――キャラクターについても伺わせてください。
まずバナージについてですが、バナージは普通の良い子ですね。
古橋
はい。絵に描いたような優等生です(笑)。
――監督から見たバナージは、思い入れのあるキャラクターですか?
古橋
それなりに。現実、身近にいてもウザくない頭も良くて皆に好かれるタイプ。で、青臭い中二(笑)。
――映像ではよりわかりやすい主人公になりました。
古橋
ただ、若い人が感情移入できるかといえば、できないだろうなぁ。小説よりも表面的な描き方だから。先の理由もあり、共感のし所がない。でも、そこは内山(昂輝)君の声の存在感で補って余りある感じ。ホントにありがたかったです。
小形
バナージはそんなに成長しないですからね。変わらないバナージを周りの大人たちが視て、どう思うのか、どういう行動を取るのか、という話にしています。
古橋
それは、タペストリーにその役割が既に示されているように予定調和的立ち位置なんです。バナージは経験を積みますが、その芯は変わらない。その根っ子が、周りの大人に失ったものを思い起こさせてゆく。触媒的な存在ですね。

――フル・フロンタルはどうでしょうか? 小説より立ち位置を一歩踏み込んだ気がします。
古橋
超越的な存在であるという所は変わっていなくて、言うことも正論。計算高い所は有るけど、嘘偽りの無い人格者にはしたかったです。アンジェロが心酔してるわけですしね
――物語の根幹ですが、シャアだったのかシャアじゃなかったのか未だ判断しかねています。
古橋
そこは断定せず、色んな解釈があって良いかと。私と福井さんの考えも違いますし、グレーゾーンでお願いします(笑)。
ただ、バナージを武力ではなく、理で説得する姿勢は一貫させていただきました。全く付け入る隙の無い全知全能に主人公は如何に対するのか、答のない命題を提出したかった由です。
池田(秀一)さんに演じていただくに相応しい、空(から)でも巨大な器に見えるようなアレンジを目指したのですが、クライマックスが左脳向けになる必然は、エンタメとしては反セオリーにて、大人向けにも程がある感じですが。

――印象的なキャラクターでは、リディはどうですか。
古橋
ごく初期に、マリーダを撃たないプランも考えたのですが、今の形がベストでしたね。どん底まで堕ちてゲロッて恥ずかしい台詞を喋りまくる。もう清々しいまでの痛さ(笑)。でも、『NT-D』に乗っ取られた部分もあるし、許してあげましょう。バナージもギルボアさんを同じように溶かしましたから責められない。ネェル・アーガマのクルーはオットー以下、お人好しすぎですけどね(笑)。
――マリーダも良いポジションです。力が入っていて、物語を引っ張っています。
小形
力は入っていると思います。最終章でマリーダ殺す、殺さないという話をふくめて、いろいろ話をしました。
古橋
呎の問題もあり、あっさり目になってしまいました。ネェル・アーガマをかばってのことなんですが、150km離れてますのでそう見えないのですよ。運命受け容れ系の流れです。
――監督は、好きなキャラクターはいますか?
古橋
ラー・カイラムのブリッジのオペ子(オペレーション担当)です。ep 4でちらっと出ただけですが。

後編に続く
『機動戦士ガンダムUC』
公式サイト / http://www.gundam-unicorn.net/