しかし、何より注目されるのは、原案となった小説『All You Need Is Kill』だろう。2004年に集英社ダッシュ文庫から刊行された本作は、侵略者のロボットと戦う主人公が何度も死んでは死の直前に戻り、同じ時間をループし続け、そのなかで成長をするという少し変わったストーリーだ。 本作は2009年に米国の日本作品の翻訳出版社VIZ MediaのSFレーベルHAIKASORUから英語版が刊行されたのをきっかけに北米で知られるようになった。これを脚本家ダンテ・ハーパが脚本とし、2010年にその映画化権をワーナー・ブラザースが300万ドル近い高額で獲得した。脚本1本に300万ドルとその金額が米国映画界で大きな話題を呼んだ。
ワーナーの映画化権獲得報道からおよそ4年、いよいよ本作が2014年に劇場公開、さらにその映像の一部が公開されたわけだ。日本のマンガやアニメからのハリウッド映画化、映画化権獲得はこれまでにもあるが、エンタテインメント小説では珍しい。 また、日本コンテンツのハリウッド映画化権獲得や企画は、ここ10数年の数限りなく報道されているが、実際に大作として映画化されるのは極めてまれだ。『All You Need Is Kill』がそうした障害を乗り越えたのは、ダンテ・ハーパの脚本への高い評価だという。もちろん、それは桜坂洋の小説のチカラ、それを存分に伝えた翻訳者のチカラだろう。 実際に映画は『All You Need Is Kill』を原案とすると同時に、主人公の名前が同じケイジであることを初め小説の持ち味を色濃く反映している。出撃と戦死がループされる謎めいたストーリーも共通だ。