国際映画祭が考える日本映画 海外ディレクターがシンポジウム | アニメ!アニメ!

国際映画祭が考える日本映画 海外ディレクターがシンポジウム

海外の映画祭のディレクターらが集ったシンポジウム「海外映画祭 プログラマーサミット」が開催された。国際映画祭で日本映画がどう見られているのか、

イベント・レポート
注目記事
 10月24日、東京国際映画祭が行われている六本木で、海外の映画祭のディレクターらが集ったシンポジウム「海外映画祭 プログラマーサミット」が開催された。国際映画祭で日本映画がどう見られているのか、そして映画祭が日本映画をどう考えているのか語るものだ。
 映画は国境を越えて愛される文化のひとつである。しかし、多くの国では、商業的にはハリウッド大作が大衆的な人気を博している。非英語圏の作品やインディペンデント映画は上映の機会を得ることが以前より難しくなっている。
 そうしたなか、各国で開催される国際映画祭は、ファンや専門家が新しい作品に出合う場としてより重要性を増している。日本語の作品、ジャンル映画と分類されることの多いアニメーションにとっても、その存在は大きい。

 今回のシンポジウムは2部構成とし、第1部では一般的な国際映画祭からの視点、第2部では日本・アジアにテーマを絞った映画祭の視点から討論を行った。モデレーターはスクリーン・インターナショナル 日本特派員のジェイソン・グレイ氏が務めた。総勢9名にも及ぶゲストの意見を巧みに引き出した。

■ 日本の若手は革新的

 第一部では、映画祭の役割についての話がやはり注目された。ロッテルダム国際映画祭のプログラマー ズィルホフ氏は、映画祭の目的を「上映チャンスの少ない作品にチャンスを与える」と明確に定義する。
 ベルリン国際映画祭のテルヘヒテ氏も、やはりインディーズ系の重要性に言及する。さらにそうしたなかで日本のインディペンデントはとても重要と話す。「若手には革新的な作品が多く、次々に新しい才能が現れる。多様性に満ちており、低予算でありながら常に驚かされる」とその理由を語った。

 アジアの映画祭は、より日本と密接だ。香港国際映画祭のガルシア氏は、林海象、大島渚、寺山修司の時代からの日本映画とつながりを強調した。
 また、日本とのつながりは歴史的ものだけでなく、新しい部分もある。上海国際映画祭のプゥ氏は、「日本映画への関心の高さは、アニメやマンガを観た世代が映画祭にやってくることも理由」とする。マンガ原作映画の人気は、他の登壇者からも複数の指摘があった。原作が読まれていることで、他の作品よりも観客に馴染み深いというわけだ。
 一方で、ロッテルダムのズィルホフ氏は、「日本の映画としてではなく、監督やアート作品としてみられる。ビジネスというよりもアートとして見たほうがいい」との意見だ。国際映画祭ひとつとっても日本映画への見方は様々だ。

       eigasummit1.JPG

■ 日本関わりの深い映画祭

 そうしたなかで敢えて、日本やアジアにこだわる映画祭は、より興味深い存在だ。今回シンポジウムに参加したのは、ドイツのニッポン・コネクションのクロムファス氏、ウディネ・アジア映画祭のバラセッティ氏、ニューヨーク・アジア映画祭のウォルコウ氏、そしてやや趣の異なる韓国のファンタジック映画祭である富川国際映画祭のパク氏である。

 総合映画祭と比べて知名度の劣る専門映画祭の悩みは、スタートアップ段階での上映作品の確保の難しさだという。予算も少ないことから、日本映画を上映する際に企業に支払う試写料が高くなっているも負担になるという。
 また、日本との交渉の難しさでは、大企業を中心に人事異動が多くビジネスの人間関係を継続出来ないこと、作品の権利者などのデーターが散らばっていることなどが挙げられた。

 こうした映画祭のディレクターは、アジアに特化しているだけに、現地での日本映画に対するニーズにより熟知しているようだ。
 バラセッティ氏は、「観客はホラーが好きで、メロドラマも好き」と話す。また、日本作品の魅力は「クレイジーであること、多様性」とする。
 パク氏は、大変な苦労しながら開催した「ガンダムスペシャル」の成功を挙げる。この成功がシリーズ作品の劇場公開につながったという。そして、日本の映画にはまだまだ大きな可能性があり、それは韓国だけでとどまらないはずだと語った。

 日本で開催されている映画祭の場でのシンポジウムということもあり、全般に日本に対して甘口な内容とは感じられた。それでも、日本映画が海外、特に映画祭において大きなチャンスを持っていることは確かだろう。であれば、今後日本の映画人に求められるのは、これまで以上に海外の映画祭に積極的に関わっていくことなのかもしれない。

       eigasaisummit2.JPG

UNIJAPAN ENTERTAINMENT FORUM
海外映画祭 プログラマーサミット

/http://unijapan.org/entertainment-forum/

[登壇者]
■ マリオン・クロムファス
    ニッポン・コネクション フェスティバル・ディレクター (ドイツ)
■ ジェイコブ・ウォン
    HAF ディレクター (香港)
■ サブリナ・バラセッティ
    ウディネ・アジア映画祭 フェスティバル・ディレクター (イタリア)
■ ロジャー・ガルシア
    香港国際映画祭 エグゼクティブ・ディレクター (香港)
■ ジン・パク
    プチョン国際映画祭 プログラミング・ディレクター (韓国)
■ マーク・ウォルコウ
    ニューヨーク・アジア映画祭 ディレクター/プログラマー (アメリカ)
■ ヘルチャン・ズィルホフ
    ロッテルダム国際映画祭 プログラマー (オランダ)
■ マーガレット・プゥ
    上海国際映画祭 フェスティバル・マネージャー (中国)
■ クリストフ・テルヘヒテ
    ベルリン国際映画祭 フォーラム部門ヘッド (ドイツ)

[モデレーター]
■ ジェイソン・グレイ
    スクリーン・インターナショナル 日本特派員

主催: 東京国際映画祭(TIFF)
共催: 公益財団法人ユニジャパン
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

特集