-太田
いろんな地方から来ますよ。それこそウイグル地区からもチケットを買う人がいます。
中間層のかたがすごく増えました。特に上海には、中流層がたくさんいるという感じです。
―中国以外はどうですか?ほかに大きな市場はシンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ。そこにもアニメファンはいますか?

まずは台湾を考えています。シンガポールのアニメ・フェスティバル・アジアにはものすごい人数が集まりますが、ほとんど近隣諸国から来ているんです。シンガポール単体ではなく、タイやインドネシアからも集まっています。ただ、インフラの面で不安があります。政情不安がなければ、タイはすごく魅力的です。
-いまはアジアの話が中心でしたが他の地域はどうですか? JAM Projectはラテン・アメリカでとても人気があります
-井上
一昨年、南米4カ国をまわったんです。ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチン。とくにブラジルは6000人ぐらいお客さんに来ていただきました。4カ国まわるのに2週間かかるんですけど(笑)。
片道32時間かかるのですが、それはやっていかないといけない。アメリカでは、ロサンゼルスやボストン、ボルチモア、今度はラスベガスでオタコンがありますが、そうしたところにうまく参加していこうと思っています。
-太田さんはいかがですか? 欧米、あるいは南米は?
-太田
現実問題として距離的に遠い地域は、ライブイベントを持って行くにハードルが高いと思います。アニサマの場合は、ランティスさんみたいに自社のアーティストさんが出るわけではなく、いろいろなメーカーさん、声優さん、アーティストさんとスケジュールを組まなければいけません。お金の問題ではなくて、スケジュールの問題です。2泊3日、あるいは1泊2日、さらにシンガポールだと0泊3日とか、そうしたスケジューリングを組まないと実現は出来ないですね。だから北米、欧州、南米は、今は除外しています。
-それだけ難しい調整をしても海外に出るということですね。
-井上
グッドスマイルカンパニーの安藝(貴範)さんとよく話すんです。日本だといろんなイベントがあって、無料でショーが見れたり、無料で豪華な紙袋に入ったグッズが配られています。すごいサービスをしているんですね。それに対してお客さんが、いろいろなものにお金を払ってくれているんですよ。
そしてこれを買っていただいたので、次はこういうもの作れますとか。良い循環になっていると思うんです。
これを海外でもやらないといけないんです。ただ誰かそれをやっているかというと、あんまりやってないんです。今やっとはじまりましたが、たぶん10年くらいかかると思うんです。
イベントに企業が参加して、お客さんに握手をしたり、写真をしたり、サインしたりというのを積み重ねていくと、喜んでお金を払っていただくファンが増えていくんじゃないかなと僕は夢見ています。
-太田
どうしても、海外はコミュニケーションがおろそかになるんです。けれどそこをちゃんとすれば、お客さんが満足してもらえる状態ができると思っています。
第3回 「ライブとネットで変わる アニソン」に続く(6月23日更新予定)