ひとりの作家の仕事を振り返る企画は、展覧会の定番だ。しかし、よくあるテーマだからこそ、作家の真の姿を映し出す効果的な展示プランが求められる。4月9日から東京・千代田区の3331 Arts Chiyodaで始まる「大友克洋GENGA展」は、随分と個性的なアプローチを選んでいる。 日本を代表するマンガ作家である大友克洋の代表作をとにかく全部集めた。全てを見せることで、そこから浮かび上がる「大友克洋」を見てくれというわけだ。
会場となる3331 Arts Chiyodaの展示室のひとつは、壁と柱の上から下までを、大友克洋さんの代表作で埋め尽くす。初期の作品から自身が制作に深く関わることになったアニメ関連の作品もある。そこから日本のマンガ界を変え、世界のクリエイターに影響を与えた大友克洋の創造の力が伝わって来る。 そして、開催前から話題を呼んでいるおよそ3000枚にも及ぶ『AKIRA』のマンガ原画の展示も圧巻だ。3000枚もの原画をどうやって展示するのか?会場に訪れる前の疑問は、展示方法を観て合点がいった。いくつもの透明のガラスケースで作られた棚に一枚ずつ並べられている。 しかし、全部を観ることは、時間、体力から言って事実上不可能だ。つまり、この展覧会の特徴のひとつは、実は必ずしも全ての作品を観ることは求めていないことだ。